経済
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経済活動再停止により、10~12月期はマイナス成長の公算大

ニッセイ基礎研究所 准主任研究員 / 高山 武士
週刊金融財政事情 2020年12月14日号

 欧州では経済活動維持と新型コロナウイルスの感染拡大防止の両立を目指してきたが、その道のりは険しい。欧州各国のウイルスとの戦いを振り返ると、今年2月にイタリアでクラスターが発生して以降、域内感染急拡大→医療体制逼迫→都市封鎖→経済停止と急速に深刻な状況に陥った。域内の新規感染者数は4月にピークアウトしたものの、4~6月期のユーロ圏の落ち込みは日本や米国と比較しても大きくなった。

 その後、夏にかけて感染拡大が抑制されたことでソーシャルディスタンスの確保など感染回避策を講じつつ、経済活動を速やかに再開させることで経済の回復を目指した。7~9月期の成長率は市場予想を大きく上回って反発。7月にはEU首脳会議で7,500億ユーロの復興基金設立も合意され、経済回復への期待もかなり高まった。

 しかし、夏の終わり頃から感染の再拡大が目立つようになった。第2波が懸念され始めたスペインでは、マドリードで飲食店の深夜営業禁止など封じ込め政策は強化しつつも、地域・時間帯・業種を絞って制限することで経済活動をできる限り維持するように努めた。だが、9月には新規感染者数が第1波を超えた。ユーロ圏の新規感染者数は11月に16万人に達し、第1波のピーク(約2.5万人)を大きく上回る状況となってしまった(ジョンズ・ホプキンズ大学調査、14日移動平均)。

 結果として、医療体制の逼迫により経済活動を停止せざるを得ない状況に陥っている。春ほどではないが、全土レベルで不要不急の外出を制限するなど、再び広範囲かつ強固なロックダウンを講じる国が出てきた。

 欧州では感染再拡大による経済活動停止というダウンサイドリスクが顕在化しており、10~12月期の成長率は前期比で再びマイナス成長となる公算が大きい。

 クリスマスシーズンはサービス産業にとって「繁忙期」であり、12月は特に売上げが多くなる(図表)。クリスマス期間の制限はやや緩和される予定だが、平時のような盛り上がりは見込めないだろう。繁忙期の活動自粛はほかの月における自粛よりも経済への影響は大きいとみられる。経済協力開発機構(OECD)が12月に公表した経済見通しでは、20年のユーロ圏成長率を前年比7.5%減と予想しており、米国(3.5%減)や日本(5.3%減)と比べてもかなり深刻だ。

 来年も困難な状況は続くとみられる。感染再拡大に伴うロックダウンリスクがあらためて認識されたため、経済活動再開にはこれまで以上に慎重にならざるを得ない。さらなる感染防止策も求められるだろう。ワクチン普及期待など好材料もあるものの、ウィズコロナの生活は当面、一筋縄ではいかないと思われる。

きんざいOnline
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(提供:きんざいOnlineより)