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業績相場への移行で来年の日経平均は3万円台が視野に

大和証券 チーフ・グローバル・ストラテジスト / 壁谷 洋和
週刊金融財政事情 2020年12月7日号

 11月の世界の株式市場は、大幅な株高となった。米国では主要株価指数が軒並み最高値を更新し、日本では日経平均株価が29年ぶりの高値を付けた。懸案となっていた米大統領選は比較的早期に決着し、それによって相場の視界が開けた。新型コロナウイルスのワクチンの開発進展が伝えられたことも市場の安心感につながり、楽観論が強まった。さらに、2020年7~9月期の企業決算は、米国企業を中心に事前の市場予想を上回る結果となり、ファンダメンタルズ改善への期待が高まったことが市場の追い風となった。まさに、「良いことづくめ」の好材料の集中で、抑圧された市場のエネルギーが株価を一気に押し上げたとみられる。

 本格的な冬季に入る前から新型コロナは世界中で猛威を振るっており、感染急拡大のリスクについては依然として予断を許さない。一方で、ワクチンの開発が進展し、今冬の感染者急増懸念を飛び越えて、近い将来のワクチン普及と経済の正常化を見据えた動きが先行し、それが株高をもたらしている。その意味では、もはや新型コロナ関連は、大きな市場リスクとはいえないのかもしれない。もちろん、ワクチン開発の遅れや再度の都市封鎖が必要な事態になれば、その都度、株価はネガティブに反応するだろうが、それを除けば、この先の極端な株価の下振れリスクは限定的と考えられる。

 日本の主要上場企業の業績(純利益)は、20年度の減益から、21年度には反動増で4割強の増益に転じる見込みである。21年の株式市場は、金融緩和によって支えられた金融相場から、業績拡大を評価する業績相場への移行が本格化していくとみられる。最近まで日本市場を素通りしてきた海外の投資マネーが、あらためて日本株へと向かうシナリオも描ける。順調にいけば、21年末までに日経平均株価は3万円の大台も視野に入ろう。その際の物色対象は、これまでのグロース株一辺倒から、景気回復期待を背景としたバリュー株選好の流れが強まる可能性もありそうだ。

 仮に、好調な株価回復に水を差すことがあるとしたら、それは想定外の金利上昇であろう。景気回復への期待を織り込むかたちで、市場金利が上昇すること自体は決して不自然なことではないが、景気回復のペースを上回る金利の上昇は、いわゆる「悪い金利上昇」となり得る。今後の株式市場では、両者のバランスをより注意深く観察していく必要がある。

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