新型コロナウイルスワクチン開発のニュースなどから、日経平均株価はバブル後の高値を更新した。資産運用に積極的になっている投資家もいれば、経済状況の先行きが不安な状況下での株高に対し、定期預金に投資資金の大部分を預けて様子見の投資家もいるだろう。

今この時期に資産形成を進めるのか、資産防衛を貫くのか。いずれにしてもホームアセットバイアスに陥っていないか注意が必要である。

ホームアセットバイアスとは ?

資産形成・防衛をしたいなら知っておきたい「ホームアセットバイアス」とは ?
(画像=Watchara / stock.adobe.com)

「ホームアセットバイアス」とは、ホームアセット (自国資産) への投資配分比率が海外資産への配分比率を上回る状態を指す。リスクを恐れて円預金だけで資産を保有する場合も同様だ。

●なぜホームアセットバイアスに陥るのか ?

投資環境が整備され、欧米やアジアなどの世界各地の株式に投資したり、外貨預金で運用したりすることが容易な時代になったにもかかわらず、なぜホームアセットバイアスに陥ってしまうのだろうか。

まず挙げられる要因として、情報の非対称性がある。投資する際には、決算書やその企業に関するニュースで株式の売買を決定することも多い。海外企業の場合でも、各企業のホームページからIR情報をダウンロードしたり、海外のニュースを視聴したりすることは気軽にできるが、依然として言語の壁は残る。外国語で書かれた決算書を読み込んで投資判断を下すのは、多くの人にとってハードルが高い。その結果、母語で容易に情報を入手できる国内企業の株式に目が向いてしまうことになる。

さらに為替リスクも要因となる。たとえば外貨預金で高金利の通貨を運用すれば、円預金よりも高い金利収入が期待できる。しかしひとたび円高に振れると、せっかくの金利収入も相殺され、元本割れのリスクが出てくる。

一方、為替相場は円安に動く可能性もあり、この場合は為替益によって利益が上乗せされることもある。しかしながら、時として人には、思い込みや環境によって非合理な判断を下してしまう認知バイアスという心理現象が現れる。投資の世界では、この認知バイアスは利益の獲得よりも損失の回避を優先する傾向に働き、結果としてホームアセットバイアスにかかってしまう。

●ホームアセットバイアスはリスクになる ?

高度成長期やバブル期の日本であれば、国内のみの投資でも相対的に高い利益が確保できたかもしれない。しかし現在は、少子高齢化に伴う国内市場の縮小や社会の成熟化により、過去のような高い経済成長率は期待しづらい。

さらに自然災害の多い日本では、いつ次の災害が起こるかわからず、ホームアセットバイアスに陥っている状態は投資としてリスクが高いといえる。

年金積立金管理運用独立法人 (GPIF) もかつては資産の半分以上を国内債券で運用し、ホームアセットバイアスにかかった状態であった。しかし、現在は国内株式・国内債券・海外株式・海外債券それぞれ25%ずつを目安にし、国内対海外の比率が50対50になるようにポートフォリオを組んでいる。

このことからも明らかなように、国際分散投資を実践していくことは1つの投資モデルとして確立しているのだ。

国際分散投資を行う上での注意点

国際分散投資を行う際にも、いくつかの注意点がある。

まずは地域の分散である。米国ではダウ平均株価が史上最高値を更新しているが、だからといって米国だけに投資するのではなく、その他の国も投資対象に含めてバランスを整えることが賢明な選択だろう。

また、投資商品を分散することも鍵となる。株以外に、債券や外貨預金も利用し、各国の通貨で運用することも視野に入れながらリスクを管理する。

投資時期もドルコスト平均法を活用して、高値掴みをしないように長期的に投資することがリスク軽減に繋がる。

ホームアセットバイアスを正しく理解しリスク分散をしよう

国際分散投資には為替リスクが潜むため、価格変動リスクが存在するのは事実である。一方で、外貨の価格変動を恐れ、ホームアセットバイアスに陥った状態での投資継続もリスクとなり得ることを認識しなければならない。

まずポートフォリオを見直してホームアセットバイアスに陥っていないかをチェックしよう。その上で外国株や外貨預金を活用しながら、国際分散投資のスタンスでリスクの管理を進めていきたいところだ。

(提供:大和ネクスト銀行


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