まとまった資金が用意できないからと、投資をあきらめている人はいませんか?投資信託やミニ株であれば、少額からでも投資を始めることができます。また、少額での長期投資を対象とした税制優遇を活用すれば、将来に向けたお得な資産形成も目指せます。

目次

  1. 少額投資の魅力は、少ない資金で実際に投資にチャレンジできること
  2. 少額投資できる商品1:投資信託
  3. 少額投資できる商品2:ミニ株
  4. 少額投資に対応した制度1:NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)
  5. 少額投資に対応した制度2:iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)
  6. 少額投資を長期で行い、運用資産と投資経験を積み上げよう

少額投資の魅力は、少ない資金で実際に投資にチャレンジできること

少額投資を検討しているなら知っておきたい2つの商品と制度とは?
(画像=Phongphan Supphakank/stock.adobe.com)

投資による資産運用は、まとまった資金がなければできないわけではありません。金融商品のなかには、少額から始められるものも多くあります。もちろん、投資額が少なければ短期間で大きな利益を上げることは難しいでしょう。しかし、少額投資を長期にわたって行うことで、最終的に大きな資産にすることは可能です。投資できる資金が少ない人や投資は難しいと感じている人は、少額からできる資産運用にチャレンジしてみましょう。

少額投資を活用すれば分散投資によるリスク軽減も図れる

複数の資産や商品に投資をすることで、値下がりによる資産減少を抑える「分散投資」は、投資におけるセオリーです。数十万円、数百万円などある程度まとまった資金がある投資家でも、分散投資はリスク軽減に欠かせない手法です。投資資金が少額だとしても、よりリスクを抑えた資産運用をしたいという方にとって分散投資は必ず取り入れるべきことといえます。

仮に、10万円の投資資金がある場合、少額投資を活用しなければ購入できる株式は1、2銘柄程度でしょう。なぜなら株式の最低限の単元株数は100株となっているからです。つまり、ある企業の株価が1,000円で取引単元が100株だった場合、購入するには10万円が必要です(手数料除く)。

一方、少額投資であれば、一企業に10万円の資金全額を投入することなく、複数の金融商品を購入することが可能です。より多くの銘柄に分散投資できるようになればその分リスクも分散されます。少額投資を投資に取り入れることは、資産運用を行ううえで重要なポイントなのです。

少額投資できる商品1:投資信託

ここからは、少額投資できる金融商品を2つ紹介します。まずは、投資信託をみていきましょう。

投資信託のリスクとリターンは?

投資信託とは、多くの投資家から集めた資金をファンドマネージャーが運用し、利益を投資家に還元する金融商品です。投資した資金を運用の専門家が複数の銘柄に分散投資してくれるため、投資家は購入する商品を選ぶだけでよく、初心者でも比較的始めやすい金融商品といわれます。

・投資信託で期待できるのは「値上がり益」と「分配金」

投資信託で期待できる利益は、キャピタルゲインである値上がり益と、インカムゲインの分配金です。値上がり益は、購入時よりも高い基準価額で投資信託を売却したときに得られる差益です。

分配金は、ファンドの運用で得た利益から投資家に還元されるお金です。分配金の有無や支払い頻度は、ファンドにより異なります。複利効果を生かした基準価額の値上がりを重視するファンドの場合、利益が出ていたとしても分配金が支払われないこともあります。

分配金の詳細および実績は、各ファンドの目論見書(もくろみしょ)で確認できます。あらかじめしっかり確認し、自身の投資スタイルに合ったファンドを選びましょう。

NISAネット証券比較ランキング
ネット証券
会社名
投資信託
取扱数
手数料

最大21万5千円
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2,570 無料

楽天ポイント
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2,706 無料

現金1,000円
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最大20万円
キャッシュバック
1,000 無料
約150銘柄 無料

一方、投資信託で気をつけるべきリスクは、「価格変動リスク」「信用リスク」「金利変動リスク」です。

・投資信託の主なリスク1:価格変動リスク

価格変動リスクとは、ファンドが保有する有価証券の値動きにより、資産の価値が変動する可能性のことです。一般的に、株式を多く組み入れるファンドは価格変動リスクが高く、債券を多く組み入れるファンドの価格変動リスクは低いといわれます。

・投資信託の主なリスク2:信用リスク

信用リスクは、投資信託が保有する有価証券の発行元が経営難に陥ったり、不安定な情勢になったりする可能性です。たとえば、株式を発行する企業が倒産した場合、その株式を組み入れるファンドの資産も減少します。

・投資信託の主なリスク3:金利変動リスク

金利変動リスクは、金利の変動により資産が増減する可能性です。債券は、金利が上がると値段が下がり、金利が下がると値段が上がるといわれます。金利が大きく動くような局面では、債券を多く組み入れるファンドの資産に影響が出る可能性があります。

上記のほか、海外の資産を組み入れるファンドでは、為替リスクやカントリーリスクも発生します。

投資信託では購入時・保有中・売却時に手数料がかかる

投資信託では、購入時・保有中・売却時にそれぞれ手数料がかかります。手数料の詳細は、表1のとおりです。

▽表1.投資信託でかかる主な手数料

手数料の種類 手数料がかかるタイミング 詳細
購入時手数料 購入時 注文価格の数%を販売会社(※1)に支払う
信託報酬 保有期間中 販売会社や運用会社、信託銀行(※2)に支払う
信託財産留保額 売却時 売却代金を用意するコストとして、ファンドに支払う。支払った手数料は信託財産に留保される

(※1:販売会社とは、投資信託を販売する証券会社や銀行・ゆうちょ銀行などの金融機関です)
(※2:信託銀行は、投資家から集めた資金を管理します。また、運用会社の指示のもと有価証券の売買を行います)

運用を専門家に任せられる投資信託は、初心者でも始めやすい一方、専門家への報酬としての手数料が発生します。手数料額は、ファンドや販売会社により異なります。なお、購入時手数料は、ネット証券などでは無料(ノーロード)のファンドも多くあります。コストを抑えて効率的な資産運用を目指すなら、手数料の確認と管理が大切です。

数千円から投資可能。ネット証券なら100円で投資できる場合も

投資信託は、数千円から投資が可能です。ネット証券によっては、100円からの取引もできます。また、投資信託は積立による投資も可能です。一度に多くの資金を用意するのが難しい人は、自動積立を活用し少しずつ資産を増やしていくのも1つの方法です。

少額投資できる商品2:ミニ株

少額投資できる金融商品の2つめは、ミニ株です。ミニ株は、株式投資を単元未満株で行うためのサービスです。

ミニ株のリスクとリターンは?

ミニ株は、1株から株式投資ができるサービスです。少額で株式投資ができる一方、リアルタイムな価格での売買ができないなど、単元株取引とは投資方法が異なる点もあります。

・ミニ株で狙えるのは「値上がり益」「配当金」「株主優待」

ミニ株で得られる利益は、値上がり益と配当金、株主優待です。値上がり益は、購入時よりも高い株価で売却したときに得られる利益です。配当金は、企業活動で得た利益から投資家に還元されるお金です。配当金の支払い頻度は、銘柄により設定されています。配当金を楽しみたい人は、投資前に配当実績も確認しましょう。

株主優待は、株主に対して配当金以外の商品やサービスなどを進呈する、日本企業独特の制度です。株主優待は通常、100株や200株などまとまった株を保有する株主が対象となります。そのため、ミニ株の運用ではほとんどの場合、株主優待は受けられません。ミニ株投資でも株主優待を楽しみたい人は、1株から株主優待の対象となる銘柄を選びましょう。また、単元未満株でもコツコツと買い続け、結果的に単元株数に達すれば、株主優待を受けられるようになることもあります。

・ミニ株で気を付けるべき主なリスクは2つ

ミニ株で気を付けるべきリスクは、「価格変動リスク」と「信用リスク」です。ミニ株とはいえ、株式投資には違いありません。毎日値動きが変動し、株価が10倍になる「テンバガー」の可能性もあれば、企業の業績や経済状況などの悪化により信用が低くなり、結果的に資産を減らす可能性もあります。

ミニ株では売買手数料が必要

ミニ株の取引では、売買手数料が必要になります。手数料額は証券会社により異なるため、いくつかの証券会社を比較検討し、取引する証券会社を決めましょう。

一般的に、店舗や窓口を持つ対面型の証券会社よりも、インターネット上で手続きが完了するネット証券のほうが、手数料が低く設定されます。ネット証券におけるミニ株の売買手数料は、約定代金の0.5%程度です。

ミニ株なら数百円から株式投資ができる

ミニ株を活用すると、数百円から株式投資が可能になります。通常、株式投資は単元株で行います。そのため、仮に1株1,500円の銘柄だったとしても、単元株数が100株の場合には、15万円(1,500円×100株)の資金が必要です。一方、ミニ株を活用すれば1株1,500円から投資ができます。このように、ミニ株を利用すればまとまった資金が必要な大企業などへも投資がしやすくなるでしょう。

・株数が単元株に達したらどうなる?

ミニ株投資を重ねることで株数が単元株に達した場合には、単元株となります。単元株になると、多くの銘柄で株主優待の対象になるだけでなく、議決権(株主総会で議決に参加する権利)も与えられます。

少額投資に対応した制度1:NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)

少額投資をするなら、「NISA」や「iDeCo」といった制度を利用することで、税金を抑えた効率のよい資産運用を目指せます。まずは、NISAをみていきましょう。

NISAとは?

NISAは、運用から得た20%(2037年までは復興特別所得税がかかるため、20.315%)の税金が、非課税になる制度です。NISAには、「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA(未成年者向け口座)」の3つの制度があります。ここでは、20歳以上の人が開設できる一般NISAとつみたてNISAについて、詳しく解説します。

なお、NISAで開設できる口座数は、1人1口座のみです。一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの併用もできません。

・投資できる金融商品が多い「一般NISA」

一般NISAは、日本在住の20歳以上の人が開設できる口座です。概要を表2にまとめます。

▽表2.一般NISAの口座概要

項目 詳細
非課税対象 株や投資信託などの投資から得られる、分配金・配当金および値上がり益
非課税投資枠(投資の上限) 新規投資額で毎年120万円
非課税期間 最長5年
投資可能期間 2014年~2023年
(2024年以降は新・NISAへの移管により2028年まで可能)

一般NISAの特徴は、投資できる金融商品の数が多い点です。株(ミニ株含む)や投資信託はもちろん、不動産投資信託のREIT(リート)や、上場投資信託のETF(イーティーエフ)にも投資ができます。より積極的にさまざまな商品を購入したい人は、一般NISAを検討しましょう。

現行の一般NISAは2023年に終了しますが、2024年からは新・NISAがスタートします。現行NISAの口座を保有している人も、新・NISAに移行することで2028年まで投資が可能になります。

・長期での資産作りを目指せる「つみたてNISA」

つみたてNISAは、投資信託の積立投資に特化した口座です。概要を表3にまとめます。

▽表3.つみたてNISAの口座概要

項目 詳細
非課税対象 一定の投資信託への投資から得られる分配金および値上がり益
非課税投資枠(投資の上限) 新規投資額で毎年40万円
非課税期間 最長20年
投資可能期間 2018年~2037年
(2024年以降は2028年まで延長予定)

つみたてNISAの特徴は、安定的な資産形成に適していると金融庁が定めた投資信託・ETFが、非課税対象となっている点です。具体的には、ノーロードファンドや信託報酬が安いファンドなどがラインアップされています。ファンド選びが難しいと感じる投資初心者や、じっくり銘柄を選ぶ時間がない忙しい人などは、つみたてNISAを選ぶことで手間やストレスを抑えた資産運用ができるでしょう。

NISAはどのような投資に向いているか

NISAは、長期での資産形成に適した制度だといえるでしょう。非課税期間は口座により5~20年ですが、途中解約もできるため中・長期的な資産運用を目指すことができます。

非課税で資産運用を行うメリットは、複利効果を向上させ運用効率を上げられる点です。では、課税口座とNISA口座では、最終的な運用結果にどのような違いがでるのでしょうか。80万円で購入した投資信託から毎年1%の分配金を得て、再投資しながら運用を行ったと仮定した場合の運用結果シミュレーションを、表4に紹介します。

▽表4.課税口座とNISA口座での運用結果シミュレーション

課税口座 NISA口座
0年(スタート時) 80万円 80万円
5年後 83万2,381円 84万808円
10年後 86万6,074円 88万3,698円
15年後 90万1,130円 97万6,152円

NISAでは、税金を引かれることなく利益のすべてを、元本に組み入れていくことができます。そのため、長期で保有するほど投資元本が増え複利効果がアップし、資産を効率的に増やしていくことができるのです。

少額投資に対応した制度2:iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)

iDeCoは、個人で加入・資金拠出・運用をおこなう、個人型確定拠出年金です。加入者がより効果的に老後の資産形成ができるよう、iDeCoでは以下の税制優遇が設けられています。

  • 運用益が非課税になる
  • 拠出金がすべて所得控除される
  • 年金受取時には公的年金等控除もしくは退職所得控除の対象になる

iDeCoは、多くの人が安定した老後の資金形成ができるよう、厚生労働省が行う政策の1つです。そのため、色々な税制優遇が設けられています。

iDeCoとは?

iDeCoは、日本在住の20歳以上の人が加入できる年金制度です。掛金の拠出や運用の指示、年金の受け取りなどは、すべて加入者自身で行います。iDeCoには、3つの加入区分があります。詳細を表3で確認しましょう。

▽表5.iDeCoの加入区分

項目 詳細
加入できる人
(加入資格)
国民年金第1号被保険者:日本在住の20歳以上60歳未満の人(自営業者、フリーランス、学生など)
国民年金第2号被保険者:60歳未満の厚生年金の被保険者(サラリーマン、公務員)
国民年金第3号被保険者:20歳以上60歳未満の厚生年金に加入している人の被扶養配偶者

拠出した資金は、定期預金や保険商品・投資信託などで運用します。投資できる商品の種類は、iDeCoを開設する証券会社により異なります。投資商品の選択肢を多く持ちたい人は、証券会社ごとの商品ラインアップを比較検討し口座を開設することが重要です。

拠出額は毎月5,000円以上1,000円単位

iDeCoでは、毎月5,000円以上1,000円単位で、投資家が拠出額を設定します。ただし、拠出額には上限があります。加入区分別の拠出限度額は、表4のとおりです。

▽表6.加入区分別の拠出限度額

加入区分 拠出限度額(月額)
国民年金第1号被保険者 6万8,000円
(国民年金基金および国民年金付加保険料を含む)
国民年金第2号被保険者 勤務先に企業年金がない会社員 2万3,000円
企業型DC(※1)に加入している会社員 2万円
DB(※2)および企業型DCに加入している会社員 1万2,000円
DBのみに加入している会社員
公務員等
国民年金第3号被保険者 2万3,000円

※1企業型DCとは、企業型確定拠出年金です。掛金の拠出は会社が行い、加入者が運用方法を決めます。

※2DBとは確定給付企業年金です。資金の拠出から運用まですべてを企業が行います。

掛金額は毎月もしくは、1年に1回まとめて拠出します。また、1年に1回に限り拠出額の変更が可能です。iDeCoでは拠出した資金は原則として、60歳まで引き出しができません。iDeCoに投資する際には資産状況を確認し、長期で使う予定がない資金から拠出することが大切です。

老後資産の形成を目指すならiDeCoを始めよう

老後の資金作りに特化した制度であるiDeCoは、より効果的な資産運用ができるよう、複数の税制優遇が設けられています。長期で使い道がない資金がある人は、iDeCoで計画的な老後の資金形成をスタートさせましょう。

少額投資を長期で行い、運用資産と投資経験を積み上げよう

まとまった資金が用意できない、または経験が浅いうちは少額から投資を始めたいという人は、投資信託やミニ株を活用すれば、少額から資産運用にチャレンジできます。また、非課税制度を利用した長期投資を行うことで、効率よく効果的な運用が可能になります。長期で使う予定がない資金がある人は、少額から投資をスタートし、運用資産と投資経験の積み上げを目指してみてはいかがでしょうか。

文・N.ヤマモト
都市銀行にてファイナンシャルプランナーとして主に、富裕層の資産形成・運用相談を担当。投資信託や保険商品・債券・外貨預金の販売に携わる。その後はWEBライターとして、投資や資産形成についての情報を発信。子供の学費や老後資金作りのため、自らも20代から資産運用を続けている