株式投資で大切なのは、投資手法を学ぶことと、銘柄のスクリーニングです。多くの上場企業のなかから、自分なりの選定基準を設けて「これだ」と思える銘柄を探し当てなくてはなりません。

銘柄選別の眼を磨いていけば、保有するポートフォリオをブラッシュアップし、リターンにつなげることができます。この記事では、株式投資のビギナーが学ぶべき銘柄選びのポイントなどについて解説します。

目次

  1. 6つの投資手法から考えるおすすめの銘柄選び
  2. ファンダメンタルズに関する基本知識
  3. テクニカル指標を活用するために知っておきたいキーワード
  4. 投資銘柄の具体的な探し方:ネット編
  5. 投資銘柄の具体的な探し方:実生活編
  6. まとめ:情報を取捨選択しながらより有望な銘柄の選定を

6つの投資手法から考えるおすすめの銘柄選び

株式投資とはなにか?株を始める前に身につけたいマネーリテラシー

この項では「バリュー」「グロース」「低位株」「モメンタム」「イベント」「デイトレード」という6つの投資戦略を考察、各戦略における銘柄選びのポイントについて解説します。

銘柄の選び方1:バリュー投資(割安株投資):好業績で株価が安い銘柄への投資

「バリュー投資」は、業績・財務状態や配当水準などからみて、割安だと考えられる銘柄を購入する戦略です。割安の判断基準としては、PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)を使い、各指標の数値が低い銘柄をターゲットとします。

銘柄の選び方2:グロース投資(成長株投資):株価上昇や今後の成長を見込める銘柄への投資

将来の成長率が市場平均を上回る銘柄をターゲットとする投資戦略です。

難しいのは、企業の将来性・成長性をいかに見極めるかです。ビジネスモデルの優位性が高いか、収益面で稼ぐ力が備わっているか、事業ドメインの伸長率が頭打ちになっていないかなど、さまざまな視点から俯瞰し、将来有望な銘柄を見つけ出すのです。

銘柄の選び方3:低位株投資:株価水準が低く発行済み株式が比較的多い銘柄への投資

低位株の定義に明確な物差しはありませんが、株価がおおむね1,000円を下回るような銘柄とされています。100株×1,000円=10万円以下の資金から投資が可能です。

低位株には個人投資家の買いが入りやすく、中には周期的に激しい値動きを繰り返す銘柄があります。こうした銘柄にあらかじめ網をかけ、急騰をじっくり待つという戦略も有効策の1つです。

銘柄の選び方4:モメンタム投資:株価パフォーマンスの流れに着目する投資

モメンタム効果とは、「過去に高いパフォーマンスを上げて勢い・惰性がついた銘柄は、その後も上昇し続ける」とする経済理論です。このモメンタム理論を活かした投資戦略がモメンタム投資、いわゆる「順張り」です。

モメンタム投資の有効性は、株・債券・為替・商品・金利などのさまざまな取引で証明されています。

ほとんどの投資家になじみのあるチャート分析を使えば、株価のトレンドは比較的容易につかむことができます。たとえば、ゴールデンクロス(移動平均線をチャートが上に突き抜ける時、株価は上昇トレンドに乗る)といった分析手法は株式投資の初心者でも取り組みやすい手法の1つです。

銘柄の選び方5:イベント投資:株式市場に発生するイベントに注目した投資手法

「イベント投資」とは、株価に大きなインパクトをもたらすさまざまなイベントに先んじ、株を仕込んでおいて利ザヤを稼ごうという投資戦略です。

イベントとは、たとえば株式分割、日経平均などの指数構成銘柄入替、配当などの権利確定日、商品出荷の季節的な変動、「5月には株を売れ」などのジンクス的なものなどさまざまです。

銘柄の選び方6:デイトレード: 1日に複数回の取引で細かく利益を積み重ねる投資手法

株取引を1日のうちに完結させる投資戦略がデイトレードで、ポジションも翌日に持ち越さず、また新しい取引をスタートします。相場の小さな値動きから利ザヤを確保し、これを数回にわたって繰り返します。

通常の投資スタイルは、中長期の株価トレンドを重要視しますが、デイトレードはまさに真逆の手法です。

取引所が動く9時から15時まで集中的に取引するため、副業で行うのは難しく、専業トレーダー向けの投資スタイルといえるでしょう。

同時にデイトレーダーには、常にマーケットの動きをウォッチし一瞬の値動きをつかむ俊敏さと決断力、わずかな利益を積み重ね続ける根気が求められます。

ほかの投資戦略と同様に、デイトレードでも銘柄選びは重要です。選び方のポイントは、「値動きの大きさがどれくらいになりそうか」にあります。一般的には「値上がり率・値下がり率ランキング」などを参考にすると同時に、その日ネットなどで話題となっている銘柄情報も収集しておきます。

<参考>万人にとっての「おすすめ銘柄」は存在しない

「100%の確率で値上がりする株」や「誰にでもおすすめできる株」は世の中にありません。

株価は、発行会社の業績といったミクロ面だけではなく、マクロ面つまり景気動向や経済情勢によって大きく動きます。銘柄によって、ボラティリティ(値動きの激しさ)も異なります。

そのため、投資家はマクロ面およびミクロ面の動向を分析しつつ、余裕資金などからみて許容できるボラティリティの範囲内で銘柄を選ばなくてはいけません。

つまり「おすすめの銘柄」は、自ら分析や検証といった努力をコツコツと積み重ねることを通じて探す以外に、特別な術はないのです。

ファンダメンタルズに関する基本知識

とくにバリュー投資やグロース投資では、ファンダメンタルズ面が重視されます。よく使われる指標を取り上げながら、解説していきます。

ファンダメンタルズとは?

ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)とは、企業の業績・財務状況などを示す指標です。業績を示す指標、資本などに対する効率を示す指標、株価と業績などを対比させた指標に区分されます。

以下、ファンダメンタルズ分析において、よく使われる指標について説明します。

PER、PBR

PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)は株価を1株当たりの当期利益で割った数値で、株価と業績を対比させた指標です。一般的には、PERが高いと割高、低いと割安な株といわれています。

PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)は株価を1株当たりの純資産で割った数値で、株価と財務状態を対比させた指標です。こちらも数値が低いほど、株価が割安と判断されます。

PER・PBRは業績や資産に対する株価の割安・割高を判断する際に使用しますが、「PER(PBR)が何倍なら割安だ」といった明確な目安はありません。当該企業の過去の数値との比較や、同業種(セクター)の他の企業と比較する際の物差しとして活用しましょう。

ROIC、ROE、ROA

ROIC(Return On Invested Capital:投下資本利益率)、ROE(Return On Equity:資本利益率)、ROA(Return On Assets:総資産利益率)は、いずれも資本などに対する効率を示す指標です。

企業業績(売上高、営業利益、経常利益、純利益)の流れ

企業業績は、売上高、営業利益、経常利益、純利益の4つに段階的に区分されます。

まず商品やサービスの販売額の合計が「売上高」です。そしてビジネスでの稼ぐ力が「営業利益」であり、売上高-売上原価-販売費および一般管理費の算式で計算されます。営業利益から営業外損益を加減したのが「経常利益」で、そこから税金などを差し引いた最終利益が「純利益」となります。

テクニカル指標を活用するために知っておきたいキーワード

モメンタム投資などで重要視されるのがテクニカル指標です。テクニカル指標を使いこなすには、まず「ローソク足」や「移動平均線」を習得しなければいけません。

ローソク足

日足・月足・週足・5分足・1分足などにより、さまざまな期間の値動きをあらわします。

ローソク足は「ローソク」と「ヒゲ」で構成され、ローソクは「始値」「終値」、ヒゲは「高値」「安値」を示します。さらに白のローソクは陽線で上昇トレンドを示し、黒は陰線で下降トレンドを示します。この部分が長いほど、値動きが激しかったことを意味します。

複雑な値動きがビジュアルでつかめる優れもののローソク足ですが、実は開発したのは日本人です。「ローソク足」は江戸時代の米問屋・本間宗久によって編み出されたものとされています。

移動平均線

ローソク足は値動きをつかむのに役立ちますが、一方で株価は時々刻々と上下します。ローソク足をつないだチャートはヘビのようにのたうち、株価のトレンドを把握するのには役立ちません。

そこで、直近数日間の終値平均を折れ線グラフでつなぎ、株価の動きを平滑化したのが「移動平均線」です。実践では、日足では5日・25日・75日、週足では13週、26週、52週、月足では6ヶ月・12ヶ月・60ヶ月の移動平均線が多用されます。

移動平均線は、トレンドライン(支持線・抵抗線)やゴールデンクロス・デッドクロスといった形でチャート分析に活用されています。

さらに、一般的に使われる単純移動平均線(SMA)をブラッシュアップした加重平均単純平均線(WMA)や指数平滑移動平均線(EMA)を使えば、よりスピーディーに株価トレンドの変化を察知することもできます。

<参考>銘柄の選び方、4つの視点

東証に上場している企業は2021年2月19日時点で、3,755社にものぼります。銘柄選びに際しては、多くの企業から絞り込みを行わなければなりません。ここでは、絞り込みに役立つ4つの視点について紹介します。

・身近な企業や分野などから選ぶ
普段通勤で利用している鉄道会社、休日によく行くスーパーやファミリーレストラン、街中で看板をみかけるメガバンク、就活の時に第1志望だった総合商社……あなたにとってなじみのある企業に的を絞るのも選択肢の1つです。

よく見知った会社であるからこそ、その会社の成長性・将来性・堅実性などをつかみやすいのです。さらに、自分なりの目利きを入れれば、将来が楽しみな有望株を探し当てられるかもしれないのです。

・自分の仕事に近い業界を選ぶ
自らが身を置いているまたは周辺業界のなかから、投資先を絞るのも選択肢の1つです。業界事情や同業他社間の優劣、優良に見える会社の意外と苦しい台所事情など一般的には知られていない情報も集めやすく、銘柄の絞り込みにも役立つでしょう。

・株主優待で選ぶ
お気に入りの観劇・好物のハンバーガー・エアチケットの半額割引など、株主優待を目的に株を保有している個人投資家も少なくありません。さまざまな企業が株主優待を実施していますが、なかでも消費財メーカーは、自社商品の愛用者拡大にもつながるため、株主優待に熱心なところが多いようです。

ただし株主優待が充実していても、株価が下がっては元も子もありません。株主優待の視点だけでなく、その企業の成長性や将来性にも目を向けるようにしましょう。

・配当で選ぶ(高配当銘柄)
株価の値上がりによる利益は売らない限り現金にはなりませんが、配当は毎期、手にすることができます。こうした観点で、配当を目的に銘柄を絞るのも、選択肢の1つです。

投資銘柄の具体的な探し方:ネット編

では銘柄選びにあたり、具体的にどのように情報を集めればよいのでしょうか。ここでは投資情報が充実した無料サイトや、東証が提供している開示情報など、銘柄選びに活用できるサイトなどを紹介します。

「株探」で調べる

「株探(かぶたん)」は投資銘柄ごとのチャートだけでなく、開示情報、IRレポートや市場のニュースなども掲載しています。上昇銘柄やストップ高などのランキング情報も豊富で、今注目の銘柄も簡単にわかります。

チャート表示はローソク足・マウンテン・折れ線グラフをスイッチでき、移動平均線、平滑移動平均線、ボリンジャーバンド、スロー・ストキャスティクスなどさまざまなテクニカル指標を交えた分析も可能です。

株式投資にチャレンジするのであれば、株探はぜひともチェックしておきたいポータルサイトです。

▽株探
https://kabutan.jp/

「Yahoo!ファイナンス」で調べる

株探とともに多くの投資家がブックマークしているポータルサイトが「Yahoo!ファイナンス」です。相場動向や経済指標などマクロ的な情報の豊富さには定評があり、相場全体を俯瞰しながらの銘柄選びに役立つでしょう。

チャートは折れ線グラフを使った、シンプルで見やすいタイプを採用しています。

▽Yahoo!ファイナンス
https://finance.yahoo.co.jp/

「Twitter」の投資家発信情報をチェック

TwitterなどのSNSを通じ、個人の投資家がツイートしている株式情報も役立ちます。発信されている情報の信頼度にはバラツキがあるのですべてをうのみにするのは危険ですが、精査しながら読み込んでいくと、銘柄選択や投資スキル習得に役立つものがきっと拾えるはずです。

Twitter以外にも、信頼できる個人投資家が発信しているブログも活用してみましょう。

適時開示情報(TDnet)をチェック

上場企業に公表が義務付けられている「適時開示」情報は、東京証券取引所が管轄するTDnet(Timely Disclosure network)に掲載されます。企業の四半期報告だけでなく、業績や組織運営に係わる重要な事項もTDnetに掲載されるので、銘柄選びに役立つ情報をタイムリーに知ることができます。

▽TDnet
https://www.release.tdnet.info/inbs/I_main_00.html

投資銘柄の具体的な探し方:実生活編

情報は何もインターネット上だけとは限りません。ここでは、セミナーやイベントなどの場を通じた、役立つ情報の収集方法について紹介します。

株式投資セミナーに参加する

証券会社や銀行は顧客サービスの一環として、定期的に株式投資セミナーを開催しています。最近はオンライン配信が主流になっているようです。

ファンドマネージャーなどによる調査レポートの解説、営業部による生の株式情報、金融商品の基礎知識講座など、各社趣向を凝らしたメニューを用意しています。

IRフェアに参加する

新聞社や東京証券取引所は、個人投資家を対象に「IRフェア」を定期的に開催しています。フェアには多くの上場企業が参加、経営方針や事業情報を発信しています。個人投資家にとって、上場企業担当者が発する生の声が聴ける貴重な機会です。

株主総会に参加する

すでに株式投資をはじめているなら、自宅に郵送された「株主総会招集通知書」を見たことがあるかもしれません。ほとんどの投資家が株主総会には足を向けませんが、せっかくの機会なので、一度参加してみてはいかがでしょうか。株主に対する利益還元方針、中期の経営計画やその進捗状況、経営ビジョンなど、発行会社のビジネスを生で知る重要な機会です。

異性のパートナーにトレンドを聞く

自分のパートナーに、最近注目を集めているコスメや美容機器などをリサーチする手もあります。他人が愛用する商品の好みは、聞いてみないとわからないもので意外性があります。目からうろこが落ちる、有望銘柄を見つけ出すきっかけになるかもしれません。

まとめ:情報を取捨選択しながらより有望な銘柄の選定を

株式投資に当たっての銘柄の選別方法や情報収集法について解説してきました。投資戦略にせよ、情報収集法にせよ「これが正解」というものはありません。自分の投資スタイルに適したものを選択すればよいのです。ただし、一度決めた手法はブレずに継続するようにしたいものです。