「資産運用を始めてみたい」と思っても、何から手をつけたらいいのかわからず立ち止まってしまう方も少なくありません。いきなり投資先を選ぶのではなく、まず投資の目的や自身の家計状況の確認が第一歩です。始める前の準備は何をどのように進めればいいのか、失敗しないための考え方とあわせて解説します。

目次

  1. 資産運用を始めたい。まずは何をすべき?
  2. 資産運用前の準備1:投資の目的を明確にする
  3. 資産運用前の準備2:家計を整理して投資資金を作る
  4. 資産運用前の準備3:投資に関する知識を身につける
  5. iDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)についても知っておこう
  6. 準備が整ったら、いざ実践!投資の始め方をステップ別に解説
  7. まとめ:まずは目的を明確に。失敗しないためには運用開始前の準備が大切

資産運用を始めたい。まずは何をすべき?

資産運用を始める前にしておきたい「準備」とは?投資で後悔しないために必要なこと
(画像=Chinnapong/stock.adobe.com)

資産運用を始めても、いきなり大金を投入して大失敗することは、誰しも避けたいものです。後悔しないために、まずは準備が必要です。準備といっても、難しいことではありません。基本的には次のような順番で進めます。

▽資産運用を始めるときに準備したいこと

  • 準備1:投資の目的を明確にする
  • 準備2:家計を整理する
  • 準備3:投資に関する知識をつける

投資の方法や投資する商品を分析する前に、まずは自分のことを分析しておきましょう。この段階を経ることで、目指すべきリターンや取るべきリスクがわかるようになり、自分の許容度を超えるような損失を出してしまう事態を防ぐことができます。

多くの方にとって、はじめのうちは特に大きくお金を増やすことを考えて行動するよりも、再起できないような失敗をしないということの方が重要です。一時的に多少お金が減ることがあっても、継続して長期的に運用に取り組んでいればリカバリーは可能ですが、取り返すことが不可能なような大失敗をしてしまってはそれもできなくなってしまいます。

資産運用を焦る必要はありません。まずは最低限の準備を整えて臨むようにしましょう。それが損失を防ぎ、安定的に利益を得ることにもつながります。具体的な準備方法について順番に詳しく見ていきましょう。

資産運用前の準備1:投資の目的を明確にする

なぜ「投資の目的」を明確にする必要があるのか、利益をあげていくのとどのような関係あるのか、と不思議に思うかもしれません。でも、実は重要な意味を持っています。

たとえば同じ30歳の会社員でも、「45歳までに資産を作ってセミリタイアしたい人」と「社会や経済のことを学ぶために試しに投資してみたい人」、「産まれたばかりの子どもの教育資金を用意していきたい人」とでは、目指すリターンがまったく変わってきます。目指す先が異なれば投資先の選び方も背負うリスクも大きく違ってきます。

目的が明確になれば、いつまでにいくら増やしたいのか目指すべき地点がわかります。目指すべき地点がわかれば、それに到達するために必要なリターンが計算できます。必要なリターンがわかれば、それを達成するにはどんな方法でどんな投資先にいくらお金を投入すべきかといった投資方針を決めることができます。

さらに、投資方針が決まれば、それに付随するリスクもわかり、事前に対策を打つこともできます。事前に対策を打てれば、リスクを防ぎつつ利益をあげやすくなります。このように、投資の目的は運用成績にも影響するのです。

実際に投資する前に、目的を明確にしてブレない軸を作っておくことで、投資先選びに迷ったり、市場の変化や値動きに一喜一憂したりすることも少なくなるでしょう。

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いつまでにいくら?目標を立てる

自分が投資する目的を踏まえて、いつまでにいくら増やしたいのか考えてみましょう。

たとえば先述の「産まれたばかりの子どもの教育資金を用意していきたい」人の場合、もう少し具体的に「18年後に500万円用意しよう」と考えたとします。その場合、月2万円ずつ投資できるなら年間約1.6%、月1万5,000円投資できるなら年間約4.5%のリターンが得られる金融商品を探せばいいということが逆算できます。

この計算は、証券会社などが提供しているシミュレーションサイトなどを使えば簡単にできます。自分が投資したい理由から、具体的な期限や金額を設定して、目標を立ててみましょう。

資産運用前の準備2:家計を整理して投資資金を作る

「いつまでにいくら増やしたいか」を考えたら、次は「その達成のためにいくら元手資金を用意できるのか」を考えます。そのために必要なのが、自分の家計の状況をきちんと把握することです。

家計の現状を把握する

自分の現在の貯金額や、収入と支出のバランスを振り返ってみましょう。投資は余裕資金で行うものです。貯金がない、毎月の収入と支出がほぼ同額といった状態なら投資よりまず家計改善に取り組むのが先です。

それがないと生活が成り立たないような金額を投資に回してしまうと、失敗したときのダメージが大きすぎ、冷静な判断ができなくなってしまいます。

貯金を分類して、投資に回せる金額の目途をつける

元手資金をいくら捻出できるか、具体的な金額を計算してみましょう。貯金があるからといって全額を投資に回してしまうのはNGです。普段の生活で使うお金はもちろんですが、失業などの収入減少や病気などの支出増加に備えるため、緊急用のお金も残しておくようにしましょう。

緊急用のお金はいくら残しておけばいいのかは、人によって多少違いますが、最低でも収入3ヵ月分、できれば6ヵ月程度は確保しておきましょう。自営業など収入にバラつきがあったりもしものときに受けられる社会保障が少なかったりする場合は、さらに多めにこの目安の2倍くらいは用意しておきたいところです。

生活用も緊急用も確保できて、今後数年は使わないであろうお金が残っているようなら、それを投資に回しましょう。

この考え方は投資の基本ですが、ただこれだと「投資を始められるのは何年先になるのか」「まとまった資金が必要なのか」と考えてあきらめたくなる方もいるかもしれません。実は近年は事情が少し変わってきていて、投資はわずか数百円でもスタートできるようになっていますし、なかには買い物で貯めたポイントだけでスタートできる場合もあります。

お金が貯まるのをただ待っているだけではなく、なくなっても気にならないくらいの金額で投資して練習しておくというのもいい方法です。金額は小さくても、証券会社に口座を開設したり銘柄を分析したり値動きをチェックしたりするのは同じです。勝手を知って慣れておけば、いつかお金に余裕ができたときにすぐ本格的に取り組めます。

必要なら支出を見直す

投資に回せるお金が少ない、このままでは目標とするリターンを目指すのが難しい、といった場合は元手資金を捻出するため今の家計で節約できる箇所がないか考えてみましょう。特に住宅費、保険料、通信費など毎月一定の金額を継続して支払う「固定費」の見直しは、家計改善に大きな効果が期待できます。

もし月1万円の無駄遣いがあったとして、それが20年続けば240万円になります。もしそのお金を毎月運用に回して年3%のリターンになっていれば約330万円です。このお金があれば、家族の海外旅行費用や子どもの進学資金を難なくまかなえるかもしれません。

資産運用前の準備3:投資に関する知識を身につける

目指すリターンも決められて、捻出できる資金にも目途がついたら、次はいよいよ実際の投資商品を選ぶための準備に移ります。投資は何も知らないままいい加減に取り組むのでは危険です。ある程度前提となる知識を身につけておきましょう。

資産運用にはどんな種類があるのか知っておく

資産運用というと株式投資をイメージする方が多いかもしれません。でも、実際はそれだけではなく投資信託、不動産投資、個人向け国債、FXなどかなり多種多様です。定期預金や貯蓄型保険なども広い意味では資産運用に含まれます。

種類によって、必要な元手資金やリスク、リターン、コストなどがまったく違います。ここまでの準備で確認した自分の現状と照らして、合いそうなものを選びましょう。

「リスク」への理解は欠かせない

投資にリスクはつきものですので、うまく付き合う必要があります。リスクを抑えることを重視すると得られる利益は少なくなり(ローリスク・ローリターン)、得られる利益を大きくしようとするとリスクが高くなる(ハイリスク・ハイリターン)というのが基本ルールです。

ローリスク・ハイリターンなうまい話はありえません。また、ハイリスク・ローリターンに手を出す意味はありません。どの程度のリスクなら許容できるのか、どれくらいお金を増やしたいのかは、人によって違います。年齢や投資経験などにも左右されますので、今の自分にとってちょうどいいバランスを考えることが大切です。

リスクを抑えるなら長期・分散・積立投資が王道

投資初心者なら必ず知っておきたい王道の投資方法が「長期・分散・積立投資」です。長い期間に渡って、投資先をさまざまな国や資産に分散させて、毎月コツコツと同じ金額を投入していくことを指します。国が投資を促すために用意している税制優遇制度でも、この投資方法を前提にしているものがあります。

一度に大金を1つの投資対象に全額投入してしまうのは、この王道を完全に無視したリスキーな行為です。初心者は避けるべきだと肝に銘じておきましょう。

iDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)についても知っておこう

先述の「国が投資を促すために用意している税制優遇制度」が、iDeCo、NISA、つみたてNISAです。これらを利用すれば、投資で得た利益(通常は約20%)が非課税になるなどのメリットがあります。うまく活用すれば資産運用の強い味方になってくれますので、株式投資や投資信託にチャレンジしたいと思った方は特にこれらの制度についても知っておくようにしましょう。

情報収集の方法

投資に関する情報を集める方法は数多く存在します。新聞、本、マネー雑誌、投資情報サイト、証券会社のサイト、各企業のIR情報サイト、最近は個人のブログやSNS、YouTubeなどを参考にされる方もいます。投資のプロに直接聞くことも可能です。

最初から完璧でなくてもOK!

投資の世界は奥が深く、知識を完璧にしてから始めようと思ったら、いつまでたってもはじめることはできません。この段階では、利益を出すためというよりは、再起不能になるような大失敗をしないための初歩的なことだけ押さえておけばOKです。実践を通して学べることも多いので、少額で試しながら進めると知識やコツの習得も早くなります。

準備が整ったら、いざ実践!投資の始め方をステップ別に解説

ここまで来たらいよいよ実践です。たいていの投資は次の4ステップで進めていくことができます。

▽投資の始めるときのステップ

  • ステップ1.投資商品を選ぶ
  • ステップ2.取引する金融機関を選ぶ
  • ステップ3.購入手続きをする
  • ステップ4.値動きを見守って適宜調整する

投資のステップ1:投資商品を選ぶ

ここまで行ってきた準備を踏まえて、最初の投資先を選んでみましょう。初めての投資なら、「投資信託」や「単元未満株への投資(ミニ株)」など元手資金が少なくても手軽に始められるものがおすすめです。

投資のステップ2:金融機関を選ぶ

株や投資信託なら証券会社、定期預金や不動産投資のためのローン組みなら銀行、貯蓄型保険なら保険会社など、投資先に応じて取引する金融機関を選ぶ必要があります。

自分が投資したい商品を扱っているかはもちろん、便利さ、手数料、サポート体制などを比較して選びましょう。最近は実店舗を持たないインターネット専業型の金融機関も人気です。金融機関を選んだら、店舗の窓口やオンラインの申込フォームで口座開設や取引開始の手続きなどを済ませます。

投資のステップ3:購入手続きをする

いよいよ投資スタートです。お目当ての投資商品の購入手続きを済ませましょう。購入するタイミングも重要です。ただし、毎月自動的にコツコツと積み立てるような投資ならあまり意識する必要はありません。

投資のステップ4:値動きを見守って適宜調整する

自分が投資したお金がどれくらい増えていくのか気になるところだと思います。株価や投資信託の運用益など、購入した金融商品の推移を定期的にチェックすることは大切ですが、一喜一憂はよくありません。なかには、気になりすぎて1日に何回も確認して仕事に支障をきたす人もいます。

また、「上がりそう!」という周りの声に流されてあわてて買い、下がってきたことにショックを受けてあわてて手放すという行動を取る方もいますが、高いときに買って安いときに売ったのでは利益が出るはずがありません。

1分1秒を争うような投資ができるのは熟練の専業トレーダーか金融機関の投資業務の担当者くらいです。それ以外の人が投資するなら、10年、20年、30年と長期的な視点で取り組むようにしましょう。精神的にも金銭的にも余裕を持って冷静に判断したいところです。そのうえで、適宜様子を見ながら投資金額や投資対象の調整を行っていきます。

まとめ:まずは目的を明確に。失敗しないためには運用開始前の準備が大切

これから資産運用をやってみたいと思っている方は、自分はなぜ資産運用をしたいのか、いつまでにどの程度お金を増やしたいのか、そのための元手資金はいくら用意できるのかなど、まずは自分自身の状況を整理してよく考える時間を取ることから始めましょう。

文・馬場 愛梨
所属・ばばえりFP事務所 代表
関西学院大学商学部卒業後、銀行にてクレジットカードやカードローン、投資信託などの金融商品を扱う窓口営業に従事。 その後、不動産会社や保険代理店での勤務を経て、独立。 お金にまつわる解説記事を数多く執筆。保有資格:AFP、証券外務員一種、秘書検定1級