「会社の人口ピラミッドの中間」に位置する40代は、ベテランと若手のちょうど中間地点にいる。とはいえ、ほとんどの40代は「上ばかり見て仕事をする意識が染みついてしまっている」と指摘するのは、1万人以上のビジネスパーソンにインタビューを行ってきたコンサルタントの大塚寿氏だ。しかし、その意識を早急に変えないと、10年後に確実に後悔することになるという。その理由とは?

*本稿は、『できる40代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の内容を抜粋・編集したものです。

上司はあと10年もしたら消える。だが、部下は?

会社からの評価,大塚寿
(画像=THE21オンライン)

若い頃からのすり込みで、どうしても40代のビジネスパーソンは「上司」の顔色をうかがう習慣が身についてしまっています。意識せず、「顧客ニーズ」より「上司のニーズ」を優先させる傾向すらあります。

40代になったら、一刻も早くこの意識を切り替える必要があります。30代までは、社内での人間関係は上司や先輩が中心だったかもしれません。しかし、40代ともなれば、上司・先輩と部下・後輩の数はほぼ半々のはず。ならばせめて均等に関心を、と言いたいところですが、私はむしろ、「40代になったら上よりも下に好かれることを目指せ」と言い切りたいと思います。

あなたの仕事の業績を引き上げてくれるのは、上司ではなく部下や後輩だからです。いくら上司の覚えがめでたくても、実績の上がらない人を引き上げるわけにはいきません。また、その上司が失脚すれば、一緒に失脚する羽目になるでしょう。

長年にわたって染みついた「上の顔色を見る」という習性は、なかなか抜けないかもしれません。しかし、社長だろうと役員だろうと、あと10年もすればいなくなっている可能性が高いのです。

一方、部下や後輩との付き合いはあなたが辞めるまで、ひょっとすると辞めたあとも続きます。どちらを優先すべきかは明白でしょう。

そのことを意識しないまま役職定年を迎え、かつての部下に冷遇されながら、つまらない会社員人生の後半を迎える……そんな人を私は何人も見てきました。

あなたは部下のフルネームを「漢字で」書けますか?

別に部下に媚を売る必要はありません。「関心を持つ」、これだけで十分です。有名な「愛の反対は無関心」という言葉は、組織論でも真理なのです。

アメリカのDVに関するある調査では、暴力による虐待よりも、「無視」のほうが子供の知的能力に影響を及ぼすという結果が出ているそうです。組織においても同じです。部下や後輩が「この人は自分には無関心なんだな」と悟ったとたん、感情のエネルギーがゼロになり、仕事のやる気は失われます。むしろ、上司に反感を持つ人のほうが、「負のエネルギー」が生まれ、仕事のやる気が出るのです。

関心といっても、「Aさんは仕事ができる」「B君はイマイチだ」ということではありません。まずはそれぞれの「人となり」を知るところからスタートしてください。

どんな幼少時代、学生時代を送ってきたのか。何がやりたくてこの会社(組織)に入ったのか。仕事やプライベートでどんなことを大切にしているのか。こうしたことを日常的なコミュニケーションの中で把握していくのです。

ところで、あなたは「部下の名前を漢字で、フルネームで」書けますか。人望あるリーダーの多くは、スラスラと書けるものです。関心を持っているからこそ、部下の名前も自然と把握しているのです。もし、あなたが部下や後輩のフルネームを漢字で書けなかったら「関心が足りない証拠」だと考えてください。

自分に対して関心を持ってくれていることを、人は敏感に感じ取ります。そして、それがあなたへの信頼や好意につながっていくのです。