未公開株式や不動産など実物資産のトークンの取引市場の形成が各国で進んでおり、今後は投資家保護とリスクマネー供給の両立に向けた市場環境の整備が重要となります。

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(画像=STOnlineより)

日本でもベンチャーキャピタル(VC)のエコシステムが拡大しており、機関投資家/一般投資家が未公開株式の売買を直接的に行う市場が構築されることで、相互的な発展を遂げることが期待されます。

本稿では、デジタル資産と機関投資家に関する最新事例を踏まえて、デジタル証券取引所の上場基準やSPAC(特別買収目的会社)との違いについて考察していきます。

目次

  1. デジタル証券取引所のメリット・デメリット
  2. デジタル資産と機関投資家に関する最新事例
  3. まとめ

デジタル証券取引所のメリット・デメリット

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スタートアップ企業への関心は年々高まりを見せていますが、従来のVCエコシステムに小額投資から投資を行える領域が構築され、未公開株式のみならず実物資産を担保にしたデジタル資産市場とも結びつくことで投資家はより幅のある資本市場の恩恵を受けることにつながります。

一般投資家もVCのようにイグジットを目指せるようになるなどメリットを挙げることは簡単ですが、実際にデジタル証券取引所の上場基準をクリアできるスタートアップ企業がどれほどいるのか、企業にとってデジタル証券取引所に上場し、自社株を取引させるメリットがどれほどあるのか未知数な部分も多々存在します。

シードからシリーズCラウンドでの資金調達を目指す企業への投資は非常にリスクの高いもので、資本政策を鑑みても、創業の早期に一般投資家への株式の譲渡を行ってしまった場合にはコーポレートガバナンスの面で将来的な成長の障害となることも考えられます。

大枠で見るとIPOまで漕ぎ着ける企業はほんの一握りであることから積極的にリスクマネーの供給を行い産業振興を図ろうとする取り組みは重要である一方、スタートアップ企業が早期に上場する事例としてはSPAC(特別買収目的会社)が2020年は米国で流行しており、デジタル証券取引所はどのようにして株式市場の健全性を担保するつもりなのか、その上場基準の内容など大きな注目を集めることでしょう。

SPAC(特別買収目的会社)はブランチェックカンパニー(空箱会社)と呼ばれる事業活動を目的としない会社がIPOを行い、そこで資金調達を行います。

IPOによって調達した資金をもとに有望なスタートアップ企業を買収/合併し、上場企業とすることでSPAC(特別買収目的会社)は従来のIPOプロセスとは異なる枠組みで機能しており、未公開株式の上場といった観点ではデジタル証券取引所の目指すコンセプトと似た事例であると言えます。

しかし、SPAC(特別買収目的会社)は他社の買収/合併を通じてはじめて成立するスキームであり、IPOによってブランチェックカンパニー(空箱会社)が多額の資金を調達していること自体を問題視する声も少なくありません。

デジタル証券取引所は上場基準を設けることで、ある一定の健全性を担保することが求められ、本質的な部分でSPAC(特別買収目的会社)とはことなる未公開株式の上場市場であると考えられます。

未公開株式への投資は将来的にその企業が成長を遂げ、IPOを実現した際に投資家が大きな恩恵を受けるといったメリットはあるものの上場までの期間が長期化しており、デジタル証券取引所を介することでVCや機関投資家がイグジットを図るといった機能も期待されます。

ただ、スタートアップ経営において株主が頻繁に変わることはコーポレートガバナンスを構築する上では、大きな負担となることが考えられ、そのような制約のないデジタル資産(実物資産のトークン)が市場の成長を牽引することが最適解であるとも言えます。

デジタル資産と機関投資家に関する最新事例

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海外ではスタンダード・チャータード銀行によるデジタル資産のカストディサービスやフィディリティとブロックファイがビットコイン担保融資を発表するなど資産運用のみならず、さまざまな金融サービスとデジタル資産が結びつく事例が確認されています。

ゴールドのETFからの資金流出とビットコイン価格上昇の相関性があるとJPモルガンは分析しており、機関投資家にとってのゴールドとデジタル資産については下記のように説明しています。

機関投資家によるビットコインの採用は始まったばかりですが、金の場合、機関投資家によるビットコインの採用は非常に進んでいます。

ほとんどの機関投資家はビットコインへのエクスポージャーがゼロであり、ある程度のエクスポージャーがある投資家、主に富裕層/ファミリーオフィスの場合でもエクスポージャーは資産の約1〜3%と小さいです。

ファミリーオフィスは世界で約6兆ドルの資産を管理しており、グレイスケールビットコイントラストのAUMは100億ドルをわずかに上回っていることからファミリーオフィス資産のわずか0.18%をビットコインはシェアしているにすぎません。

これは、ゴールドETFの3.3%のシェアと比較するととても小さいことがわかります。

投資対象としてのビットコインはその価値の希少性から市場でも高い評価を得るようになり、実体経済と金融経済が量的緩和の影響で大きく乖離する中、その社会的価値を高めることに成功しています。

しかし、デジタル資産市場全体では資産に担保されたトークンの発行市場はとても小規模であり、その取引市場が果たして機関投資家からの支持を集めるかは担保された資産の希少性による所が大きいです。

短期的にはビットコインの価格下落とともに市場環境は冷え込むことも念頭においた投資戦略が重要と言えますが、機関投資家がその本質的な価値をデジタル資産に見出すことは中長期的に市場全体の裾野を広げることにもつながります。

現在はデジタル資産がその社会的地位を確立する真っ只中にあり、資本市場の中でビットコイン やDefi(分散型金融市場)がどのように位置付けられるのか、さらに今後どのような資産や金融領域が開拓されていくのか大きな歴史の分岐点に我々は立ち会っています。

まとめ

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デジタル証券取引所のメリット・デメリットを今回は考察してみました。

現在のところ取引所インフラの構築が最大のホットスポットであり、そこにどのような技術が活用され、今後の金融領域を支えていくのかを知ることが重要であると言えます。

実際の投資商品としての価値をデジタル証券や資産担保型のデジタル資産に見出していくのはさらにその先であると言え、3-10年のスパンでデジタル証券取引所の社会的需要に関してはみていく必要があると言えます。(提供:STOnline