各国では取引所ビジネスの革新に向けてブロックチェーン技術の採用が検討され、デジタルアセット市場の発展が期待されています。

中国では北京と深センの証券取引所でブロックチェーン技術を活用した非上場企業株式の登録/カストディシステム開発が進行。

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

日本でもマネックスグループの事業部門でクリプトアセット事業が最大の収益を記録するなど、デジタルアセット市場全体の取引高は増加傾向にあります。

セキュリティトークン市場においても米国初の公募型STO(デジタルIPO)を実施しているINXがセキュリティトークン取引所Openfinanceを買収することが発表され、本稿ではセキュリティトークン取引所ビジネスの将来性について解説していきます。

目次

  1. 米国 セキュリティトークン市場の現状
  2. INXがOpenfinanceを買収
  3. まとめ

米国 セキュリティトークン市場の現状

セキュリティトークン市場全体の時価総額は、$536,432,117.75(10月28日9時現在)となっており、ここ3ヶ月は$5億ドル台で推移しています。

8月にAspenCoinがtZEROに上場し、tZERO Marketもローンチされるなど、エコシステム全体では昨年の同時期と比較しても発展しており、今後はセカンダリーマーケットでの取引可能な銘柄の増加が期待されています。

米国においてはベンチャー企業が多く上場する新興市場の1つとしてセキュリティトークン取引市場は存在しており、ナスダックプライベートマーケットなどIPO前のプライベートエクイティ銘柄を取り扱う取引市場と暗号資産取引市場の間に位置していると考えられます。

当初は暗号資産投資家の参画や24時間365日運営が可能であることからセキュリティトークン取引所は有望なビジネスモデルとして幅広いシェアの獲得も想定されていましたが、時代は「ICOの健全化」「資金調達の効率化」から「これまで証券化されてこなかった資産(不動産、インフラなど)のデジタル化」「証券取引所ビジネスの高度化」へと移り変わっており、今後は「巨大資本を基にしたビジネスの多角化」がその有用性を証明するためには必要であると考えられます。

小規模な新興市場への投資の拡大をどのように促すのか、各企業の連携を含め、マーケットメイクについての議論活性化が期待されます。

INXがOpenfinanceを買収

Openfinanceは、上場企業への契約の見直しを求めるなど経営環境の改善を図る取り組みを今年の春に実施していました。

上場銘柄が月に3-5件程あり、1件数十億円の調達による手数料ビジネスを展開することができれば、継続的な経営が可能だったとも考えられますが、セキュリティトークン自体は有価証券を担保にしたトークンであり、不動産や様々なアセットのデジタル化といった多様性を資本市場にもたらすと見込まれる一方、市場は中長期的に成熟することが予想されています。

しかし、黎明期においてOpenfinanceがセキュリティトークン市場に果たした役割は非常に大きく、過去3年間で約2,500万ドルの資金調達に成功し、時価総額は4,000万ドルから7,000万ドルであるとされています。

INXは、米国初のセキュリティトークンによるIPO(公募型STO)を実施しており、一般投資家の参加も可能であることからセキュリティトークン市場における新たな取り組みとして大きな期待を集めています。

開示書類においては、継続的な事業の可能性や赤字経営などが不安視される面もありましたが、Openfinanceが有するブローカーディーラーや代替取引システムライセンスを手にすることで、INXは継続的な取引所ビジネスの展開が実現できる可能性が高まったと言えます。

INXは1,000万ドル以上を調達しており、年末までに1億17,00万ドルを調達する予定であるとしています。

まとめ

アジア市場においてもシンガポールでDBS銀行が、暗号資産/セキュリティトークンに対応したデジタルアセット取引所の開設を一時的にWebで発表(現在は削除)するなど、市場の拡大が見込まれています。

また、タイでセキュリティトークン取引所ライセンスを取得したElevated ReturnsがBlockFiとの提携を発表。

セキュリティトークンのレンディングサービスの展開を予定しており、今後は不動産などのアセットにレンディングサービスを拡大することが期待されます。

取引所ビジネス単体で見ると参画プレイヤーのさらなる増加が急務であるとも言えますが、取引所があることで市場の裾野は広がりを見せており、セキュリティトークンビジネスの多角化によってさらなる発展が予想されます。(提供:STOnline