投資をはじめるとき、初心者はなじみのある日本企業の銘柄を選ぶ人が多く、米国をはじめとした外国株は「よくわからない」「なんだか怖い」と敬遠されてしまいがちです。しかし米国株は、超大手企業でも1株から買えることや配当性向が高いことから、大変魅力のある投資対象です。「よくわからない」というだけで敬遠するのはもったいないことではないでしょうか。本記事では米国株の魅力について紹介します。
目次
米国株投資の魅力
米国株投資の最大の魅力である大きなリターンは、高い成長性による企業価値向上と配当、自社株買いなどの株主利益還元、および双方の持続性に支えられています。そして、米国株の魅力は利益だけではありません。
成長性の高い企業が上場している
アップル、グーグルといった大手IT企業の躍進ぶりは日本でも知られていますが、急成長しているのはGAFAなどの新興企業ばかりではありません。プロクター・アンド・ギャンブル、ジョンソン・エンド・ジョンソン、コカ・コーラなど、10年スパンで売上を2~3倍に伸ばしている伝統企業も多く存在します。こうしたエクセレントカンパニーが、米国株の高い利益還元を支えているのです。
配当面での利益還元も魅力
日本企業の場合、決算自体は会計国際化の流れで四半期が定着してきましたが、配当は相変わらず中間と期末の年2回が一般的です。一方で米国株は年4回配当を実施している企業が多数あります。さらに配当政策として、増配方針を掲げている企業が多数存在するのも魅力の1つとなっています。
知名度が低いのは昔の話
「商品・サービスやビジネスモデルに共感できる会社の株を買う」ことは、株式投資において大切な考え方の1つです。では実際に、米国株はわたしたちのライフシーンとはどのくらい関わりのある存在なのでしょうか。
「企業の知名度が低い」とされてきた米国株ですが、これは思い込みに過ぎません。たとえばスマートフォンのiPhoneはアップル(AAPL)、検索エンジンはグーグル(アルファベット:GOOGL)、昼食はバーガーキング(レストラン・ブランズ・インターナショナル:QSR)、自宅でドミノピザ(DPZ)をほおばりながらネットフリックス(NFLX)で動画を楽しむなど、日本でなじみのある企業も上場しています。
知名度が低いというのは昔の話で、現在の日本では数多くの米国企業と関わりながら生活しています。
まだまだある米国株の魅力
日本企業には単元株制度があり、一般的に100株単位で株を購入するため、購入時にまとまった資金が必要です。一方で米国株は1株単位での購入が可能となっており、気軽に株を買うことができます。この手軽さも米国株の魅力の1つといえるでしょう。
ネット証券 会社名 |
特徴 | 取扱 銘柄数 |
手数料 |
---|---|---|---|
最大20万円 キャッシュバック |
為替 手数料 0円 |
4,005 | 0.45%(※) |
最大21万5千円 キャッシュバック |
NISAで 米国株 取扱 |
3,820 | 0.45%(※) |
楽天ポイント 200ポイントプレゼント |
取引ツールに強み | 3,954 | 0.45%(※) |
IPOに注力 | 169 | 0.20%(※) | |
※約定代金に対する割合。各社最低手数料は0ドル
上限手数料は20ドル (税抜) ・2021年1月20日現在
米国株のタイプを知ろう
米国株のマーケットは、1792年に設立された200年以上の伝統を誇るニューヨーク市場と、1971年設立のナスダック市場に大別されます。世界一の時価総額を誇り上場審査が最も厳しいとされるニューヨーク市場には超優良企業が多く名を連ね、一方のナスダック市場には、米国発展のエンジンたるべきベンチャー企業が上場しています。
なおアメリカの銘柄コードには、ティッカーシンボルと呼ばれる1から4文字ほどのアルファベットが付されます。アルファベット1文字には、たとえばシティグループ(C)のように、歴史が古い企業が少なくありません。ちなみに、ダウ採用銘柄30社で残っている1文字企業はビザ(V)だけで、競争の激しい企業社会の無常を如実に映し出しています。
上場銘柄数はニューヨーク市場だけで2,300社、ナスダック市場で2,900社におよびますが、これら5,000社を超える銘柄は3種類に区分されます。それぞれのタイプを理解したうえで、米国株投資のアプローチを考察しましょう。
タイプ1:高配当株
収益性の維持向上を通じて利益を確保し、企業利益の多くを配当等に株主利益還元に回すのが高配当企業です。高配当企業かどうかを図る指標は主に3つあります。
1つめが、配当性向(企業利益のうち配当に回す割合のこと)です。配当性向は日米企業とも3~4割が平均とされていますが、同じ米国でも企業規模が大きく歴史もあり、売上が安定している成熟企業のなかには配当性向67%前後というところもあります。
業種としては、エネルギー企業・製薬企業・飲料メーカー・投資銀行などが代表格です。これら企業は業績が相対的に安定しており、配当性向が高くてもリスクなく配当維持が可能なのです。
そして2つめが、配当利回りです。米国株の中には3%以上の配当利回りを確保している銘柄も多数存在します。いくら配当利回りが高くても、減配してしまっては意味がありません。だからこそ3つめの目安として、増配継続期間はチェックしたいところです。
配当以外にも、市場で株式を買い入れて市中流通量を減らしROE(自己資本利益率)を吊り上げ、結果的に株主に還元する「自社株買い」という手法も多用されます。特に米国の場合、株主からの圧力が強いこともあり、日本に比べて自社株買いが実施されるケースが多く、利益に占める自社株買いの割合は7割近く(日本は1割強)に達しています。
ただし、過度な配当や自社株買いは資本を毀損して経営不安を招くケースもあるため、債務超過に陥っていないかなどのリスクチェックは欠かさずに行いましょう。
タイプ2:優良成長株
2種類目の企業タイプは成長企業で、稼いだ利益を配当ではなくM&Aやイノベーション等の成長投資に回します。成長に伴い企業価値の向上を果たし、結果として株価上昇と株主還元を実現します。成長企業にはアップル、ウォルトディズニー、ナイキなどが名を連ねます。
タイプ3:新興株
3種類目の新興企業は、成長企業のなかでもまだまだ歴史の浅い新鋭の急成長企業群です。テスラ、フェイスブック、ネットフリックスなどが知られています。
米国株に適した投資手法
米国株に適した投資手法として「押し目買い」や「ドルコスト平均法」がよく紹介されます。ここではその有効性を検証すると同時に、最近メディアでも取り上げられることの多い、マイケル・オヒギンス考案の投資戦略「ダウの犬」理論についても紹介します。
押し目買いとドルコスト平均法
旺盛な個人消費とIT・ヘルスケア等の成長分野に後押しされ、米国GDP(国内総生産)は年平均3%以上の安定した成長を続けています。だからこそ、2001年のITバブル崩壊や2008年のリーマンショックで一時的に下落することがあっても、ニューヨークダウなどの米国株指数は中長期的に右肩上がりの上昇を維持できるのです。
こうした株価トレンドを踏まえると、下がったところでの押し目買いが有効に働きます。一方で、投資したいときに限って相場に勢いがつき、株価が一本調子で上がることも少なくありません。「押し目待ちの押し目なし」といわれるぐらい、押し目のタイミングを計るのは難しいのです。
そうした場合に活用したいのがドルコスト平均法です。たとえば毎月定額をコツコツ積立て続ければ、分散効果で投資コストは平準化します。もちろんドルコスト平均法が万能というわけではありませんが、天井圏であせって手を出してしまうような高値づかみのリスクを軽減し、買付単価を抑えることができます。
さらにドルコスト平均法を基本に、相場のクセを投資に活かす「アノマリー戦略」や、配当や株価変動率でポートフォリオを組み替える「スマートベータ戦略」、毎月の目標資産残高に基づいて買い入れ額を決める「バリュー投資法」を組み合わせると、成功勝率のさらなるブラッシュアップが期待できます。
次に紹介するダウの犬理論も、スマートベータ戦略の1つです。
米国株投資の有名な戦略「ダウの犬」理論の紹介
オヒギンスによる「ダウの犬」理論とは、ダウ工業株30種のなかから配当利回りが高いトップ10銘柄を選んで均等に買い入れ、年に1回入れ替えるというものです。たったこれだけで、平均年利回り9%、成功率75%をたたき出したことから、メディアで一気に話題となりました。
もちろん、年度によってはダウやS&P500指数に劣後することもあります。しかし、だからといって投資法を安易に乗り換えるのはおすすめできません。一度決めた投資法は、継続することが大切です。もしくはダウの犬理論の応用編として、投資対象をニューヨーク・ナスダック上場銘柄に拡げる、増配企業に限るといった投資法も検討しましょう。
配当利回り7%超も!米国株配当利回りランキングトップ10
ではここで米国株の配当利回りランキングトップ10について銘柄の特徴と合わせて紹介します。なおここでは、対象を20年以上増配し続けている企業のみに絞っています。
▽米国株の配当利回りランキングトップ10
順位 | ティッカー シンボル | 企業名 | 配当利回り (%) | 企業の特徴 |
1位 | MDP | メレディス |
18.22 |
放送・出版業界のコングロマリット |
2位 | XOM | エクソン・モービル |
9.30 |
時価総額10兆円以上 世界トップの石油・ガスを主軸とするエネルギー企業、石油化学品(芳香族化学品・オレフィン・ポリエチレン等)や発電と事業を多角化 |
3位 | MO | アルトリア・グループ |
8.56 |
タバコやワインの製造・ホールディングカンパニー、メインブランド:マルボロ・バージニアスリム |
4位 | T | AT&T |
7.36 |
時価総額10兆円以上 世界トップの携帯電話市場シェア 通信・ネット回線・DSPなどを展開 |
5位 | UVV | ユニバーサル |
6.81 |
タバコ製造会社 |
6位 | CVX | シェブロン |
6.12 |
時価総額10兆円以上 大手石油・ガス企業として石油化学・発電事業・工業用樹脂を展開 |
7位 | PBCT | ピープルズ・ユナイテッド・ファイナンシャル |
5.60 |
不動産金融(住宅担保貸付・住宅モーゲージ)、商業用不動産貸付、特派員バンキング |
8位 | MCY | マーキュリー・ゼネラル |
5.60 |
損害保険(個人・中小企業顧客向け)、自動車機械的故障保険等 |
9位 | IBM | IBM |
5.58 |
時価総額10兆円以上 コンピューター関連製品の製造・販売、情報技術コンサルティング事業 |
10位 | WEYS | ウェイコ・グループ |
5.57 |
紳士靴(Florsheim・Nunn Bush・Stacy Adams)、子供用シューズ(Umi)、サンダル等(BOGS・Rafters)の卸売・小売り |
ランキング10社中4社は、時価総額10兆円以上の大手グローバル企業が占めています。業種としてはエネルギー企業・金融保険・タバコ製造企業などの成熟産業が目立ちます。これらの企業は、株価が割安に放置されていることもあって配当利回りが高いのです。
米国株に投資する3つのステップ
米国株の投資というとつい身構えてしまいますが、実際には口座開設、米国株口座への資金振替、銘柄選定の3つのステップで完了します。
ステップ1:証券口座開設
最近は本人確認も含めて、すべてスマホまたはパソコンで手続きできます。
ステップ2:米国株口座への資金振替
外国株サイトに資金を移動させたうえで、円からドルに為替振替します。
ステップ3:銘柄を選定
売買手数料や取扱銘柄に関しては、証券会社によって大きく異なります。自分の投資スタイルや買いたい銘柄を勘案したうえで、自身に合う最適な証券会社を選びましょう。
まとめ:成長性の高い企業に投資できる米国株に投資しよう
高配当、成長、新興など米国株にもさまざまなタイプがありますが、いずれにせよ中長期的には上昇トレンドが期待できます。押し目買いやドルコスト平均法などを駆使して、コツコツと積み上げていくのが賢い投資法といえます。米国株についてしっかり勉強し、理解不足からくる苦手意識を取り払い、まずは少額からトライしてみてはいかがでしょうか。
文・野口 孝雄
上場企業(大手日用品メーカー)にて、事業戦略・財務に携わる。とくに財務部門所属時には、株主総会運営・決算開示を経験、経営分析の力をつける。個人としての投資経験に合わせ、「投資される」企業側からの視点を加味した、独自の切り口によるコラムを真骨頂としている