リスクのない投資は存在しません。しかし、損する可能性がほぼゼロという「必ず儲かる投資」は存在します。投資の原則的なメカニズムとあわせて、リスクとリターンの関係を解説します。
必ず儲かる投資とは?
「必ず儲かる投資」とはどのようなものなのでしょうか。
銀行預金も金融商品
「元本保証」がある、つまり元手資金がマイナスになることがない金融商品に投資すれば、必ず儲けが出ます。元本保証がある投資には、たとえば銀行預金が挙げられます。投資は、増えるか減るかわからないものに思い切ってお金をつぎ込むいうイメージを持たれがちですが、「将来得られる利益を期待して資本を増やすこと」が投資です。金融商品だけではなく、生産設備や商品在庫なども「資本」にあたります。
自宅や貸金庫に現金を保管しておいても「投資」にはなりませんが、銀行預金はれっきとした「投資」です。金融機関は顧客から預かったお金を企業に貸し出すなどの運用に回します。
たとえお金を預けている金融機関が破綻しても、預金保険制度があり、普通預金や定期預金に預けたお金は「1,000万円+その利息」までは預金保険機構から払い戻し(ペイオフ)を受けられます。そのため1,000万円以下の銀行預金なら、元本割れになる(投入したお金がマイナスになる)可能性はかなり低いといえます。
損失が出ることがほぼなく、預けている限りは利息がつきますので、銀行預金は「必ず儲かる投資」に限りなく近い存在です。
「必ず儲かる投資」の儲けは非常に少ない
銀行預金の例は、「必ず儲かる投資」と聞いて想像していたものとは違ったかもしれません。某大手銀行の普通預金の金利は2021年1月時点で年0.001%と、預けたお金はほとんど増えません。元本保証でほぼ確実に儲けが出ますが、その額はごくわずかです。
これが「必ず儲かる投資」の実態です。「確実に大金を儲けられる」といったうまい話は、残念ながら世の中に存在しません。リスクを抑えれば期待できるリターンは少なくなり(ローリスク・ローリターン)、大きなリターンを求めればリスクも大きくなる(ハイリスク・ハイリターン)のが投資の基本原則です。
リスクとリターンは相関する
投資のリスクとリターンについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
主な金融商品のリスクとリターン
ローリスクならローリターン、ハイリスクならハイリターンと、リスクとリターンは表裏一体で、相関関係にあります。
どれくらいのリスクとリターンがあるのかは、金融商品ごとに違います。商品ごとのリスクとリターンはおおよそ下図のように表すことができます。
リスクとリターンが最も小さいのが、銀行預金を含む「預貯金」です。右上に上がっていくほどリスクもリターンも大きくなっていきます。
ローリスク・ハイリターンは存在しない
ローリスク・ハイリターンとは「ほとんど損をすることなく確実に大金が儲かる」という意味で、これをうたう商品は詐欺の類か、もしくは仕組みが複雑でリスクが見えていないだけという可能性が高いでしょう。非常に魅力的に見えるかもしれませんが、このような商品には必ず何らかの「ウラ」があると考えたほうがよさそうです。
ハイリスク・ローリターンには投資する意味がない
逆にハイリスク・ローリターンは、いわゆる「骨折り損のくたびれ儲け」です。痛手を被る危険をおかす割に大きなリターンが得られないような商品にわざわざ取り組む価値がありません。
甘い言葉に騙されないように
「損しない」「絶対」「ここだけの話」「あなただけに」「特別な仕組み」「先行者だけが得をする」など、甘い言葉で投資を促す業者は絶えません。リスクとリターンの関係が理解できていれば、これらの誘い文句が危険であることは容易に判断できます。また、仕組みが完全に理解できない商品には投資しないことも投資の鉄則といえます。
商品ごとに大きさの違いはあるものの「ローリスク・ローリターン」「ミドルリスク・ミドルリターン」「ハイリスク・ハイリターン」と、リスクとリターンは必ずセットになります。この原則を知っておくだけでも、投資で痛い目にあう可能性は小さくなるでしょう。
債券や投資信託、株式とはどんな商品?
図に登場した「債券」「投資信託」「株式」がそれぞれどのような投資商品なのかを解説していきます。最もハイリスク・ハイリターンにあたるFXは投資初心者向きとはいえないため、これから投資をしたいと考える方にはこの3つが現実的な選択肢となるでしょう。
債券とは
債券とは、国や地方自治体、企業などが資金調達のために発行するものです。債券を購入することは、その発行団体にお金を貸しているのと同じことです。債券を保有している間は利子が受け取れ、満期を迎えると元本が全額戻ってきます。
国が発行する「国債」や自治体が発行する「地方債」、企業が発行する「社債」などさまざまな種類があります。外国の債券の購入も可能です。
日本国債を個人向けに買いやすいようにした商品が「個人向け国債」です。国債は国が破綻しない限り元本は戻ってきますので、預貯金と同様に限りなくノーリスクといえます。日本国債では、受け取れる利子は最低でも年0.05%が保証されています。
株式とは
株式は、企業が資金調達のために発行しているものです。株式を購入するということは、その企業の出資者(株主)になるということです。社債と違い満期や、保証された利子はありません。
株主には所有株数に応じて株主総会での議決権や、配当金や株主優待が与えられます。また、株式はその価格(株価)が安いときに購入し、企業の成長や業績向上により株価が高くなったタイミングで売ることで、その差額を「値上がり益」として得られます。
株式投資はお金が大きく増える可能性もありますが、減ってしまうリスクもあるため、債券よりも「ハイリスク・ハイリターン」に分類されます。
投資信託とは
投資信託は、多数の投資家から集めた大きな資金を「ファンドマネージャー」などのプロが運用して、その収益を投資家に分配する金融商品です。投資信託では債券・株式・不動産など、さまざまな投資対象に分散させてリスクを低減(分散効果)しています。
投資信託ごとに運用方針が違い、債券を中心に投資するものもあれば、株式中心のものあります。どんな投資信託を選ぶかでリスクとリターンも変わってきます。商品種類だけでなく、投資エリアや運用方法で特徴付けた投資信託もあります。
・投資エリア:国内、先進国、新興国
・運用方法:インデックス型、アクティブ型
投資エリアは国内のほうがリクスは低く、新興国に投資している商品はリスクが高まります。日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)といった指数に連動する運用を目指す「インデックス」と、それを上回る運用を目指す「アクティブ」については後述しますが、リスクをなるべく抑えたいなら「国内債券のインデックス型」など、許容できるリスクと目標リターンを考えながら組み合わせます。投資信託を始めるときは、商品の特徴をよく確認する必要があります。
投資で成果を上げるためのコツ
投資で成果を上げるためには、リスクのコントロールが必要不可欠です。ここではリスクコントロールにおける6つのコツをご紹介します。
投資で成果を上げるコツ1:中長期投資
「すぐに儲けを出したい」と思うかもしれませんが、焦りは禁物です。1分1秒を争うような短期的な投資は専業のトレーダーにしかできません。それもかなりの場数を踏む必要があるでしょう。日々の値動きに一喜一憂していては、疲れや焦りで判断を誤ってしまうかもしれません。
初心者であれば数年、できれば数十年単位の長期的な視点を持って投資に取り組むのがおすすめです。投資できる期間が長くなれば、一時的な価格変動に影響されにくくなってリスクを抑えることにつながりますし、利回りが利回りを生む「複利」効果も大きくなりお金も増えやすくなります。
投資で成果を上げるコツ2:分散投資
投資信託の項で紹介した「分散」は、代表的なリスク軽減策の1つです。たとえば株式投資で1社の銘柄に資金を集中させていた場合、その会社が倒産すればほぼ資金が消滅します。複数銘柄に分けて投資すれば、そういった事態を防ぐことができます。
分散投資には銘柄の分散だけでなく、異なる金融商品に投資する「資産分散」、さまざまな国の金融商品を購入する「地域分散」、1度に投資せず複数回に分けて投資する「時間の分散」などの手法があります。
時間分散のうち、一定の間隔で一定の金額ずつ同じ投資先に毎回積み立てていく投資手法を「ドルコスト平均法」といいます。一度設定しておくだけで自動的に分散投資を実践できるため、初心者にも人気の方法です。
投資で成果を上げるコツ3:資金管理を徹底
投資に回すのは「余裕資金」が基本です。まずは家計を整理して、しばらく使う予定のないお金がいくらあるのかを把握しましょう。
元手資金が多い方が分散投資もしやすくなるため、効率よくお金を増やせる可能性が高まります。ただし、元手が大きくなればそれを失ったときのダメージも大きくなります。資産全体の何%を運用に回すのか、どのような運用先に何%ずつ配分するのかなど、家計の状況や価値観と照らしあわせて、適切な配分を設定することが重要です。
投資による損失で生活が困窮してしまっては、投資の意味がありません。最初はお小遣い程度の少額から始めて、慣れてきてから徐々に投資額を増やしていくのが望ましいでしょう。
投資で成果を上げるコツ4:インデックス型の投資信託は初心者向き
投資を始めたいと思っても、何を選べばいいのか迷って決められないという方もいるでしょう。そんなときはインデックス型の投資信託を選んでみてはいかがでしょうか。
投資信託は、運用方針だけこちらで選べば、あとは個別銘柄の分析や配分まで運用のプロに任せることができます。投資信託ではさまざまな投資先に資金を分散しますので、投資信託を1本購入するだけで自動的に分散投資をしていることになります。
なかでもインデックス型とは、日経平均株価など特定の指標と値動きが連動するようにつくられた投資信託の種類の1つです。指標を上回る成果を目指すアクティブ型に比べ手数料も安く、リスクも小さいため安定した資産運用に向いている金融商品といえます。
投資で成果を上げるコツ5:NISAやiDeCoを活用する
NISA(ニーサ)とiDeCo(イデコ)は投資収益への税制優遇制度です。投資収益には通常20.315%の税金がかかりますが、NISAとiDeCoの枠内で購入した分については非課税になります。
それぞれの制度に特徴がありますので、投資に回せる金額が大きいなら「NISA」、より分散効果の高い長期積立をしたいなら「つみたてNISA」、老後の資金準備をしたいなら「iDeCo」など、ニーズに合った選択ができます。
投資で成果を上げるコツ6:金融機関選びにもこだわる
投資をスタートするためには、金融機関で口座を開設する必要があります。国債と投資信託は、銀行や証券会社などで取引できます。株式は証券会社でしか取引できません。
金融機関ごとに、手数料、利用できるツール、扱っている金融商品、サポート体制などが違います。先述のNISAとiDeCoは複数の金融機関で開設できません。投資先選びだけでなく金融機関選びも慎重に行いたいところです。
近年は、さまざまな投資商品を扱っていて手軽に取引できるインターネット系の証券会社、特にSBI証券や楽天証券などが人気を集めています。
まとめ:リスクとリターンの関係を理解すればリスクは小さくなる
投資には、リスクとリターンがあります。ローリスク・ハイリターンは存在せず、ハイリスク・ローリターンは投資する意味がありません。リスクとリターンの相関関係を頭に入れておくことで、自分に合わない商品や危険な儲け話を避けやすくなります。資金をきちんと管理し、適切な配分を考えながら中長期で分散投資を実践することで、投資の成功確率は高まることでしょう。
文・馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表。関西学院大学商学部卒業後、銀行にてクレジットカードやカードローン、投資信託などの金融商品を扱う窓口営業に従事。その後、不動産会社や保険代理店での勤務を経て、独立。お金にまつわる解説記事を数多く執筆。保有資格:AFP、証券外務員一種、秘書検定1級など。