株式投資の運用スタンスには、数日間の売買で値上がり益を目指す短期投資と、年単位でじっくり利益を積み上げる長期投資の2通りがあります。どちらを選ぶべきかは、投資の目的や投資スタイルなどにより異なります。自分に合った投資方法を選ぶことで、負担を抑えた上手な資産運用を目指しましょう。

目次

  1. そもそも株式投資とは?基本事項をおさらい
  2. デイトレードに代表される短期投資とは?
  3. じっくりと利益を積み上げる長期投資
  4. 短期投資と長期投資はどのような人に向いているか
  5. お得に長期投資ができる制度1:「NISA」
  6. お得に長期投資ができる制度2:「iDeCo」
  7. 投資期間は投資スタイルにより異なる。長期投資なら税制優遇も活用しよう

そもそも株式投資とは?基本事項をおさらい

株で資産運用するなら「短期投資」と「長期投資」のどちらを選ぶ?投資に使える税制優遇措置も紹介
(画像=small smiles/stock.adobe.com)

株式投資とは、企業が発行する株式に投資をすることで利益を狙う運用方法です。成長が期待できる企業や株価が割安な銘柄の株を購入し、大きな値上がり益を狙うのが株式投資の魅力といえます。一方で、株式投資は値動きの幅が大きく、債券や投資信託などと比べリスクが大きい金融商品といわれます。株式投資をする際には、生活資金や将来使う予定のあるお金ではなく、使い道の決まっていない「余裕資金」ではじめることが重要です。

株式投資では3つの利益を狙おう

株式投資では、キャピタルゲインである「値上がり益」と、インカムゲインである「株主配当」「株主優待」を得られます。

・株式投資の利益1:値上がり益

値上がり益は、購入時よりも高い株価で株を売却したときに得られる差益です。たとえば、100万円で購入した株式を120万円で売却した場合、20万円が値上がり益となります。

・株式投資の利益2:株主配当

株主配当は、権利確定日に投資家が保有している株式数に応じて支払われる利益です。1株につき20円の配当が支払われたとすると、100株保有している投資家が受け取る配当金は2,000円(20円×100株)です。

配当金が支払われる回数は日本企業の場合、年1回や半年に1回などが多いですが、米国株は年4回などで、銘柄により異なります。配当額は決算により決定されますが、業績が悪化した場合には配当金が下がったり配当されなかったりすることもあります。投資銘柄を決定する際には、過去の配当実績も確認しましょう。

・株式投資の利益3:株主優待

株主優待は、権利確定日に一定以上の株式を保有している株主に対して、配当金以外の商品やサービスなどを贈る日本企業独特の制度です。株主優待では企業が取り扱う商品以外に、優待券や割引券、工場見学招待券、クオカードなどが贈られます。

多くの企業では、100株や200株などまとまった株を保有する投資家を対象に、株主優待を行っています。また、長期で株を保有している投資家には、優待内容を上乗せするケースもあります。株式投資で株主優待を楽しみたいと考えている人は、優待内容や受け取れる条件をあらかじめ確認することが大切です。

株式投資の利益の大きさは利回りで確認

株式投資でどのくらいの利益を得たかを知るには、「利回り」を計算します。利回りは、株式投資の運用成績を把握できるだけでなく、目標とする利回りを定めて株式を売却するタイミングを計るといった活用もできます。

利回りには、「配当利回り」と「総合利回り」の2種類があります。それぞれの計算方法や活用方法を確認しましょう。

・年間の配当金で計算する「配当利回り」

配当利回りとは、購入した株価に対し1年間でどのくらいの配当を得たかを表す利回りです。配当利回りは、以下の式で計算します。

配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金額÷1株購入金額×100

仮に、1株2,000円で購入した銘柄で、1年間に20円の配当を得たとしましょう。この場合の配当利回りは、1%(20円÷2,000円×100)です。配当利回りは、配当額だけでなく株をいくらで購入したかによっても変わります。先の例でいうと、1株2,500円で購入していた投資家であれば、配当利回りは0.8%(20円÷2,500円×100)となります。

・総合収益で計算する「総合利回り」

総合利回りは配当金だけでなく、値上がり益や株主優待(現金換算)・値上がり益・無償交付などを合算した総合収益をもとに計算した利回りです。総合利回りは、以下の式で計算します。

総合利回り(%)=((配当+株主優待+売却損益+無償交付)÷保有年数)÷購入株価×100

総合利回りは、売却済みの株式の投資結果を計るのに便利な利回りです。最終的にどのくらいの成果を得られたかを知りたいときに、計算してみるとよいでしょう。

デイトレードに代表される短期投資とは?

ここからは、株式の投資期間について詳しく解説していきます。株式投資では、想定する投資期間によって投資方法やメリット・デメリットが異なります。まずは、短期投資についてみていきましょう。

代表的な短期投資の1つに、1日で株の売買を終わらせるデイトレードがあります。デイトレードでは配当金や株主優待ではなく、値上がり益の積み上げによる利益を狙っていきます。

デイトレードのメリット:投資結果が早くでる

デイトレードは、原則として取引を翌日に持ち越しません。そのため、投資結果を早くはっきりさせられるメリットがあります。株価上昇時はもちろん、下落したときにもその日中に売却するため、含み損の増加で塩漬けになるといったリスク回避も図れます。また売買を翌日に持ち越さないことで、証券取引所が閉まった後に発表されたニュースなどの影響を受けずにすむのも、デイトレードの魅力だといえるでしょう。

デイトレードのデメリット:日中忙しい人は不向き手数料がかさむことも

デイトレードでは、株式市場が開いている前場(平日9:00~11:30)と後場(平日12:30~15:00)で何度も売買を繰り返すことになります。そのため、仕事などが忙しく日中に株取引の時間が十分とれない人にとって、不向きな投資スタイルといえます。

そして、デイトレードをする際に忘れてはならない注意点が、手数料です。株式投資では、売買をするたびに手数料がかかります。そのため、売買回数が多くなった場合、手数料がかさむ可能性があります。証券会社によっては、約定ごとではなく、1日の合計約定代金に対し手数料が決まる定額プランもあります。売買回数が多い場合には、手数料プランの変更も検討するとよいでしょう。

銘柄選びのポイントは?

デイトレードをするなら、1日のうちに値上がり益を出すことを目指さなくてはなりません。取引量が少なく、値動きが少ない株価に投資をした場合、値上がり益をほとんど得ることなく売却となる可能性もあります。デイトレードを成立させるには、取引量が多く値動きがある銘柄を選ぶことがポイントといえるでしょう。取引量が多い銘柄を見つけるのが難しい場合には、証券会社が提供する出来高ランキングや値上がりランキングなどを参考にするのも手です。

デイトレードではどのくらいの利回りを目指すか

1日で売買を終えるデイトレードでは、購入時の1.5倍、2倍といった株価で売却できることはほとんどありません。あくまでも1日の値動きの中で利益を目指す投資スタイルのため、1回の売買で得られる利益は限定的です。

たとえば、1,000円の銘柄に投資し、1,020円で売却した場合の利回りは2%です。デイトレードでは、

1%前後の利益を着実に積み上げていく投資を目指していきましょう。

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じっくりと利益を積み上げる長期投資

長期投資は数年単位で株を保有し、配当金や株主優待を積み上げつつ値上がり益も狙う投資方法です。

長期投資のメリット:忙しい人でも始めやすい

年単位で利益を目指す長期投資では、市場や企業の業績を常にチェックし続ける必要は原則としてありません。そのため、仕事が忙しい人などでも始めやすい投資方法といえるでしょう。長期で保有することで、株主優待などを楽しめるのも長期投資の魅力の1つです。

長期投資のデメリット:不測の事態による株価の下落

将来性があると感じた企業に投資をしたとしても、保有期間中に株価が下落する可能性があります。このような株価下落の影響を小さく抑えるには、1つの銘柄だけでなく複数の銘柄で分散投資することが重要です。

長期投資の銘柄選びのポイントは?

長期投資では、長年に渡り業績が安定している企業の銘柄のほか、将来的に成長が見込める銘柄もしくは株価が割安な銘柄を選びます。これにより、定期的な配当による利益に加え、数年後の株価の値上がり益を目指します。銘柄選びが難しいと感じる人は、証券会社などが発表している割安株ランキングなどを参考にするのもよいでしょう。長期投資ではインカムゲインが重要になります。配当金や株主優待の実績がある銘柄を選びましょう。

長期投資ではどのくらいの利回りを目指すか

長期投資では、値上がり益のほかに配当金の積み上げも狙えます。日本取引所グループによると、東証第1部上場銘柄の平均利回りは、2%程度です。これは、株価が1,000円の銘柄に投資したとすると、年間で1株あたり20円の配当金を得られることを意味します。

仮に、1,000円で購入した株式から20円の配当金を5年に渡り受け取り、1,500円で売却したとします。このときの総合利回りは、12%((20×5+500)÷5÷1,000×100)となります。実際の利回りは値動きなどにより変わりますが、長期投資では時間をかけることで、より大きな利益を狙うことが可能になるのです。

短期投資と長期投資はどのような人に向いているか

短期投資と長期投資では投資方法や投資スタイルが異なります。では、短期投資と長期投資は、それぞれどのような投資家に向いているのでしょうか。

短期投資に向いている人:株式投資の経験が豊富で日中に売買が行える人

短期投資が向いているのは、ある程度の投資経験を持っている人です。短期投資は、値上がり益のみを狙うため日々、株価を追い続ける必要があります。また、取引量や値動き、値上がり率の大きさなどを瞬時に読み取るだけの知識も必要です。もちろん、株式市場がオープンしている時間帯(東証の場合は平日9:00~11:30、12:30~15:00)に投資を行えるという、時間を確保することは絶対条件といえます。中長期的な投資などで投資経験を積んだら、少額から短期投資にチャレンジしてみるのもよいでしょう。

長期投資に向いている人:投資経験が少ないもしくは、取引時間を取れない人

投資初心者や投資にかける時間を取れない人は、長期投資が適しています。長期投資では、一時的に株価が下がっても、保有期間中にインカムゲインを積み上げることで、トータルで利益を出すことが可能です。常日頃から売買のタイミングを図る必要はなく、株価のチェックも定期的に行えばよいので、腰を据えて投資経験を積むことができます。じっくり運用できることから投資初心者が始めやすい株式投資といえます。

お得に長期投資ができる制度1:「NISA」

最後に、お得に長期投資ができる制度を2つ紹介します。まずは、少額投資非課税制度であるNISA(ニーサ)です。NISAは、株式投資で得られる値上がり益や配当金に課される20%(2037年までは復興特別所得税がかかるため、20.315%)の税金が非課税になる制度です。コストを抑えて効率のよい資産運用を目指すなら、NISA口座を活用してみましょう。

NISAには「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類がありますが、日本に住む20歳以上の人が株式に投資できるのは一般NISAです。一般NISAの概要は、表1のとおりです。

▽表1.一般NISAの概要

項目 詳細
非課税対象 株や投資信託などの投資から得られる利益
非課税投資枠 新規投資額で毎年120万円
非課税期間 最長5年
投資可能期間 2028年まで(2024年以降は新・NISAへ移行)

なおNISA口座の開設では税務署の審査が行われるため、手続き完了までに1~2週間程度かかります。投資を始めたいと考えている人は、早めに口座開設の手続きを進めることが肝心です。

お得に長期投資ができる制度2:「iDeCo」

お得に長期投資ができる制度の2つ目は、個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)です。iDeCoでは、以下の3つの税制優遇を受けられます。

  • 運用益が非課税
  • 掛金が全額所得控除
  • 受取時に公的年金等控除もしくは、退職所得控除

iDeCoは老後の資産形成のために設けられた制度です。そのため、少しでも運用効率が上がるよう、さまざまな税制優遇が設けられています。その他、加入条件などの概要は、表2のとおりです。

▽表2.iDeCoの概要

項目 詳細
加入できる人
(加入資格)
国民年金第1号被保険者:日本在住の20歳以上60歳未満の人(自営業者、フリーランス、学生など)
国民年金第2号被保険者:60歳未満の厚生年金の被保険者(サラリーマン、公務員)
国民年金第3号被保険者:20歳以上60歳未満の厚生年金に加入している人の被扶養配偶者
拠出限度額 加入資格により月額1万2,000円~6万8,000円
運用方法 定期預金・保険商品・投資信託

iDeCoでは、株式への投資はできません。iDeCoで株式による資産運用をするには、株式を投資対象とする投資信託を選択しましょう。なお、iDeCoは原則として60歳になるまでは拠出金の引き出しは不可です。iDeCoでの投資は、長期で使い道がない資金で行うことが肝心です。

投資期間は投資スタイルにより異なる。長期投資なら税制優遇も活用しよう

株式投資には、その日に売買が完結する短期売買のデイトレードや、数年単位での資産形成を目指す長期投資があります。それぞれ、メリットやデメリット、銘柄選びのポイントなどが異なるため、投資スタイルに合った投資方法を選びましょう。

長期投資の場合には、税制優遇を受けられるNISAやiDeCoがあります。必要に応じて非課税制度を取り入れながら、将来に向けた資産形成をスタートさせてみてはいかがでしょうか。

文・N.ヤマモト
都市銀行にてファイナンシャルプランナーとして主に、富裕層の資産形成・運用相談を担当。投資信託や保険商品・債券・外貨預金の販売に携わる。その後はWEBライターとして、投資や資産形成についての情報を発信。子供の学費や老後資金作りのため、自らも20代から資産運用を続けている