リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウド、ネイマール……。サッカー好きなら誰もが知るスーパーに匹敵する富を稼いでいる、タイラー・ペリー(Tyler Perry)をご存知でしょうか。アメリカの劇作家、脚本家、俳優、映画監督、映画プロデューサーとして類稀な才能を持つタイラー・ペリーは、フォーブス誌が発表した「セレブリティ100(世界で最も稼ぐセレブ100人) 2020年版」で6位にランクイン。名実ともに億万長者として認定されたタイラー・ペリーの人物像と代表作に迫ります。
“公式”に億万長者となった男、タイラー・ペリー
フォーブス誌には、「Three Comma Club」(3コンマクラブ)という億万長者リストがあります。加わることができるのは、10億ドル以上の総資産を所有すると認定された者のみ。10億ドル($1,000,000,000)には3つのカンマが付くことからこう呼ばれますが、タイラー・ペリーは2020年、この「Three Comma Club」の新しい公式メンバーに選ばれました。
彼が所有する自分が参加した作品の権利など総資産の価値は2020年に急上昇。そして、ついに10億円を超えたことから、今回のメンバー入りとなりました。
タイラー・ペリーの人物像 保有資産は?
アメリカ随一のセレブリティとして名を馳せるタイラー・ペリーですが、ほかの億万長者に比べると、日本での知名度はそこまで高くないように思えます。いったいどのような人物なのでしょうか。
保有資産
ペリーの資産の内訳は、映画、テレビ番組、演劇など彼が権利を持つコンテンツでのライブラリ全体で3億2,000万ドル(約340億円)。現金と投資で3億ドル(約320億円)。ジョージア州アトランタに約134万㎡の敷地を購入し設立したタイラー・ペリー・スタジオが2億8,000万ドル(約300億円)。昨年開設したビデオ配信サービス「BET+」の出資金が6,000万ドル(約64億円)。自宅その他4,000万ドル(約42億円)、 総額で10億ドルになるといいます。
職業
タイラー・ペリーの職業は、ひと言では言い表せません。劇作家であり脚本家であり、あるときはプロデューサー、そしてある時は俳優です。ジョージア州アトランタのタイラー・ペリー・スタジオには、映画の撮影セットはもちろん400席をそなえた劇場、プライベート映写室、5つの音響ステージ、撮影後の編集施設、娯楽や来客接待用の施設に使える広いエリアが用意されています。
生い立ちとサクセスストーリー
タイラー・ペリーの生い立ちは恵まれたものではありませんでした。彼は、ルイジアナ州ニューオーリンズでアフリカ系アメリカ人の子として誕生。幼少のころは貧困と虐待に耐える日々を過ごしています。
そして苦しく悩ましい日々を過ごしていた20代前半のある時、キャリアの出発点となる転機が訪れます。アメリカ史上最高のトーク番組としても名高いテレビ番組、「オプラ・ウィンフリー・ショー」を見ていたときのことです。その日の放送は、“自らの困難を何かに綴ることが自分自身のブレークスルーやセラピーにつながる”といった内容でした。
それに触発されたペリーは、自分あての手紙を書き始めます。辛い出来事も、自分に起きた出来事すべてを書き留めたのです。
このとき書いた自分への手紙をもとに、自らインスピレーションを得たタイラーは1992年、ミュージカル「I know I’ve Been Changed」の脚本を書き上げ、貯金をはたいてアトランタで公演を始めました。
ところが最初の公演は観客がほとんど集まらずに失敗してしまいます。それでも不屈の意思で脚本を書き続けた6年後の1998年、ついにペリーは高い評価を受けるようになり商業的成功を収めます。アトランタ最高峰の劇場「フォックス・シアター」での公演も実現しました。
タイラーはこの大成功に満足することなく、数々の作品の上演を続けます。2000年には 「I Can Do Bad All Myself」 を上演しますが、これがのちに映画で大ヒットする「マディアおばさんシリーズ」の元祖となりました。
2000年以降は映画製作に進出、マディアおばさんシリーズをはじめとする作品で大ヒットを連発。2011年にはペリーが「エンターテインメント界で最も稼いだ男」として、スティーブン・スピルバーグやタイガー・ウッズを抜いたことがフォーブス誌で報じられるまでになったのです。
タイラー・ペリーを代表する作品は?
タイラー・ペリーの作品はいずれも黒人社会が抱える人種差別や貧困の問題を取り扱っています。とはいっても社会派の硬い映画ではなく、日本でわかりやすくいえば、「アメリカの黒人あるある」を多く盛り込んだ黒人目線の軽い社会風刺をこめたコメディが得意です。人種差別による貧困や悩み苦しみを、心の叫びとして正直に吐き出して、笑い飛ばす姿勢が痛快で、アメリカ社会の多くの人々の共感を得ています。
日本ではマスコミを通じたプロモーション活動を伴う劇場公開作品が少なく、あまりなじみはないものもあるかもしれませんが、主な作品は次のとおりです。
マディアおばさんシリーズ(2006年~2019年)
映画だけで全11作品が作られているアメリカでは知らない人のないほどの超人気作品。主人公のマディアおばさんは、タイラー・ペリーが女装をして演じています。日本に配信された初めての作品は2012年に全米で公開された7作目の「マディアおばさんのドタバタNY事件簿」(Madea's Witness Protection)です。
批評家からは酷評され、第33回ゴールデンラズベリー賞で最低主演女優賞を受賞したものの、実際の興行収入は公開初週末に2,539万ドルを記録、週末興行収入ランキング4位を初登場で獲得しました。黒人の目線で描かれた作品として、厚い支持があったものと思われます。
プレシャス(2009年)
「プレシャス」は、タイラー・ペリーのほか、オプラ・ウィンフリーなど有名な黒人エンターテイナーが製作総指揮をした映画作品です。この作品は『プッシュ』という小説を映画化したもので、1人の不遇な黒人少女が物語の主人公となっています。1980年代後半、容姿にコンプレックスを持った少女が、貧困にあえぎながらニューヨークのハーレムで苦しい日々を送る中、ある教師との出会いから人生に希望を見出していきます。貧困層に焦点を当てられており、子供への虐待や教育の問題などが描かれます。
この作品は世界的シンガーのマライア・キャリーが、ソーシャルワーカー役で出演したこともでも話題になりました。
バイス(2018年)
この作品は日本でも公開されて話題になったので、覚えている方も多いと思います。ジョージ・W・ブッシュ政権の時の副大統領ディック・チェイニーの伝記映画です。ブッシュ大統領に「指示」し、世界を動かしていた影の大統領ディック・チェイニーを描いたものですが、タイラー・ペリーはパウエル国務長官役で出演しています。パウエル国務長官は陸軍出身ですが軍内部で、人種差別をはねのけてアメリカの政治の中枢まで上り詰めた人物。タイラー・ペリー自身にも共感できる部分があったことでしょう。
日本人は「セレブリティ100」にランクインしているのか?
フォーブス誌の「セレブリティ100 2020年版」によると、サッカー界の世界的スーパースターと渡りあえるほど、タイラー・ペリーが“高収入”であることは冒頭で述べたとおりです。世界各国のセレブの名前が並ぶこのランキングに、はたして「日本人セレブ」は入っているのでしょうか。
「セレブリティ100 2020年版」を見てみると、日本人で名を連ねているのは女子プロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手です。レディ・ガガらに次ぐ90位にランクインしています。フォーブス誌によれば、大坂選手の年収は女子スポーツ史上最高額の3,740万ドル(約39億円)に達するそうです。
一方の、6位にランクインするタイラー・ペリーの年収額は9,700万ドル(約102億円)。1位のカイリー・ジェンナーに至っては、年収額は5億9,000万ドル(約622億円)と目されます。これが日本とはショービジネスの規模が違うアメリカの貫禄といえるのでしょうか。目を丸くするしかありません。(提供:JPRIME)
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