株式投資は、値動きの幅が大きい投資の1つといわれます。株式投資を成功させるには、分散投資によるリスクの軽減を図ることが重要です。分散投資の必要性や取り入れ方を確認し、株式による資産形成を成功させましょう。

目次

  1. 値動きの幅が大きいとされる株式投資。狙える利益とリスクを確認しよう
  2. 投資のリスクを抑える4つの分散投資とは?
  3. 分散投資が難しいと感じたら投資信託も検討してみよう
  4. 分散投資を成功させる証券会社選びのポイント3つ
  5. 分散投資を取り入れて、リスクを抑えた株式投資を目指そう

値動きの幅が大きいとされる株式投資。狙える利益とリスクを確認しよう

株式投資の成功に「分散投資」あり。その必要性と方法を詳しく解説
(画像=mrmohock/stock.adobe.com)

株式投資は、債券や投資信託といったその他の金融商品と比べ、値動きの幅が大きい投資とされます。ここではまず、株式投資で得られる利益と主なリスクについて詳しくみていきましょう。

株式投資で得られる利益は「値上がり益」「配当金」「株主優待」

株式投資で得られる利益は、キャピタルゲインである値上がり益と、インカムゲインの配当金・株主優待です。株価の動きや株の保有期間により、どの利益を得られるかが変わります。株式投資でしっかり利益を積み上げていくには、利益の特徴を押さえておくことが大切です。

・株式で得られる利益1:値上がり益

値上がり益は、購入時の株価よりも高い株価で売却したときに得られる売却益をいいます。たとえば、1株500円で100株購入した銘柄を、1株550円の値がついたタイミングですべて売却したとします。この場合の売却益(キャピタルゲイン)は、5,000円(550円×100株-500円×100株)です。

大きな値上がり益を目指すなら、最安値で購入し最高値で売却するのがベストです。しかし、企業の業績や経済の状況などで毎日株価が変動する株式投資において、最安値で購入し、最高値で売りきることなどは不可能でしょう。それどころか、有利な価格を狙いすぎると、売買のタイミングを逃してしまう可能性もあります。

株式投資を成功させるには、最大の値上がり益を目指すのではなく、現実的な利益の目標を設定することが重要です。たとえば、5%の値上がりを目標として定めた場合、5%の値上がりを迎えたときには速やかに売却します。このように、自分で設定した目標に合わせて売買し、少しずつ値上がり益を積み上げることが株式投資を成功させるポイントの1つです。

・株式で得られる利益2:配当金

配当金とは、企業活動で得た利益から、保有株数に応じて投資家に還元されるお金のことです。配当金が出るタイミングや回数は銘柄により決まっています。また、配当金額は業績により決定されます。株を購入する前には、株価と併せて配当金の実績も新聞や企業のホームページ等で確認するとよいでしょう。

なお、東証第1部上場銘柄の平均配当利回りは2%程度です。そのため、3%を超える配当を出している銘柄は、高配当といえます。

・株式で得られる利益3:株主優待

株主優待とは、一定以上の株式を保有している株主に対して、配当金以外の商品やサービスなどを進呈する日本企業独特の制度です。自社製品はもちろん、企業が展開するサービスの割引券や工場見学の招待券、お米券といった金券など、株主優待の内容はさまざまです。そのため、株式投資の楽しみの1つとして株主優待を重視する投資家もいます。

株主優待は、保有株数に応じて贈られます。1株からもらえる銘柄は少なく、多くの場合100株等、ある程度まとまった株数を保有している投資家が対象です。また、保有する年数が長いほど、優待の内容がよくなる場合もあります。

株主優待を楽しみたいと考えている人は、必要株数などの条件をしっかりと確認し、投資を行いましょう。

株式投資の主なリスクは「価格変動リスク」と「信用リスク」

株式投資で注意するべき主なリスクは、「価格変動リスク」と「信用リスク」です。

・株式投資の主なリスク1:価格変動リスク

価格変動リスクとは、投資した銘柄の株価が変動する可能性をいいます。ここで知っておきたいのは、リスクが大きいというのは、損失が出る可能性が高いという意味ではないということです。リスクが大きいとは、値動きの幅が大きいことを意味します。つまり、損失がでる可能性がある一方、大きな利益を得られることもある投資方法といえるのです。

・株式投資の主なリスク2:信用リスク

信用リスクとは、投資した企業が倒産する可能性です。株主には、会社が解散するときなどに、残った会社の資産を株式数に応じて受け取る権利(残余財産分配請求権)が与えられています。そのため企業が倒産したとしても、資産状況によっては多少の資金は回収できるかもしれません。

しかし、倒産時の状況によっては、投資家に分配するだけの資産が残っていないケースもあるでしょう。その場合は、投資した資金がすべてなくなることになります。信用リスクを抑えるには、企業の経営状態や借り入れの割合などをしっかりと確認し、倒産の可能性が低い銘柄に投資することが重要です。

・株式投資、そのほかのリスク:外国株式では「為替リスク」と「カントリーリスク」も

証券会社によっては、外国株式への投資も可能です。外国株式に投資する際には、価格変動リスクや信用リスクに加え、「為替リスク」と「カントリーリスク」も発生します。

為替リスクとは、為替により資産価値が変動する可能性をいいます。外国株式に投資する際には、手持ちの資金を現地の通貨に変換しなければなりません。仮に、50万円を米ドルに換えたとしましょう。1ドル100円の為替であれば、受け取れる米ドルは5,000ドルになります。しかし、1ドル110円の為替だと、4,545ドルにしかなりません。為替の影響は、外貨を日本円に戻すときにも発生します。このように、為替の状況により資産額に変動が起きるリスクがあります。

カントリーリスクとは、投資した国に政治的・経済的混乱が生じた場合に、資産の価値が変動する可能性です。一般的に、国内情勢が安定しているとされる先進国はカントリーリスクが少なく、新興国などはリスクが高いといわれます。外国の株式に投資する際には、投資銘柄の情報だけでなく、その国や地域の状況も知っておくことが大切です。

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投資のリスクを抑える4つの分散投資とは?

株式投資のリスクを抑えるには、「分散投資」を組み込むことが重要となります。分散投資とは、投資対象を複数に分けることで、リスクを抑える方法です。分散投資には、いくつかのやり方があります。ここでは、4種類の分散投資をみていきましょう。

分散投資1:資産分散

分散投資の1つめは、投資する銘柄や対象を分散する「資産分散」です。仮に、120万円の資金があったとしましょう。分散投資の有無による運用結果の違いを、表1でシミュレーションします。

▽表1.資産分散の有無による運用結果シミュレーション

投資銘柄と株価の動き 運用結果
分散投資なし(すべてをA社に投資) 40万円ずつ3つの銘柄で分散投資
A社:10%下落 108万円 36万円
B社:3%上昇 41万2,000円
C社:10%上昇 44万円
運用後の資産状況 108万円(12万円の損失) 121万2,000円(1万2,000円の利益)

株式は、銘柄により値動きが変わります。それを生かし、リスクを抑えて利益を狙っていく方法が分散投資なのです。

資産分散は、銘柄だけでなく投資対象にまで広げることもできます。株式投資をする際に、併せて債券や不動産なども保有することで、よりリスクの分散を図るのです。投資対象を分けることでリスクの分散ができるのは、資産によって値動きの傾向が異なるからです。表2に投資対象別の値動きの傾向を紹介します。

▽表2.投資対象別の値動きの傾向

債券 株式 不動産
好景気 値段が下がる 値段が上がる 値段が上がる(ただし、株式よりも上がるタイミングが遅い)
不景気 値段が上がる 値段が下がる 値段が下がる(ただし、株式よりも下がるタイミングが遅い)

このように投資対象によって、価格が上昇する経済的な局面が異なります。その性質を利用し、債券や株式、不動産を併せ持つことで、どのような経済状態にも強い資産形成を目指せるでしょう。

分散投資2:地域分散

分散投資の2つめは、複数の国や地域に投資を行う「地域分散」です。情報が手に入りやすく投資をしやすいのは国内株式ですが、すべての資産を国内に投資すると、日本経済が落ち込んでいる局面では資産が大きく目減りする可能性があります。そのようなリスクを抑えるために、投資の一部に外国株を取り入れることは効果的です。

外国株には、それぞれ特徴があります。たとえば、株主還元の意識が日本よりも高い米国株に投資をすれば、高配当が期待できます。また、新興国はカントリーリスクが高めですが、大きく値上がりする可能性もあります。外国株式の注意点は、その国や経済の情報が入ってきにくい点です。地域分散をする際には、その国の情勢についても定期的にチェックしていくことが重要となります。

分散投資3:通貨分散

分散投資の3つめは、通貨分散です。通貨分散とは、資産を複数の通貨で保有することをいいます。日本円以外の通貨で資産を保有するメリットは、高金利で運用できる点です。超低金利状態が続く日本では、定期預金金利が0.002%に設定されるなど、利息でお金を増やすのが難しい状況となっています。一方、通貨によっては金利が高いものもあります。一例を表3でみてみましょう。

▽表3.外貨建てMMFの利回り一例(楽天証券10月19日現在)

通貨 利回り(%)
米ドル ゴールドマンサックス 0.007
ニッコウ 0.109
オーストラリアドル 0.041
ニュージーランドドル 0.109
南アフリカランド 2.841
トルコリラ 9.314

なお、通貨分散をする際には、前述のとおり為替リスクが発生します。高い利回りで運用したとしても、為替の状況によっては資産が減少する可能性があります。通貨分散をする際には、為替相場もよく確認しタイミングをみて投資をしましょう。

分散投資4:時間分散

分散投資の4つめは、売買のタイミングをずらす「時間分散」です。投資では、価格が安いときに購入し上がったタイミングで売却できれば、値上がり益を得られます。しかし、実際の投資では、価格が下がるタイミングを読んで購入することは簡単ではありません。そのため、時間分散(ドルコスト平均法)により購入時期を複数回に分散し、購入平均価格を下げていくのです。

時間分散をするには、積立投資が便利です。積立を設定しておけば、毎月購入手続きをすることなく、自動的に一定額の購入が行われていきます。積立を活用すれば投資をする時間がない人でも、リスク分散を考慮した資産形成を目指せるでしょう。

分散投資が難しいと感じたら投資信託も検討してみよう

分散投資は投資の基本ですが、リスク分散のために国内外のさまざまな業界の企業の株式を多数購入するとなると把握するのも一苦労です。また、すべての株を購入するには資金が潤沢でなくてはいけません。そういった場合は、投資信託を購入することでリスク分散をはかるのも1つの方法です。

プロが運用する投資信託はリスクの分散を前提に設計された金融商品

投資信託は、多くの投資家から資金を集めファンドマネージャーが運用を行い、利益を投資家に還元する金融商品です。ファンドマネージャーは、投資家からの資金を多くの銘柄や資産、国などに分散投資します。そのため、1つのファンドに投資するだけでも、分散投資の効果を得られるのです。

どのような資産や国、通貨に投資するかは、ファンドにより異なります。投資家が目指す分散投資に合った投資方針のファンドを見つけ、積立による投資を行えば、手間をかけずに分散投資を取り入れた資産形成が可能です。また、投資信託は100円から1万円程度で購入できるため、少ない資金でスタートできる点も魅力の1つといえるでしょう。

分散投資を成功させる証券会社選びのポイント3つ

分散投資を成功させるには、取引する証券会社選びも大切です。ここでは、証券会社選びのポイントを3つ紹介します。

証券会社選びのポイント1:色々な種類の商品を取り扱っているか

証券会社選びのポイントの1つめは、取り扱う商品の種類の多さです。分散投資に活用できる資産には、株式や投資信託・債券のほかにも、REIT(リート:不動産投資信託)やETF(イーティーエフ:上場投資信託)、外貨建てMMFなど多くの種類があります。証券会社を選ぶ際には、投資したい商品の取り扱いがあるかを事前に確認しましょう。

証券会社選びのポイント2:外国株式の取り扱いがあるか

証券会社選びのポイントの2つめは、外国株式の取り扱いの有無です。証券会社によっては、外国株式の取引に対応していない場合もあります。また、取引できる証券会社でも、売買できる国の数に差があります。外国株投資にチャレンジしたいと考えている人は、外国株の取り扱いの有無や、取引時間・手数料額といったサービス内容を確認することが大切です。

証券会社選びのポイント3:投資信託の取り扱い本数は多いか

証券会社選びのポイントの3つめは、投資信託の取扱本数の多さです。投資信託のなかから自分の投資方針に合ったファンドを選ぶには、取り扱いファンド数が多い証券会社を選ぶことが重要になります。

なお、投資信託の取扱本数は、対面型の証券会社よりもネット証券の方が多い傾向があります。また、ネット証券では、購入手数料が無料(ノーロード)の投資信託も多く取り扱っています。投資信託を活用した分散投資をするなら、ネット証券を検討してみてはいかがでしょうか。

分散投資を取り入れて、リスクを抑えた株式投資を目指そう

株式投資を成功させるには、分散投資によるリスクの軽減が重要です。投資の時間が取れる人や投資経験が豊富な人はさまざまな銘柄や資産に分散投資をし、バランスの取れたポートフォリオ作りにチャレンジしてもよいでしょう。

投資にかける時間がない人や投資初心者は、投資信託を活用することで、比較的簡単に分散投資ができます。投資信託の取扱本数は、ネット証券が充実しています。ノーロード投資信託のつみたて投資により、リスクを抑えた資産形成を始めてみてはいかがでしょうか。

文・N.ヤマモト
都市銀行にてファイナンシャルプランナーとして主に、富裕層の資産形成・運用相談を担当。投資信託や保険商品・債券・外貨預金の販売に携わる。その後はWEBライターとして、投資や資産形成についての情報を発信。子供の学費や老後資金作りのため、自らも20代から資産運用を続けている