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独り勝ちの中国、通年2%程度のプラス成長を維持する公算大

第一生命経済研究所 主席エコノミスト / 西濵 徹
週刊金融財政事情 2020年11月30日号

 昨年末に中国・湖北省武漢市で発見された新型コロナウイルスは、年明け以降は中国全土に感染が拡大した。中国政府は感染封じ込めに向けて都市封鎖など強硬策に動いた結果、今年1~3月の実質GDP成長率は前年同期比6.8%減と四半期ベースで初のマイナスとなるなど、中国景気は深刻な減速に見舞われた。しかし、積極的な感染対策が奏功して経済活動の正常化が進むとともに、例年に比べて遅れて開催された今年5月の全国人民代表大会(全人代)では、財政・金融政策を総動員して景気の下支えを図る方針が示された。

 他国が依然として新型コロナに苛まれるなか、その後の中国経済は「独り勝ち」の様相を呈している。4~6月期の実質GDP成長率は、前年同期比3.2%増とプラス成長に転じたほか、実質GDPの水準自体も新型コロナの感染拡大直前の昨年10~12月を上回るなど、早くもその悪影響を克服した。さらに、世界経済の回復期待を背景に外需の底入れが進み、インフラ関連や不動産関連を中心とする投資拡大を牽引役に、内需も底入れした。7~9月の実質GDP成長率は前年同期比4.9%に一段と加速した(図表)。

 10月末に開催された党中央委員会第5回全体会議(5中全会)では、来年から始まる第14次5カ年計画に加え、2035年までを対象とする長期計画に関する基本方針が採択されるなど、習近平政権の長期化を前提とした経済政策が討議された。具体的な成長戦略には、今春の党中央政治局常務委員会で示された「双循環戦略」が中心に据えられている。これは、改革開放による外需の取り込みに加え、国内における生産、分配、消費の循環を通じた内需拡大を図り、35年までに1人当たりGDPを「準先進国並み」に引き上げるというものだ。さらに、その実現に向けてイノベーション(技術革新)を重視する考えが示された。気候変動問題への対応では、60年の「カーボンニュートラル」実現に向け、35年までに国内で販売される自動車をすべてハイブリッド車や電気自動車などとするなど、新たな取り組みも示された。

 一方で、急速な少子高齢化により向こう数年のうちに総人口が減少局面に転じるという構造問題に対する具体的な対策は示されなかった。

 今年通年の経済成長率は、多くの国がマイナスになることが避けられない。そうしたなか、当面の中国経済は一段と加速度を増す展開が続き、年2%程度のプラス成長を維持する可能性が高いと見込まれる。

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