「中国建設銀行」は、タックスヘイブンであるマレーシア・ラブアンの支店においてブロックチェーン技術を活用した預金担保型デジタル債券を発行すると同時に、SPiCE VCとProtosといった米国企業のセキュリティトークンを取り扱う「Fusang Exchange」へのデジタル債券の上場も発表。

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

これまでスタートアップ企業の資金調達の文脈で注目されていたセキュリティトークンですが、今回の事例を通じては、金融機関が発行する債券がブロックチェーン技術によってデジタル化され、取引所で売買が行われるといったシナリオでも将来的な市場構造の検証を行うべきであると考察しました。

日本でも今年の3月に野村證券と野村総合研究所、野村信託銀行、BOOSTRYがデジタル債券の発行を行っており、「金融市場におけるブロックチェーン技術の活用等に関する研究会」での内容をまとめた報告書を最近では発表しています。

本稿では、「中国建設銀行」と「Fusang Exchange」が協業し行われた預金担保デジタル債券の発行/上場の事例を紹介し、アジア金融におけるブロックチェーン技術の将来性について考察していきます。

目次

  1. 中国建設銀行がデジタル債券を発行
  2. セキュリティトークン取引所「Fusang Exchange」について
  3. 債券発行におけるブロックチェーン技術のメリット
  4. まとめ

中国建設銀行がデジタル債券を発行

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「中国建設銀行」は、1954年に創業し、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)が発表した2020年の「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)」においてはBucket2に分類されています。

G-SIBにおけるBucketランクは、ゴールドマン・サックス、ウェルズ・ファーゴが降格する中、「中国建設銀行」は、1ランク昇格しており、今後はシティ・グループ、HSBC、JPモルガン・チェースが位置しているBucket3への昇格が期待されます。

中国では、4大国有商業銀行として各省において金融サービスの提供を行っており、最近ではデジタル人民元のウォレットアプリ開発を進めるなど、金融市場におけるデジタル化を推進。

預金を担保にしたデジタル債券の発行によって、「中国建設銀行」は30億ドルの資金調達を目標にしており、マレーシア・ラブアンのセキュリティトークン取引所「Fusang Exchange」での取引も可能とされています。

セキュリティトークン取引所「Fusang Exchange」について

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「Fusang Exchange」を運営する「FusangGroup」は、2019年2月にラブアン金融サービス局から証券取引所ライセンスの認可を受け、2020年2月から正式に事業を開始しています。

これまでSecuritizeとのパートナーシップ提携をはじめとしてSPiCE VCとProtosといった米国企業のセキュリティトークン上場を実現するなど、「Fusang Exchange」はアジア金融におけるセキュリティトークンの可能性を探求してきました。

金融のデジタル化に向けてはインフラストラクチャーの整備が重要となり、シンガポールやタイでも取引所ビジネスの展開によってセキュリティトークン市場が創出されています。

債券発行におけるブロックチェーン技術のメリット

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ブロックチェーン技術を活用することで仲介業者コストが削減され、債券の利回り向上といったメリットを金融機関と投資家にもたらします。

金融機関は投資家に新たな金融商品として、従来よりも高利回りな債券を投資家に提供し、投資家も利回りの良い金融商品への投資することが可能となるために資本市場全体の流動性向上にも繋がることでしょう。

今回の中国建設銀行が発行したデジタル債券は、証券化特別目的事業体SPVであるロングボンド株式会社が発行会社となり、中国建設銀行ラブアン支店「CCBラブアン」がリードアレンジャーとなっています。

「Fusang Exchange」に上場したデジタル債券「LBFEB21」は最低投資額100ドルから投資家が可能となっていることから個人投資家も参加が可能とされ、ビットコインでも投資家が可能です。

世界的にも珍しい預金を担保にしたデジタル債券は、LIBOR + 50bps(〜0.70%)の年利回りが設定され、通常の定期預金よりも高い金利で銀行担保預金にアクセスできるようになると説明されています。

FUSANGExchangeのCEOであるHenryChongは下記のように述べています。

「ブロックチェーンテクノロジーの実装により、金融包摂が可能になり、サービス提供コストが削減され、トランザクションの効率が向上します。ブロックチェーンテクノロジーの進歩と従来の証券のトークン化を組み合わせることで、デジタル証券が金融包摂を促進する優れた方法であると考えています。」

まとめ

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「中国建設銀行」と「Fusang Exchange」の預金担保デジタル債券の発行/上場の事例は、アジア金融におけるブロックチェーン技術の将来性を占う上でも大きな意味を持つと考えられます。

企業の資金調達としてSTOが実施された場合、米国の場合はReglationに準拠して発行が行われ、上場までにはRule144に基づく1年間のロックアップ期間が設定されることから流動性の低さがセキュリティトークン取引所ビジネスの課題とされてきました。

金融機関が発行したデジタル債券がアフショアにある支店を通じて、セキュリティトークン取引所に上場した事例は珍しく、投資家参加の促進/取引量増加への新たな可能性として取引所ビジネスの多角化が期待されます。(提供:STOnline