本記事では、まず新型コロナが歯科衛生士に与える影響を具体的に解説した後、「なぜ新型コロナウイルス感染症によって歯科衛生士は転職を検討するのか?」について説明します。

最後に、自院の歯科衛生士の転職を防ぐポイントについても触れていますので、ぜひコロナ禍における歯科医院(歯科診療所)の経営の参考にしてください。

新型コロナが歯科衛生士の仕事に与える影響

新型コロナによる歯科衛生士への影響と転職を抑えるポイント
(画像=ponta1414/stock.adobe.com)

メディカルネットの調査によると、新型コロナによって多くの歯科医院経営は影響を受けており、具体的には次のような状況に直面しています。

  • 診療時間の変化
  • 勤務体制(勤務人数・勤務時間)の変化
  • 患者数減少

同調査では、緊急事態宣言発令付近(2020年5月中旬)に「診療時間の変更があった」と回答したのは全体の42.0%、「勤務体制(勤務人数・勤務時間)の変更あり」は47.5%、「患者数減少」は88.5%となっていました。2020年8月下旬の調査でも、約7割の患者が戻りきっていない状況です。

歯科衛生士の感染防止対策としても、ビニールエプロンやディスポーザブルの帽子を着けたりこまめに消毒したりなど仕事方法の変化が求められていますし、勤務が減って収入が落ち込んだり子どもの臨時休校や保育園の休みによって家庭との両立が難しくなったりしている、といった問題もあります。

新型コロナで歯科衛生士が転職を検討する理由

歯科衛生士が新型コロナで転職を検討する理由として、以下のポイントが挙げられます。

  • 自身が新型コロナに感染してしまうリスク
  • 給与など待遇・将来性の問題
  • 家庭・育児との両立

それぞれ見ていきましょう。

感染リスク

歯科衛生士はスタッフや多くの患者と接する仕事ですし、口に触れるため常に感染症のリスクがあります。そのため感染防止対策への取り組みが甘い歯科医院は不安になり、より対策が徹底されている職場に移りたいと考えるケースもあるでしょう。

歯科医院の感染対策を徹底するためには、以下のような対策を実施することが大切です。

  • 患者の来院時の消毒・検温
  • 待合室のソーシャルディスタンス
  • 受付のパーテーション
  • ビニールエプロン・使い捨て帽子の着用
  • 口腔外バキュームの導入

待遇・将来性

コロナ禍においては緊急事態宣言などで「不要不急の外出自粛」が求められるようになり、当初飛沫が飛ぶと捉えられた歯科医院が患者に敬遠されるケースがあります。

前掲の調査を見ても患者数が落ち込んでおり、経営的にダメージを受けている歯科医院は少なくありません。

こうした医業収益の不振によって歯科衛生士の給与・ボーナスが減ることとなり、勤務する歯科医院に不安を感じたり、将来性に疑問を抱いたりして転職を考えることもあるでしょう。

家庭との両立

厚生労働省は歯科衛生士を含む医療従事者向けに保育所などを優先的に提供するよう働きかけています。しかし、小学校などの学童期以降は長らく一斉の休校になったり、そもそも子育てしながら感染リスクがある仕事を続けることに抵抗を感じる歯科衛生士もいます。配偶者への影響を考慮することもあるでしょう。

そのため、「新型コロナが落ち着くまでは医療の現場から離れたい」と考えた結果、感染リスクの低い職場や、在宅ワークにジョブチェンジする可能性があります。

コロナ禍でも歯科衛生士の転職を防ぐ方法

コロナ禍の状況でも歯科衛生士の転職を防ぐ方法として、以下のポイントが考えられます。

  • 万全な感染対策
  • 待遇や将来性で不安を与えない
  • 積極的なコミュニケーション

以下では具体的に解説します。

感染対策を万全にする

新型コロナの感染防止対策の徹底は患者のみならず、スタッフの安全・安心のために必要です。

厚生労働省は、歯科医療機関が行うべき院内感染対策や電話や情報通信機器を用いた診療等についてもアナウンスをしており、こういった方法を取り入れることも有効でしょう。

具体的な院内感染対策としては、次のものが挙げられます。こういった対策をしていることを常にスタッフに周知し、安心感を持って働いてもらえる環境を整えましょう。

  • 患者の呼吸器症状の有無・海外渡航歴などの確認
  • 待合室への空気清浄機の設置
  • 診療室の定期的な換気・空間除菌
  • 入口や治療ユニットでの手指消毒
  • 使用する道具の個包装

待遇・将来性で不安を与えない

コロナ禍の患者数減少などで経営ダメージが大きく、「やむを得ず人件費を削らなければならない」、「給与をそれほどアップできない」といった事情を抱える歯科医院もあるでしょう。

それ自体は仕方ありませんが、歯科衛生士に不公平感・不信感・不安を与えないよう、納得できる説明ができるよう配慮する必要があります。

院長とスタッフの考え方は異なる部分もありますし、「こんなに頑張っているのになぜボーナスを減らされるの?」と考える歯科衛生士もいますので、しっかりとした説明が重要です。

コミュニケーションを積極的にとる

新型コロナによって歯科衛生士はさまざまな不安や緊張を抱えています。院長が不安や心配を汲み取ることで、気持ちの整理や不安の解消ができ、転職を防ぐことにもつながります。

誰もがコロナ禍という初めての状況で、さまざまな不安を抱えながら頑張っているわけですし、特に歯科衛生士の仕事は飛沫感染などのリスクをゼロにするのは困難です。まずはしっかりと話を聞いて不安を受け止め、それに対するねぎらいの言葉や評価を適切に行いましょう。

まとめ

新型コロナによって多くの歯科医院が診療時間の変化、勤務体制の変化、患者数の減少といった影響を受けています。歯科医院で働く歯科衛生士への影響も大きく、感染リスク、待遇・将来への不安、家庭との両立を考えて転職を検討するケースがあります。

そのような転職を防ぐ方法としては、感染対策を万全にしたうえで、待遇・将来性について不安を与えないように積極的なコミュニケーションを取る必要があるでしょう。

《情報収集で参考にしたサイト》
引用元:PR TIMES 「コロナ禍における歯科医院の経営状況に関する定点調査」 8割以上の医院が従来通りの診療体制へ復帰

引用元:厚生労働省 歯科医療機関における新型コロナウイルスの感染拡大防止のための院内感染対策について

引用元:厚生労働省 歯科診療における新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて

(提供:あきばれ歯科経営 online