ひとくちに「投資」といっても、さまざまな種類があります。選択肢が多いことはいいことですが、投資初心者にとっては何をどう選んだらいいのかわからないと悩んでしまう原因にもなります。投資にはどのような種類があるのか、初心者でも取り組みやすいのはどんな投資か、どうやって自分に合っている投資を選べばいいのか、解説していきます。
目次
「投資」はした方がいい?「貯金」との違いやメリット
投資をこれから始めたいという方は、まずは貯金との違いを理解しておきましょう。投資のメリットや注意しておきたいポイントについても整理します。
貯金だけではまずい?貯金と投資の違い
投資は、将来に向けてお金を増やすために、いまあるお金を投入する行為です。お金をただ貯金しておくのではなく運用することで、より効率的にお金を増やしていくことがきます。
かつてのバブル時代などは、銀行預金だけでも利息でどんどんお金が増えていったので、投資していなくても充分だったのですが、現在の低金利時代において、銀行にお金を置いておいてもほとんど増えることはありません。
それでも貯金だけで必要なお金を不自由なく用意できるならいいのですが、近年は先が見通しにくい世の中になってきています。雇用情勢、景気、社会の状況などの影響を受け、なかなか思うように充分なお金を用意するのが難しいという方も増えています。
自分に合った投資を見つけてコツコツと資産運用に取り組むことは今後さらに重要になっていくでしょう。
投資のメリットや注意点
銀行預金には元本保証がありますが、投資はそうではありません。種類によってはほぼ元本保証に近いものも存在しますが、なかには元本を大きく超える価値を持つ可能性がある一方で、ほぼ無価値にまで大幅に減る可能性があるものもあります。購入する金融商品のリスクやコストを理解して選びましょう。
投資をギャンブルのように捉えている方も少なくなく、確かにそのような使い方をすることも可能です。
ただ、投資は自分でリスクを調整できます。初心者でも数十年単位の長期的な視点で取り組めば十分プラスになる可能性があります。
毎月1万円を30年に渡って年0.001%の普通預金に投入し続けた場合、最終的な金額は360万539円です。30年かけても539円しか増えません。しかし、年1%で運用できれば約60万円増えて420万円近くになります。年1%はリスクを抑えた投資でも十分達成可能な数値です。
投資にはどんな種類がある?
では、具体的な投資の種類について見ていきましょう。
投資の種類1:定期預金
意外に思うかもしれませんが、元本保証がある定期預金も広い意味で投資に含まれます。投資のなかで最もリスクが低く、最も期待できるリターンが少ないものといえるでしょう。大手銀行などでは普通金利が年0.001%、定期預金なら年0.002%などと設定されています。
投資の種類2:外貨預金
銀行では外貨預金も扱っています。日本円ではなく米ドルやユーロなど外国の通貨で預金します。海外の預金金利は日本よりも高く設定されていることがほとんどです。外貨預金にも普通預金と定期預金がありますが、先述の大手銀行では米ドルの1年もの外貨定期預金は年0.25%と設定されています(2020年10月21日現在)。
預け始めたときから為替が円安になればさらに利益を得られますが、金利以上に円高が進めば「為替差損」といい、マイナスになることもあります。また、他の投資商品と比較し為替手数料が高い傾向にあるのはデメリットとなるでしょう。
投資の種類3:個人向け国債
定期預金と並んで低リスクでできるのが「個人向け国債」の購入です。国債は国が発行している債券で、日本という国が破綻しない限り元本割れすることはありません。3年~10年と期間が決められていて、その間は半年ごとに利子を受け取れ、満期を迎えると元本が全額返ってきます。金利は年0.05%が最低保証されています。銀行や証券会社で購入できます。
投資の種類4:貯蓄型保険
終身保険、学資保険、個人年金保険など、保険料が掛け捨てではなく積み立てタイプの保険は資産運用の1つとして利用されることも多々あります。どれくらい増えるのかは保険のパンフレット等に記載されている「返戻率」を見ればわかります。返戻率は保険ごとに違うため、比較して選ぶとよいでしょう。近年は外貨で運用するものや運用成績次第で返戻率が変動するタイプも出てきています。
投資の種類5:株式投資
投資といえば「株式投資」をイメージする方が多いかもしれません。企業が資金調達のために発行しているのが「株式」です。株式の価格は刻一刻と変動しますので、安いときに買って高いときに売れば利益が出ます。さらに、株式の保有を続けていると配当金や株主優待を受け取れるというメリットもあります。
投資の種類6:投資信託
投資信託とは、多くの投資家から集めたお金をひとまとめし、それを投資のプロが株式、債券、不動産などさまざまな銘柄に配分し投資する商品のことです。自分で個別の投資先を分析しなくても、運用方針が合う投資信託さえ見つけておけばプロにおまかせできるため、投資初心者にも人気があります。期待できるリターンは投資信託ごとに違います。
ネット証券 会社名 |
投資信託 取扱数 |
手数料 |
---|---|---|
最大21万5千円 キャッシュバック |
2,570 | 無料 |
楽天ポイント 200ポイントプレゼント |
2,706 | 無料 |
現金1,000円 プレゼント |
1,500 | 無料 |
最大20万円 キャッシュバック |
1,000 | 無料 |
約150銘柄 | 無料 | |
投資の種類7:不動産投資
不動産投資ではマンション、戸建て、ビルなどを購入します。「大家さん」になって賃貸料を受け取ったり、不動産価格が上がったときに売却して値上がり益を得たりして利益を出していきます。1つの投資あたり数百万~億円単位ということもあり、多額の資金が必要です。
投資の種類8:FX
FXは日本語でいうと「外国為替証拠金取引」です。1ドル100円のときに円をドルに替えて、1ドル120円になったときにそのドルを円に替えれば、20円の儲けが出ます。FXではこのように常に変動する為替の値動きを利用して利益を出します。外貨預金のように利息を得ることもできます。
FXのもう1つの特徴が「レバレッジ」です。先にお金を担保として入れておくことで、資金の10倍、20倍など大きな金額を動かすことができます。手持ちが10万円でも100万円分を動かせるので利益が出れば大きいのですが、うまくいかなかった場合は損失が膨らむリスクがあります。
投資の種類9:その他(金、仮想通貨、etc.)
金・銀・プラチナなど貴金属への投資、暗号資産(仮想通貨)への投資、先物取引などそのほかにも多種多様な投資があります。
種類が多くて難しい?自分に合った投資を選ぶポイント
では、次はさまざまな投資の中から自分に合った方法を選ぶ方法について見ていきましょう。ポイントとなるのは次のような項目です。
▽自分の投資スタンスを知るための確認項目
- 投資の目的:いつまでにいくら増やしたいか
- リスク許容度:どこまでリスクを取れるか
- 元手資金:いくら投資に回せるか
- 年齢:それくらいの投資期間が確保できるか
あなたはなぜ投資をしたいと思ったのでしょうか。「老後に備えたい」「若くしてセミリタイアしたい」「ちょっとお得な暮らしがしたい」「リアルな経済を学ぶ一環」など動機はさまざまだと思いますが、その理由によって目指すリターンや取れるリスクが変わってきます。
まずは、自分が投資をする目的に照らして、いつまでにいくら増やしたいのか具体的に考えてみましょう。
たとえば、30歳の人が65歳で定年を迎える頃までに2,000万円用意したいとします。毎月1万円を投資に回せるなら、年間約7.4%で運用できればほぼ目標達成できます。毎月2万円投資できるなら約4.4%、毎月3万円なら約2.5%です。
高いリターンを求めるならリスクも高くなり、リスクを抑えるならリターンも抑えられるのが投資の原則です。いくらくらいの資金をどれくらいの期間で運用するつもりなのか、目指すリターンはいくらでどこまでリスクを取れるのか、これらが明確になれば選ぶべき投資もおのずと絞れてきます。
ローリスク・ローリターンを望むなら定期預金や個人向け国債、ハイリスク・ハイリターンを望むならFXや仮想通貨、その中間のミドルリスク・ミドルリターンを望むなら投資信託や株式投資といった具合です。
興味を持った投資があれば、どれくらいのリターンを見込めるのか調べてみましょう。リターンとリスクのバランスを考え、今の自分に合った方法を選びたいところです。
もちろん複数の投資の組み合わせも有効!
チャレンジする投資を1つに絞る必要はありません。むしろ複数の投資を組み合わせるのがおすすめです。1度にまとまった金額を1つの投資対象に全部投入してしまうより、複数回に分けて少しずつさまざまな投資対象に分散して投資した方がリスクを抑えることができます。複数の金融商品を購入し、リスクを分散させることを「分散投資」といい、投資の原則とされています。
初心者におすすめの投資はどれ?
ここまでさまざまな投資を紹介してきましたが、初心者でも比較的取り組みやすい投資はどのようなものなのか、もう少し深掘りしてみましょう。
初心者でもはじめやすい投資のポイント
次のような条件を満たす投資は、初心者向きといえるでしょう。
▽初心者向けの投資の条件
- 元手資金が少なくても始められる
- 「長期・分散・積立」投資に向いている
投資は、余裕資金で取り組むのが基本です。生活費や緊急用のお金を確保したうえで、しばらく使わなさそうな分を回すとか、仮になくなってしまっても生活に支障をきたさないくらいの金額で取り組むようにしましょう。お金に余裕がないと精神的にも余裕がなくなり、投資に必須である「冷静な判断力」を失ってしまいます。
はじめのうちは特に、少額ずつ投入して様子を見つつ、何度か「お試し」や「練習」のような投資を繰り返し、知識も付いて慣れてきてから本格的に取り組む、という手順にした方が安心です。いきなり大金を投入し、取り返しのつかない大失敗をしてしまう可能性も低くなります。
初心者でも取り組みやすい王道の投資方法として「長期分散積立投資」があります。長い期間に渡って、さまざまな投資対象に分散して一定の期間ごとに一定の金額を投入し続ける方法です。リスクを抑えることもできますし、日々の値動きや購入のタイミングに迷わずに済みます。
少額からコツコツと取り組みやすい投資には、具体的には次のようなものがあります。
初心者でもはじめやすい投資1:投資信託
投資信託は商品によっては月100円でも始められます。なかには、買い物で貯まったポイントを使えることもありますので、元手資金が少ない人や、最初からまとまったお金を投じるのが怖い人でも始めやすいでしょう。
先述のとおり、投資信託はその道のプロが選んださまざまな銘柄に分散投資できる商品ですので、その点でもおすすめです。詳しくは後述しますが、投資信託は国が投資を促すために用意している税制優遇制度の対象にもなっています。
初心者でもはじめやすい投資2:ミニ株(単元未満株への投資)
株式投資のなかでも、特に少額から取り組めるのが単元未満株への投資です。通常の株式投資では100株をひとかたまりとしてまとめ売りしているのですが、単元未満株はそれをバラ売りできるよう1株ずつに分けたものです。
証券会社によって「ミニ株」「まめ株」「いちかぶ」「S株」などさまざまな名称で呼ばれていますが、いずれもこの単元未満株のことを指しています。
100株単位だと1回の投資で数十万円の資金が必要だった企業の株も、1株だと数千円で購入できるようになります。なかには数百円で購入できる株もありますので、投資信託同様、気軽に始めやすいです。
従来は100株単位で保有していないと株主優待がなかった企業が1株だけの株主を対象にした優待制度を新設する動きがでてくるなど、単元未満株への投資は近年盛り上がりをみせています。スマホでタップするだけで気軽に株を購入できるスマホ証券会社や専用アプリが増えたことも拍車をかけています。
投資を始めるために、初心者に優しい証券会社を選ぼう
投資信託や株式を購入するためには、証券会社に証券口座を開設する必要があります。投資銘柄選びはもちろん重要ですが、証券会社選びも手数料の違いなどから得られるリターンに影響しますので慎重に選びたいところです。以下は初心者でも使いやすい証券会社の例です。
・初心者でも使いやすい証券会社1:SBI証券
インターネット専業の証券会社の大手です。新規口座開設数トップを誇り、単元未満株への投資も投資信託も、その他さまざまな投資や税制優遇制度への対応もオールマイティーにこなせて手数料も手ごろです。
・初心者でも使いやすい証券会社2:楽天証券
SBI証券同様、人気の高いインターネット専業証券会社です。楽天市場の利用などで貯めたポイントで株や投資信託を購入でき、「楽天経済圏」のメリットを享受できます。
・初心者でも使いやすい証券会社3:LINE証券
トークアプリ「LINE」内で口座開設から購入まで済ませられる「スマホ証券」です。LINE PayやLINEポイントにも対応していて、スマホだけで通常の株式投資、単元未満株への投資、投資信託の購入に対応できます。割安で株を購入できる「株のタイムセール」が人気を集めています。
使い勝手や手数料、サポート体制などを比較して自分に合うところを選びましょう。ちなみに、外貨預金や不動産投資なら銀行、貯蓄型保険なら保険会社など、取引する金融機関を選ぶことは多くの投資で必要とされる重要な手順です。
活用しよう!投資を応援してくれる国の制度
株式投資や投資信託への投資を考えるなら、iDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)といった税制優遇制度についても知っておきましょう。通常は運用益に対して約20%かかる税金が非課税になるなど大きなメリットがあります。概要は以下のとおりです。
▽税制優遇のあるNISA、つみたてNISA、iDeCoの特徴比較
NISA | つみたてNISA | iDeCo | |
税制優遇 | 投資の運用益が非課税 | 投資の運用益が非課税 | ・投資の運用益が非課税 ・掛金の全額が所得控除 ・受け取り時も控除あり |
非課税投資枠 | 年間120万円 | 年間40万円 | 月額1万2,000円~ 6万8,000円 (職業などによる) |
非課税期間 | 最長5年間 | 最長20年間 | 60歳まで |
投資できる銘柄 | 株式投資信託、国内外の上場株式・ETF・REIT(不動産投資信託)、ETN(上場投資証券)、新株予約権付社債(ワラント債) | 金融庁が「長期・積立・分散投資」に適していると認めた投資信託、ETF | 定期預金や保険などの 元本保証商品、 投資信託(1金融機関あたり数本~40本程度) |
お金の引き出し | いつでも可能 | いつでも可能 | 原則60歳まで不可 |
投資の種類を把握して、自分に合ったものを選ぼう
これから投資を始めるなら、まずは投資にはどのような種類があるのかを把握しましょう。自分はいつまでにいくら増やしたいのか、元手資金としていくら用意できるのかなども踏まえて、自分に合ったものを選びましょう。自分が行いたい投資イメージが固まったら、手数料が安いネット証券などで口座を開設してみてはいかがでしょうか。
文・馬場 愛梨
所属・ばばえりFP事務所 代表
関西学院大学商学部卒業後、銀行にてクレジットカードやカードローン、投資信託などの金融商品を扱う窓口営業に従事。 その後、不動産会社や保険代理店での勤務を経て、独立。 お金にまつわる解説記事を数多く執筆。保有資格:AFP、証券外務員一種、秘書検定1級