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与信費用比率の「凪」はコロナで終わるか

(東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」ほか)

トリグラフ・リサーチ 代表 / 大久保 清和
週刊金融財政事情 2020年12月7日号

 今後、国内貸出業務の収益性に大きな影響を及ぼすと考えられる「与信費用」の動向を予測する上で、企業倒産状況の長期推移を把握することが極めて重要である。

 図表1に、2007年10月以降の東京商工リサーチ(TSR)が公表する月次企業倒産件数の12カ月移動平均と、日本リスク・データ・バンクが公表する企業デフォルト率の推移を示した。両指標共にリーマンショック後の08年度下期から09年度上期にかけてピークを付け、その後は長期低落傾向が続いた。デフォルト率は18年度上期、倒産件数は19年度上期にボトムを打って、その後緩やかな上昇局面を迎えたかに見えたが、今年度に入って再び低下傾向にある。コロナ対応で導入された緊急資金繰り支援策が奏功し、足元、景況悪化に伴う企業倒産連鎖リスクを封じ込めているといえよう。

 図表2では、対象期間を03年度以降に広げ、TSR倒産企業負債総額の対名目GDP比率と、与信費用比率の年度推移を示した。03年度を起点としたのは、金融再生法開示債権、与信費用共に02年度から2期連続で大幅減となり、不良債権問題が最悪期を脱したと考えられる時期だからだ。リーマンショックの起こった08年度には、倒産企業負債総額比率が2.75%、与信費用比率が0.62%へと大きく上昇したものの、翌年度以降は減少に転じた。分析対象17年間の平均値は、倒産企業負債総額比率が0.94%、与信費用比率が0.23%だ。これに対して19年度は、それぞれ0.23%、0.02%であり、このような低位の水準が、異次元金融緩和策が導入された13年以降、7年間も続いてきた。

 「ウィズコロナ時代」とも称される今後については、一過性の経済ショックにとどまらず、産業構造の転換を含む構造的かつ長期的な社会・経済の変化が起こるものと予想される。与信費用比率の水準は7年間の「凪」のような状況が19年度で終焉し、今年度から転換期を迎えることになろう。今後の企業倒産状況を注視したい。

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(提供:きんざいOnlineより)