2月2日、楽天証券株式会社の2020年12月期決算説明会が行われた。同社の2020年1月〜12月の営業収益は723億600万円(前年同期比29.0%増)、経常利益は152億1,400万円(同48.3%増)となった。

アメリカで若年層を中心に投資アプリ「ロビンフッド」が流行したことに代表されるように、新型コロナウイルスの影響により、人々の在宅時間が伸びたことはネット証券会社にとって追い風となった。国内においても、こうした傾向は顕著で楽天証券も昨年12月時点で証券総合口座数が500万に到達。

2020年3月に400万口座に到達した際は、100万口座増まで15ヶ月を要しているが、そこから500万となるまでには約9ヶ月しかかかっておらず、過去最短のペースを更新している。200万口座から300万口座に達するまで約35ヶ月かかっていることを考えれば、その増加ペースの速さがわかるだろう。今年1月には預り資産残高も10兆円を超えており、その好調ぶりがうかがえる。

女性や30代以下の若年層から支持を集める

決算説明会において、楽天証券株式会社の代表取締役社長である楠雄治氏は、新規口座開設者の特徴として、女性や若年層が多いことを挙げた。同社の資料によると、2016年との比較では女性比率が3割から4割に増加。30代以下の比率が5割から6.5割、初心者の比率も6割から7割に増加しており、楽天証券のサービスが女性や若年層、投資初心者から支持を集めていることがうかがえる。

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(画像=楽天証券プレスリリースより)

こうした層から支持を集めている背景には、同社が楽天グループであることの強みを生かし、いわゆる「楽天エコシステム(経済圏)」の恩恵を受けられるサービスを展開していることがある。特に投資初心者向けに資産形成の第一歩となるようなサービスの提供に尽力しており、楽天ポイントで投資信託や国内株式などが取引できる「ポイント投資」サービスや、楽天カードの1%ポイント還元を受けながら投資信託の積立ができるサービスが人気を集めている。

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(画像=楽天証券決算説明会資料)

こうした資産形成関連サービスの成長率は加速しており、2020年12月時点で、投資信託の積立設定額は前年同期比で144.2%増、投資信託の保有者数は同約70%増となっている。また、投信積立を設定している顧客の7割が「楽天カード」のクレジット決済を活用しているという。

米国と比較すると日本の状況は「健全」?

前述のように楽天証券の新規口座開設者は若年層が多いため、情報収集の経路もこれまでと変化が見られる。コロナ禍における在宅勤務の増加などの影響もあって、動画を参考にする人の割合が増えており、楽天証券が運営するYouTubeチャンネルの登録者数も4万を超え、その8割がスマホ経由で閲覧している。

そして、個人投資家としての情報収集方法としてYouTubeを挙げる人の割合は2019年の6.2%から30.0%と大幅に増加。なかでも20代と投資経験1年未満の初心者は、それぞれ4割以上がYouTubeを参考にしているという。

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(画像=楽天証券決算説明会資料より)

口座開設は今年に入っても好調を維持しており、1月の新規口座開設数は19.6万超と過去最高となった。こうした新規口座開設者の傾向について楠氏は、「短期のトレーディングはもとより、資産形成のための長期投資目的の人が非常に増えてきている」と分析。新規口座開設者の多くが30代以下という状況について、「創業時には考えられなかった」と語り、遅ればせながら日本でも資産形成ブームが来ていると感じているという。

口座開設者の若年層化が進む中で、スマホでの取引も増加傾向にあるようだ。スマートフォン向け株式トレーディングアプリ「iSPEED®️」での米国株取引もその一例で、米国株式取引の約定件数は、前事業年度比11倍と急増している。そのうち、約6割は「iSPEED®️」経由だという。

投資情報をスマホで見ている割合の増加に加え、20年4月から業界で初めて日米株式の銘柄を1つの画面で比較・取引できるようになったことで利便性が向上したことも効果があったのではないか、と考えられる。

アメリカでは、ロビンフッド族と呼ばれる個人投資家による取引が加熱した結果、一部銘柄が乱高下し、取引が制限されるなど波紋を広げているが、こうした状況と比較すると、日本の状況はある意味で「健全」だと指摘。今後も資産形成目的の口座開設者が増えていくことを見据え、楽天市場のSPU(スーパーポイントアッププログラム)との連携や、先述の「ポイント投資」、楽天カードを利用した投信積立の普及に加え、楽天銀行との連携サービス「マネーブリッジ」など、他社にはない楽天グループのシナジーを効かせたサービスを中心に、「大衆に愛されるネット証券」として拡大していきたいと語った。