「ワークライフバランスが重要」。そんなことは言われなくてもわかっている。だが、それができれば苦労はない……そんな悩める40代に対し、「バランスなんて取る必要はない」と断言するのは、これまで1万人以上のビジネスパーソンにインタビューをしてきたコンサルタントの大塚寿氏だ。

バランスを取るのではなく、いっそ「ライフに100%振り切ってしまう」のが、仕事と生活を見事に両立させてきた先人のコツなのだという。

*本稿は、『できる40代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の内容を抜粋・編集したものです。

今の40代に、ワークライフ「バランス」はとうてい無理?

できる40代は、「これ」しかやらない,大塚寿
(画像=THE21オンライン)

日本が「ワークライフバランス」に舵を切って10年以上が経過しました。遅々として進まなかった改革ですが、やっと「ノー残業デー以外にも定時で帰っていい」という意識が浸透してきたように思います。今回のコロナ禍は、こうした動きをますます加速させたといえるでしょう。

この働き方改革については、20代、30代がすんなり受け入れている一方、50代以降はなかなか変われないし、変わろうともしない人が多いのが現実です。難しいのがちょうど中間の40代で、「ワークライフバランスが大事なのはわかるけど、なかなか変われない」と悩む人が多いようです。

実際、多忙な40代にとって、「ワークとライフのバランスを取る」などという器用なマネはかなり難しいのです。だからこそ、お勧めしたいことがあります。それは、「いったん、ライフにバランスを振り切ってみる」ことです。

「自分がいないとできない仕事」なんて、実はほとんどない

例えば、「趣味」を大事にしたいと思うのなら、趣味の時間の確保を最優先します。仕事の予定より先に、趣味の予定を入れてしまいましょう。

外食企業で働いていたIさんは、40代で「仕事ばかりでやりたいことができていない」と気づき、いったん「趣味の山登りのバランスを最大に」しました。そして60歳を過ぎた今も、楽しそうに働いています。

家庭の不和から「奥さんとの時間を最優先する」と決めた人もいます。残業をきっぱり断ち、毎日仕事後にビジネススクールに通うことにした人もいます。皆さん、最初は大変な思いをしたといいますが、その結果、ワークとライフのバランスを見事に取れるようになったのです。

私の場合は、子供ができたことがきっかけでした。家内の「仕事もゴルフもいつでもできるけど、子育ては今しかできないよ」という何気ないひと言が妙に説得力があり、いったん「ライフ」のバランスを最大限に高めてみようと思ったのです。

それを機会に残業も趣味のゴルフもすべてシャットアウトしました。そして、お風呂、ミルク、読み聞かせ、散歩など、可能な限り子育てに時間を費やしたのです。

そこで初めて、実はムダな仕事をかなりしていたことに気づきました。そして、必要な仕事だけを集中して行ったところ、仕事のスピードが倍近く速くなり、生産性も高くなったのです。

「自分がいなければ回らない」と思っていた仕事も、実際には思い込みに過ぎませんでした。顧問先とのミーティングを、「子供をお風呂に入れる時間だから」と中座したところで、まったく問題は起こらなかったくらいです。

つまり、「ライフ」に振り切ってみて初めて、「ワークライフバランス」が実現したのです。「ワークオンリー」でキャリアをスタートさせてしまった40代以上の人は、いったん「ライフ」のバランスを最大限にしないと、すぐに元の「ワークオンリー」に戻ってしまうのです。