経済
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来年の公示地価は大都市商業地を中心に下落の公算大

都市未来総合研究所 常務研究理事 / 平山 重雄
週刊金融財政事情 2020年11月16日号

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、社会・経済に下押し圧力が強まっている。今年9月に公表された7月1日時点の基準地価は、全国商業地平均が2015年以来5年ぶりに下落に転じ、同じく全国全用途平均も3年ぶりに下落した。国土交通省は「新型コロナウイルス感染症の影響による先行き不透明感から需要が弱まり、総じて上昇幅の縮小、上昇から横ばい又は下落への転化となったと見られる」(注)として、コロナショックの影響が地価に及んでいると説明している。

 基準地価で見る地価の下押し圧力は今年1月から7月に顕著に表れている。年間では横ばいや上昇鈍化の地点でも、この半年間は下落したところが少なくない。公示地価(1月1日時点)と共通の地点について集計すると、大阪・宗右衛門町や東京・西浅草などでこの半年間に10%以上地価が下落した。このほか東京・銀座や名古屋・名駅、京都・祇園などインバウンド需要や再開発などが牽引して地価が大きく上昇してきた大都市・商業地の地点がこの半年間の下落率上位に入った。

 今後、地価は持ち直すのか、横ばいか、それともさらに下落の度合いを強めるのだろうか。

 本稿執筆時点の11月上旬で海外からの観光客の受け入れ再開は決まっておらず、インバウンド需要の回復時期は不透明だ。7月の基準地価時点以降も、飲食・小売店舗や宿泊施設、イベント、旅行関連業種等で客数や売上げの低迷が続いている。オフィスビルの平均空室率もこのところ上昇傾向で、大都市・商業地で不動産収益の増加や地価上昇につながる牽引力は弱い。7月の基準地価から半年が経つ来年1月までの間に限ると、商業地の地価を上昇させる要因が強まる蓋然性は低く、地価は横ばい、ないしは下落傾向が続くのではないだろうか。

 図表は、来年3月に公表される公示地価の年間平均変動率を推計したものだ。3大都市である東京23区と名古屋市、大阪市の商業地のうち基準地価と共通の地点を対象にしている。地価のシナリオは、①今年7月の基準地価から横ばい、②今年1月から7月の変動率と同率で7月以降の半年間が推移(多くは下落)──の2通りとした。

 結果は3大都市すべてで2シナリオとも下落となった。今年18.9%上昇した大阪市の商業地・共通地点平均は、前年比3.6%下落(シナリオ①)ないし6.8%下落(同②)が見込まれる。同じく東京23区は2.2%下落(同①)ないし4.4%下落(同②)。名古屋市は4.3%下落(同①)ないし8.3%下落(同②)で、3大都市の中で最も大きな下落率が推計された。

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(提供:きんざいOnlineより)