「料理が得意な人」はカッコいい。ただ、仕事で忙しく時間もないため、ここ数カ月は台所にすら立っていない……そんな読者も多いはず。そんな人にこそ「料理」の楽しさと効能を知ってほしいと話すのは、Twitterフォロワー25万人超えのバズる料理研究家「ジョーさん。」。

新刊『ジョーさん。の神速うまレシピ』(PHPビジネス新書)を発刊したジョーさん。に仕事力と料理の意外な関係性をうかがうとともに、お勧めのレシピを紹介してもらった。(写真:鈴木正美(studio orange)

本稿は、『THE21』2020年12月号の内容を一部抜粋・編集したものです。

仕事も料理もできる人に共通する「アドリブ力」

仕事力,料理,ジョーさん。
(画像=THE21オンライン)

料理をしているとしばしば、「これは仕事をしているときと『使っている脳の場所』が同じだな」と感じることがあります。

例えば、ビジネスの世界では「アドリブ力」が非常に重要です。時間をかけて万全の準備をしてプレゼンに臨んだのに、発表直前になって予算や条件が変更になったことを知らされる……。仕事をしているとよく直面するケースです。

そんなとき、思考停止して何も言えなくなってしまっては、仕事になりません。その場でアドリブを利かせ、相手の話を聞きつつ提案内容を臨機応変に調整しながらプレゼンできるのが、「できるビジネスパーソン」です。

実は料理もまさに、「アドリブの連続」。「料理はレシピ通りに作ればいい」と考えている人もいるかもしれませんが、必ずしもそれが正解ではありません。

例えば、今日は肉じゃがを作ろうとスーパーへ行ったら、ジャガイモは旬でないこともあってか、ものすごく値段が高い。そんなときは「もともと牛肉が食べたかったわけだし、肉じゃがはやめてすき焼きにしようか。あるいはいっそ牛丼を作ってみようか」などとすぐにアドリブを利かせることができるのが、「料理ができる人」です。

一方、アドリブが利かない人はレシピに固執します。値段が高くてもジャガイモを買い、あくまでレシピ通りに作ろうとする。ただ本来、素材というものは旬のときこそおいしく、栄養価が高いもの。しかも値段も安い。アドリブ力がある人ほど、安い値段でおいしいものを食べることができ、しかも健康になれるのです。

私は料理研究家として、クライアントの方と共同でレシピ開発をするなどの仕事を手がけることがあります。ところが、先ほど挙げたプレゼンのケースと同様に、直前になって条件が変更になることは珍しくありません。

その際、その場ですぐに新しいアイデアを出したりして臨機応変に対応するのですが、ここで、料理において培かった「アドリブ力」が大いに役立っていると感じます。

科学的な根拠があるわけではありませんが、料理でアドリブを利かせるときと脳の同じところが働いているような気がするのです。

一見、面倒に思える買い物や料理も、「アドリブ力を鍛える良い機会」だと考えれば、見方も変わってくるのではないでしょうか。

冷蔵庫の中身は社内の「リソース」である

料理によって鍛えられる仕事の力は他にもあります。最も期待できるのは、「段取り力」です。

冷蔵庫に何がどれだけ残っているかを把握し、いつ買い物に行き、いつ、どんな料理をしようかと計画を立てる。料理をすることで、こうした「段取り力」は確実に高まります。

仮にさば缶が残っていたとすれば、そのさば缶を使って一品できないかと考えてみる。冷蔵庫にえのきが残っていれば、その二つを組み合わせておいしいホイル焼きの完成です。

これはまさに、自社や自分のチームにはどういったリソースがあるかを把握し、それを活用してビジネスを進めていくという「チームマネジメント」と同じです。

仕事でやりたいことがあっても、自分の手元にリソースがなければうまくいきません。例えば、内向的な人が多い営業チームに体当たり営業をさせたところで、効果は薄いでしょう。

一方、SNSや動画に強いメンバーが多いのだとしたら、彼らを主体にしてSNSマーケティングを展開することで、より大きな成果を上げることができるのではないでしょうか。リソースを生かすことの重要性は、料理でも仕事でも変わらないのです。