令和3年(2021年)の株式相場がスタートしました。

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、日本でも再び1都3県に緊急事態宣言が発動され、米国ではバイデン新大統領の選出が確定し、新政権での大規模な経済対策の実施に期待が高まる展開となっています。

過剰流動性が背景とみられる上昇相場は継続し、1/8(金)の日経平均株価は1990/8/8(水)以来、およそ30年5ヵ月ぶりの高値水準を回復し、28,000円台を突破しました。

こうした中、1月に入り、今年度分のNISA(少額投資非課税制度)枠での買付がはじまりました。

NISAの特徴は株式投資であれば、値上がり益のみならず、配当についても非課税の対象になることです。したがって、同じ投資元本でも、期待できる配当の額が多いほど、NISAを有効に活用できるとも言えます。

そこで今回は、予想配当利回りが高く、且つ増配が継続され、今期も増配が予想される銘柄の抽出を行いました。

高配当利回り銘柄の投資パフォーマンスは苦戦中

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

NISAの活用については、同じ投資元本でも、期待できる配当の額が多いほど、NISAを有効に活用できるとも言え、配当利回りの高い銘柄に人気が集まる傾向にあるようです。 2月末には外食・小売等、3月末には大多数の上場銘柄が配当の権利が確定する期末を迎えることになり、雑誌や動画等のメディアで「高配当利回り銘柄の特集」を目にする機会が増えるため、投資家の関心が改めて深まってくると考えられます。

ちなみに、メディア等では“高配当利回り銘柄”と表現されることが多いのですが、投資家が主に留意すべきなのは“予想配当利回り”です。その理由は、予想していた配当が実現されなければ意味がないためです。

予想配当利回りは、予想1株配当金を株価で割って求められます。したがって、予想1株配当金や株価が変動すれば当然異なる値になってきます。前者は会社の配当政策の変更等によって変わりますし、会社の配当政策はその会社の業績によって変わります。また、株価は常に変動するため、予想配当利回りも常に変動します。

なお、予想1株配当金の「予想」とは企業やアナリスト、会社四季報等、様々な予想数値が存在するため、予想配当利回りのデータを利用して投資する時は、予想の主体がどこにあるのか十分注意することをお勧めします。

また、予想配当利回りの計算のベースになる予想1株配当金は、年間に受け取るすべての配当金を指します。したがって、中間配当が予想されている銘柄では、9月末の配当を受け取らない場合、3月末の配当だけを受け取っても、表記の予想配当利回りを確保することはできません。

さらに注意すべきは、予想配当利回りの高い銘柄を買えば、投資パフォーマンスが向上するとは言い切れない点です。 下の図表1は、配当利回りの高い銘柄で構成される「日経平均高配当株50指数」を「日経平均株価」と比べてみたものですが、過去3年は値下がり基調であり、好配当銘柄の株価パフォーマンスは株式市場全般の動きに劣後してきたといえそうです。

これは米国や日本の株式市場において、資産や利益、配当と比べ割安感が強い“バリュー銘柄”よりも、将来の成長期待が高い“グロース銘柄”の優位が続いてきたことが背景と考えられます。ただ、赤丸で囲んだ最近の動きをみると、底打ちの兆しもあるように思います。

図表1 高配当銘柄の株価パフォーマンスは株式市場全般の動きに劣後

高配当銘柄の株価パフォーマンスは株式市場全般の動きに劣後
(画像=※日経平均株価データをもとにSBI証券を作成。日経平均高配当株50指数を日経平均で割った数値をグラフ化。)

高配当利回り+連続増配の銘柄でパフォーマンスの向上に期待!?

上述したように、予想配当利回りの高い銘柄を買えば、投資パフォーマンスが向上するとは言い切れません。

そこで、パフォーマンス向上のための“ひと工夫”を考えてみました。

その“ひと工夫”とは、高配当利回りが予想される銘柄について実績をチェックし、連続増配を維持してきた銘柄に絞ることです。その結果抽出された銘柄が図表2の銘柄で、過去3年間の1株配当増加率が高い順に羅列しました。

スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証上場銘柄(12月決算銘柄を除く)であること。
(2)時価総額が300億円以上の銘柄であること。
(3)予想配当利回り(市場予想ベース)が3%超の銘柄であること。
(4)今期も増配が予想(市場予想)されている銘柄であること。
(5)過去3年間増配が続いている銘柄であること。
(6)過去3年の平均増配率(年率)が5%超の銘柄であること。

なお、今回12月決算銘柄を除いた理由は、権利・配当落ちが終わって間もないことを考慮したためです。日経平均採用銘柄および東証1部上場銘柄の予想配当利回りはいずれも1.6%台(1/7現在)で、スクリーニング条件とした予想配当利回り3%はそれを大きく上回る数字になっています。

さらに、レポート作成に用いたデータは1/7(木)時点の数字ですが、1/8(金)に日経平均株価が大きく上昇しており、個別にも株価が大きく変わっている銘柄もあるかと思いますので、その点はご注意ください。

高配当利回り+連続増配銘柄
(画像=SBI証券)

図表2 高配当利回り+連続増配銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(1/7) / 今期市場予想 / 年平均配当増加率(3年)配当利回り / 1株配当
<5857> / アサヒホールディングス / 3,830 / 4.47% / 171.25 / 35.7%
<8593> / 三菱UFJリース / 509 / 5.27% / 26.83 / 21.0%
<1861> / 熊谷組 / 2,644 / 4.84% / 128.00 / 19.7%
<9303> / 住友倉庫 / 1,346 / 3.57% / 48.00 / 17.1%
<8424> / 芙蓉総合リース / 6,940 / 3.19% / 221.67 / 15.9%
<8630> / SOMPOホールディングス / 4,208 / 3.98% / 167.47 / 13.9%
<8750> / 第一生命ホールディングス / 1,728.5 / 3.60% / 62.16 / 13.0%
<8008> / ヨンドシーホールディングス(2) / 1,977 / 4.10% / 81.00 / 11.9%
<9436> / 沖縄セルラー電話 / 4,650 / 3.31% / 154.00 / 11.9%
<8058> / 三菱商事 / 2,612 / 5.13% / 134.00 / 11.6%
<8306> / 三菱UFJフィナンシャル・グループ / 480 / 5.22% / 25.08 / 11.6%
<8418> / 山口フィナンシャルグループ / 600 / 4.33% / 26.00 / 11.6%
<5970> / ジーテクト / 1,542 / 3.37% / 52.00 / 9.8%
<6737> / EIZO / 3,595 / 3.20% / 115.00 / 9.0%
<8795> / T&Dホールディングス / 1,350 / 3.29% / 44.36 / 7.9%
<1928> / 積水ハウス(1) / 2,090 / 3.93% / 82.17 / 7.6%

※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。「市場予想」はBloombergが集計した市場コンセンサス。年平均配当増加率(3年)は、過去3年間の累計配当増加率を年率に引き直した数字で、あくまでも過去のデータであり、将来の増加率を保証するものではありません。銘柄名右のカッコ内の数字は本決算月を示しており、カッコのない銘柄はすべて3月決算銘柄です。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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