若手との人脈で「改革」を成功させた営業課長

仕事において、年下人脈とのつながりが大いに生かされたある人物のケースをご紹介しましょう。

営業の世界では最近、デジタルツールの発達が目覚ましく、それを使いこなせるかどうかで大きな差がついています。ある会社で営業マネージャーを務めるFさんは人望はあったのですが、デジタルには疎く、この分野で後れを取っているという自覚がありました。

しかしFさんは面倒見が良いため、部門を超えて若手社員と積極的に交流していました。そんな中でいわゆるデジタルネイティブでこの分野に強い若手がいたので、彼に教えを乞うたのです。

その中で、いわゆる「SFA(営業支援システム)」の価値に気づき、その導入に踏み切ることを決断しました。

Fさんがユニークだったのは、このSFA導入の際の社長へのプレゼンを、この若手にやらせたことです。「本当に理解している人がやったほうが伝わる」という判断です。

結果、SFA導入は成功し、業績も上昇。そしてFさん自身も「若手を使いこなせる人」として評価を高めることになったのです。

部下の中には、ある分野では自分よりもよほど能力を持っている人がいると思います。その人に対抗するのではなく、「部下に教えを乞う」姿勢を取ることができれば、世界はぐっと広がっていくでしょう。

ビジネス人生後半戦は「後輩との関係」で決まる

「上司よりも部下を優先する」ことには、実はもう一つ、大きなメリットがあります。それはあなたの「定年後」に関してです。

定年後の再雇用の際、「部下からの人望が厚かった人物」と「上ばかり見てきた人物」とでは、待遇に大きな差が出てくるのです。待遇といっても賃金ではなく、与えられる仕事の重要性ややりがいなどです。後輩に頼られながら楽しく仕事をするか、お荷物として冷遇されながら過ごすか。あなたの定年後再雇用の環境は、かつて部下だった人物の胸先三寸で決まるのです。

さらに、定年後に「顧問」として採用してもらうという道も開けます。ある分野に強いのはもちろん、「若手とうまくやれる」ことは、顧問の重要な条件です。週に数日出勤し、報酬は10数万円というところが多いのですが、数社を掛け持ちして生き生き働いている人も多いものです。

また、40代以降の再挑戦に際し、若手とタッグを組むという道もあります。50代で岩瀬大輔氏とともにライフネット生命保険を立ち上げた出口治明氏は、その好例でしょう。若い人との人間関係は、あなたの人生を広げてくれるのです。

ただ、そうした実利を別にしても、多くの年下の人との人脈を持ち、年齢が離れた人とも分け隔てなく付き合うことができる人のほうが、人生を圧倒的に楽しそうに送っています。

40代までに染みついてしまった「上を見える」という習慣は、なるべく早く捨ててしまいましょう。

大塚寿(エマメイコーポレーション代表)
(『THE21オンライン』2020年08月31日 公開)

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