企画書、商品PRの資料、上司への報告書などの文章を、「しんどい!」と思いながら書いている人は多いのでは。
「コツさえ知れば、わかりやすい文章はすぐ書ける」──そう語るのは、『メモの魔力』『実験思考』などのベストセラーを手掛け、初の著書『書くのがしんどい』(PHP研究所)も話題を呼んでいる編集者者の竹村俊助氏だ。
竹村氏によれば、巷にあふれる文章のほとんどは「簡単なことをあえて難しくしている」。よって、万人に伝わりにくくなっているという。では、言いたいことを端的に、わかりやすく、相手に伝えるにはどうすればいいか。本稿では、すぐに仕事で使える文章のコツを解説する(取材・構成:林加愛)。
本稿は、『THE21』2020年10月号の内容を編集したものです。
良い文章は、読む速さと同じ速さで理解できる
「君の文章は読みづらい」
「何を言ってるかわからない」
そんなふうに言われてガッカリした経験はありませんか?
書くことに苦手意識を持つビジネスパーソンは多いもの。しかしコツをつかめば、どんな方でも良い文章を書くことはできます。
そもそも、ビジネスにおける良い文章とは何でしょう。
答えは「伝わりやすい文章」、これに尽きます。素早く伝わるからこそ、仕事もスピーディーに進めることができるのです。では、伝わりやすい文章と伝わりづらい文章の違いは何か。それは「読む速度と、理解する速度が一致している」か否かです。
例えば、次のFAQを見てみましょう。
Q:事業所設置後1年未満の事業主は対象となりますか。
A:通常の場合、生産指標を前年同期と比較できる事業主が対象であり、事業所設置後1年未満の事業主は前年同期と生産指標を比較できないため支給対象となりませんが、新型コロナウイルス
感染症にかかる今回の特例措置では、事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象としています。その際、生産指標は、初回の支給申請を提出する月の前月と、初回の支給申請を提出する月の前々月から直近1年間であって適切と認められる1か月分の指標で比較します。(※比較に用いる月に雇用保険適用事業所となっており、その期間を通じて雇用保険被保険者である従業員がいることが必要となります)
※厚生労働省HP 雇用調整助成金FAQ(令和2年8月1日現在版)より引用
「わざと?」と聞きたくなる原文の難解さ。拝借しておいて言うのもなんですが、これを読むと同時に理解するのは至難の業です。この異様な難しさも正確性を期すために必要なのでしょうが、これでは読み手の読む速度に理解が追いつかず、かなりストレスフルです。
その第1の理由は、語句の硬さです。そこで、これらを「普段の言葉」に変換してみましょう。「事業所→会社」、「未満→満たない」、「生産指標」も思い切って「売上」に。正確さは落ちますが、ここはわかりやすさを優先します。
質問に対する答えも最初に述べます。構成では、「結論を最初に言う」鉄則を適用。対象になるのかという質問なのですから、すぐに答えてあげたほうが親切です。
以上を踏まえて、「雇用調整助成金」のFAQを私なりに書き換えてみるとこうなります。
Q会社をつくって1年に満たないんですけど、対象になるの?
A:なります。ほんとうは前の年と比較できないから「売上が下がっているかどうかもわからない」のですが、今回は特別です。
この場合、売上は「申請の前月」と「申請の前月より前の月のいずれか」とを比べて計算します。(※ただし「雇用保険適用事業所」であること。「雇用保険被保険者」の従業員がいることが条件)
いかがでしょう。すっと頭に入ったと思います。
不要な部分を削るのも、伝わりやすさを上げるコツです。「前年同期と比較できないといけない、1年未満だと前年同期と売上を比較できない」という繰り返しや、「設置後1年未満の事業主についても」などのわかり切った話はカットしていいでしょう。
さらに、漢字をところどころで、ひらがなにすると印象がソフトに。大事な語句はカギカッコで囲むと、印象がさらに際立ちます。