理解だけでなく、「納得」できるか

逆に、理解の速度に文章が追いつかない文章もあります。いわゆる「冗長な文章」です。

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カリフォルニアの突き抜けるような青空がどこまでも広がっていた。
私が国道2号線を走っているときに、助手席にいた娘のメイが突然こんなことを言い出した。「ねえ、おかあさん、心ってどこにあるの?」と。
それは本当に突然のことだった。私がこの本を書かなければと思ったきっかけは、このときだった。
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理解はできるのですが、結局、何がいいたいのかよくわかりません。こちらも、集中力が途切れて伝わりづらくなります。一方が先走ることなく、双方のスピードが一致するのが理想なのです。

なお、理解だけでなく、「納得」できるかどうかも重要です。

病院のお医者さんをイメージしてみてください。検査結果を告げる際、電子カルテに目をやったまま「あ、大丈夫ですよ」としか言わない医師が時々いますね。「説明してもわかるまい」と言わんばかりで、納得感ゼロです。反対に、長々と語ってくれるものの「結局、何なの?」と言いたくなる説明もあります。これもやはり、納得感にはつながりません。

理想の説明は、「数値はこう、基準値はこう、だから大丈夫」と、シンプルに結論と理由を両方伝えてくれること。文章にも、この心得が不可欠です。

「一文は短く」が鉄則

一文ごとのわかりやすさに関しては、短くするのがコツ。次の二文を比べてみましょう。

「猫は哺乳類であり犬も哺乳類であるが、同じ哺乳類でも、私は猫が好きであり犬は苦手だ」

「猫は哺乳類だ。犬も哺乳類だ。だが私は猫が好き。犬は苦手」
単文で区切った②のほうがすんなり頭に入るはず。

一文に多く詰め込めば難解に、「AはBである」と一情報ずつ伝えれば平易になる、というルールを覚えておきましょう。

もう一つお勧めしたいのは、自分で文章を書いたあと、近しい誰かに読んでもらうこと。自分で生み出した文章は実際よりも良く見えてしまうからです。

この「文章親バカ現象」は、人に批評してもらうと即座にリセットできます。親しい同僚や家族など、正直な意見をくれる相手を持ちましょう。書く技術を鍛えるうえで、きっと頼もしい味方になってくれます。

竹村俊助(編集者)
(『THE21オンライン』2020年09月14日 公開)

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