米国においては、規制当局であるSECがイノベーションの活用に積極的であることを要因にSTO市場の発展が早期に進みました。

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

現在は、証券会社の市場参画、規制緩和、ETFへの応用といった事例が確認され、株式市場における新たな市場創出をブロックチェーン技術は支えています。

今後は、規制緩和による発行企業の増加、投資家へのアクセス拡大とともに証券会社を介したセカンダリーマーケットでの取引増加が期待され、本稿では各事例について詳しく解説していきます。

目次

  1. tZERO Sterling Trading Techと技術統合を完了
  2. SEC登録免除規定「Regulation」の要件改正による企業の資本形成の促進と投資家による投資機会の拡大
  3. Tokenized ETFの可能性について

tZERO Sterling Trading Techと技術統合を完了

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(画像=STOnlineより)

tZEROと技術統合を完了したSterling Trading Tech(スターリングトレーディングテック)は、証券市場において30か国/100以上のクライアントにフロントエンド取引プラットフォーム/注文管理システム(OMS)に提供している技術会社です。

「Sterling Trading Techとの統合により、2つの新しいブローカーディーラーがtZEROATSと接続し、稼働していることに感動しています。私たちの最優先事項の1つは、ATSへの参加を拡大し、多角化することです。今回の発表は、私たちのプラットフォームへの投資家の参加を拡大するためのもう1つのcatalyst(促進施策)です。」

tZEROのCEOであるSaumNoursalehiは、上記のように述べており、今回の技術統合によって、Sterling Trading Techと連携している企業は、tZEROでのセキュリティトークン取引の機会を投資家に提供することが可能となりました。

投資家の多くはセキュリティトークンを取引する方法がないため、市場へのアクセスを拡大するためには証券会社が参画するエコシステムの形成が必要不可欠です。

Sterling Trading Techとの統合によって、証券会社「MM Global Securities」がtZEROとの接続を実現し、企業名は非公開ながらもさらにもう1社が追加されています。

このように市場創出に向けた新たな事例が確認されており、セキュリティトークンへの投資家の関心が高まることが期待されます。

SEC登録免除規定「Regulation」の要件改正による企業の資本形成の促進と投資家による投資機会の拡大

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米国SEC(証券取引委員会)は、登録免除規定「Regulation」要件の改正を決議しました。

・Regulation A Tier2 (RegA Tier2 )

募集金額上限:5,000万ドル→7,500万ドル
二次販売 最大募集額:1500万ドル→2250万ドル

・Regulation Crowdfunding (RegCF)

募集金額上限:107万ドル→500万ドル
投資家制限:認定投資家の投資制限を撤廃
一般投資家の投資限度額計算:年収または純資産の大きい方を参照する
12か月以内/250,000ドル以下の資金調達を実施する場合:財務諸表監査免除期間を18か月に延長

・Regulation D 504 (RegD 504)

募集金額上限:500万ドル→1000万ドル

・Test-the-Waters(事前の投資家の関心調査)、Demo day

Test-the-Waters(事前の投資家の関心調査)を行う際に一般勧誘資料を使用可能に
RegCFに準拠した場合もRegAと同様の方法でTest-the-Watersを実施可能に(SECへの提供文書を提出する前に)
特定の「Demo day」のコミュニケーションは、一般的な勧誘または一般的な広告とは見なされない。

FACT SHEET Facilitating Capital Formation and Expanding Investment Opportunities by Streamlining Access to Capital for Entrepreneurs Nov. 2, 2020

今回の法改正は、企業の資本形成の促進と投資家による投資機会拡大を図り、市場の変化に対応した合理的な法規制を整備し、投資家保護のあり方を維持・改善することを目的としており、米国資本市場のさらなる発展を米国SECは促進しています。

Tokenized ETFの可能性について

SEC議長ジェイ・クレイトンは、「トークン化されたETF(Tokenized ETF)」について前向きな姿勢を見せています。

米国では、世界に先駆けて「STO」をRegulatinに準拠したトークンによる資金調達と定義し、ブロックチェーン技術がもたらす可能性について積極的な探究を続けてきました。

「私たちはトークン化されたETFを試してみるつもりです。私たちのドアは大きく開いています。効率を高める方法でETF製品をトークン化する方法を示したい場合は、私たちはその企業や有識者に会い、取り組みを促進したいと思います」

上記のようにクレイトン議長は述べていますが、トークン化された米国株とETFの提供サービスを手掛けた「Abra」を適格な投資家保証処置を講じず、違法な為替スワップ取引を行ったとして300,000ドルの罰金を命じるなどして取り締まりを行った事例もあります。

また、ビットコインETF申請を非承認とするなど、間違った方向にイノベーションが進むことに関しては、一定の規制を設けているとも言えます。

現在は、「トークン化されたETF(Tokenized ETF)」に関するアイディアを検討している段階にあり、実現に向けてはさらなる議論と検証が必要になると考えられますが、株式市場におけるブロックチェーン技術の新たな可能性として大きな注目を集めることでしょう。(提供:STOnline