生命保険の環境が著しく変化しています。2019年2月、全額を損金に出来るという触れ込みで販売されていた解約返戻率の高い法人保険が国税庁の指摘を受け販売停止となるなか、業界では「もう資産運用には保険を使うことができないのではないか」という声さえ聞こえてきます。実際のところ、生命保険は様々な局面において活用性の高いもの。特に富裕層にとって生命保険は、どのように位置づけると効果が高いのでしょうか。

富裕層に生命保険は不要か?

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(画像= Pormezz/stock.adobe.com)

人生には、上り坂と下り坂、そして「まさか」があるといわれています。生活費のほかにこれら突発的な出来事に対してかかるお金は、多くの人にとって著しい不安です。ただ富裕層にとっては、もしもの出来事に対しても対応できる経済力があるため、生命保険も不要であると考える人がいます。

生命保険は本来、現金で対処できないライフイベント、特にマイナスの出来事があったときに役立つものです。現金で対処できないことが少ない富裕層は、生命保険に加入する必要がありません。

これらはひとつの観点から見ると、正しい考え方といえるでしょう。ただ、お金があるからこそ、生活やライフイベントのなかで、向き合うことがあまり想定できないものもあります。代表的なものが相続です。相続は現金で承継するよりも、生命保険を上手に活用すると、とても効果が高い資産承継の手段です。

富裕層は保険を相続対策に活用できる。が、本当に正しいポートフォリオかどうかの見直しは忘れずに

被相続人が保険料を負担している場合、配偶者や子どものなかで相続人になった人は保険金を受け取れます。この保険金は相続税の課税対象となる一方、「法定相続人×500万円」の控除が発生するため、現金で相続をするよりもメリットがあります。

この相続人を受取人とした終身保険は、長らく認められている方法です。このときの価格基準は「解約返戻金」を使います。昨今の法人保険の問題において、解約前提で生命保険に加入することの是非が問われています。相続視点での保険活用にも影響がないとは断言できませんが、自身の相続を可能な限り早い段階で想定し、保険を始めとしたポートフォリオ構築に取り組んでいくようにしましょう。また、この保険金は分割資産ではないため、生前に被相続人が希望して契約した保険金の受取人が貰うことができます。遺産分割にとってこれはとても大きな特徴です。

当面は相続対策としての保険に至っても、節税保険をめぐる状況の変化で、保険会社各社の商品ラインナップや募集人からの説明がこれまでと変わる可能性があります。生命保険は加入こそ簡単ですが、毎月保険料を支払うという大きな買い物。その累計金額は自動車よりも高く、住宅購入に次いで人生で2番目に高い買い物ともいわれています。加入・見直すタイミングも含め、富裕層で余裕があるからこそ落ち着いて考えるようにしたいものです。

保険の購入を実際に検討するならまずは資料の取り寄せをしよう

日常生活に余裕があると、友人や隣近所など交友関係から紹介された保険商品を「このくらいの保険料であれば」と即決して加入してしまうことがあります。毎月繰り返し支払うもの、として保険料を見たとき、即決リスクはできるだけ回避したいもの。これは現時点の家計には余裕があっても同様です。

実際に保険を購入するにあたっては、資料を取り寄せ、熟考するようにしましょう。また募集人を含めた専門家への相談にあたっても、セカンドオピニオンを含め複数の専門家に相談することで、自身の判断に客観性を持つことができます。

保険を使った富裕層の資産管理はとても有効なものなので、一度立ち止まって考えることにより、リスクと向き合う。そのプロセスを大切にしていきましょう。