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101円台を超える大幅なドル安・円高の進行は見込みにくい

三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト / 市川 雅浩
週刊金融財政事情 2020年11月30日号

 11月3日の米大統領・議会選は史上まれに見る大接戦となり、大統領はバイデン氏、上院と下院は多数派が異なる「ねじれ議会」になる可能性が高まっている。民主党圧勝シナリオの後退で、過度な増税と財政支出拡大の懸念が和らいだことを市場は好感。この結果、米国株は上昇、米国債利回りは低下、米ドルはほぼ全面安となり、ドル円は11月6日、一時103円18銭水準までドル安・円高が進んだ。

 その後、米製薬大手のワクチン開発進展が報じられると、経済活動の正常化や金融政策の正常化への期待が市場で広がり、米国株は上昇、米国債利回りも上昇した。日本円はほぼ全面安となり、ドル円は11月9日、105円65銭水準までドル高・円安が進行した。

 米大統領選直後のドル安・円高は、「株高を伴うリスクオンのドル安」によるものである。一方、ワクチン開発進展の報道を受けたドル高・円安は、「株高を伴うリスクオンの円安」によるものである。いずれも、株高を伴うリスクオンの反応であることに相違はないが、ドル円の方向は正反対だ。この違いは米国債利回りに起因するもので、前者のケースでは利回りが低下し、後者のケースでは利回りが上昇している。

 そのため、今後のドル円相場を見通す上では国債利回りの動向を注視する必要があるが、日本ではイールドカーブ・コントロールが導入されているため、利回りの変動幅が相対的に大きい米国債に、より注目が集まろう。ただ、米国でもゼロ金利政策の長期化が予想されており、米国債利回りが大きく上昇してドル円を大幅に押し上げるには、ワクチンの実用化に向けた一段の進展など、景気にとってかなり強い材料が必要となる。

 当社では、10年国債利回りについて、米国では2020年12月末が0.9%程度、21年3月末は1.0%程度の水準を予想しており、日本ではゼロ%程度の推移が当面続くとみている。これら日米金利差が、ある程度ドル円を支えるかたちとなり、ドル円はしばらく103円から106円程度で推移する公算が大きいと考えている。

 ただ、世界の金融市場には米ドルが大量供給されており(図表)、米ドルに減価圧力は残る。そのため、ドル円は幾分、ドル安・円高方向に振れやすい地合いにはあるものの、3月9日に付けた101円19銭水準を超えて大幅にドル安・円高が進行する展開は、現時点では想定しにくい。

 なお、市場参加者の中には、米ドル安論者と評されている米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事が財務長官になることを警戒する向きもあった。今後はバイデン新政権の陣容や為替政策にも注意が必要だ。

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