いまや米国株のETFを中心に、個人投資家か大きな注目を集めているETF。もともと「20世紀最大の発明」と称されるほどにETFへの評価は高く、専門機関の調査によると2020年8月末時点の世界のETF資産規模は約6.73兆ドル(日本円では約699兆円)を超え、驚異的なペースで成長しています。当記事でETFの基礎知識、ETFの選び方や組み合わせ方を学び、これからの投資活動に役立てましょう。
目次
ETFとは?その仕組みと基礎知識
ETFとはいったいどんな金融商品なのか、はじめに仕組みや基本について解説します。
商品性や仕組み
ETFは「Exchange Traded Funds」の略で、直訳すると「上場されている投資信託」です。つまりETFは投資信託の一種で、そのなかでも上場している銘柄群のことをいいます。上場しているということは株式と同じ扱いで、証券取引所が動いている時間はリアルタイムで価格が変動し、株式と同じ要領で売買ができます。
ETFは投資信託の一種ですが、大きな特徴は金融市場の指数と連動するように運用されていることです。金融市場にはそれぞれの市場の趨勢を示すための指数があります。たとえば、日本株が取引されている東京証券取引所には「日経平均株価」や「TOPIX」といった指数がありますが、これらの指数と連動するように運用されているETFがあります。
ETFの特徴
さきほども述べたように、ETFの最大の特徴は投資信託でありながら証券取引所に上場していることです。上場していることでリアルタイムな値動きがあり、それに応じて株式と同じ要領で売買が可能です。
日経平均株価やTOPIXは日本株の全体的な趨勢を知るための指数ですが、それ以外にもアメリカの「ニューヨークダウ平均株価」や「S&P500」「ナスダック指数」といったように、世界には数多くの指数があり、それに応じたETFがあります。
つまり、ETFに投資するということは、こうした市場全体に投資をしているのと同じ効果が得られるということです。個別株投資では株式投資の知識が必要になりますが、市場全体への投資であれば「この先は景気が上向いていきそうだ」といった漠然としたイメージでも投資ができるため、より初心者向きであるといわれています。
上場している銘柄数
ETFは優れた金融商品とみる投資家が多いので人気も高く、世界各国の証券取引所ではじつに多くのETFが上場し、取引されています。日本では232銘柄が上場しており、その数は右肩上がりに増え続けています。
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ETFにはどんな種類があるのか?
世界にはさまざまな金融市場があり、それぞれの市場の指数があります。指数の数だけETFがあるといっても過言ではなく、種類もさまざまです。ここではETFにはどんな種類があるのかを見ていきましょう。
日本で上場・取引されているETF
日本で上場・取引されているETFには、以下のようなカテゴリーがあります。
- 日本株(市場別、規模別、業種別、テーマ別)
- 外国株
- 債券
- 不動産
- 商品
- レバレッジ型、インバース型
それでは、個別に解説していきましょう。
・日本株(市場別、規模別、業種別、テーマ別)
日本の証券取引所に上場している株を対象とした指数と連動するETF群です。日本の取引所なので日本株については細かい分類があり、投資家の目的別にETFを使い分けることができます。
市場別というのは、東証のTOPIXや日経平均株価、東証マザーズ、JASDAQといった国内にあるそれぞれの市場の指数別のETFです。そのなかでもTOPIXと日経平均株価は知名度と人気度が高く、同じ指数を対象とするETFが数多く上場しています。
そのほかの規模別というのは、文字通り企業規模によってカテゴライズされた株価指数があるため、それを対象としたETFです。成長力のある中小企業に絞って投資をしたい場合などに有効です。業種別、テーマ別というのは、それぞれ業種ごとにカテゴライズされた株価指数や、特定のテーマ(高配当株など)の銘柄を集めた株価指数を運用対象としているETFです。
・外国株
世界各国の株価指数と連動するETFの銘柄群です。アメリカやヨーロッパなどの欧米諸国に加えて中国やインド、ブラジルなどの新興国、さらには「先進国の総合」や「新興国の総合」といった複数国の株式市場を対象にした指数と連動するETFもあります。外国株に投資をするにはそれぞれの国の市場にアクセスする必要がありますが、東証に上場しているETFであれば日本国内で外国株への投資が可能です。
・債券
日本の国債や外国政府の国債などと連動するETF群です。世界全体の債券価格やアジア諸国の債券価格、「日本を除く世界の債券」など、じつに多彩な指数があり、それぞれに連動するETFが用意されています。債券は安全資産の代表格なので利回りこそ低くなりますが、資金の一部を安全に運用したい場合に適しています。
・不動産
運用対象を不動産に特化している投資信託のことを「REIT(リート)」といいます。REITのなかには上場している銘柄があるため、REIT市場の趨勢を示すための指数があります。東証にはこうした指数と連動するETFも上場しており、最も有名なのが「東証REIT指数」と連動するETFです。そのほかにも海外のREIT市場の指数と連動するETFも上場しているので、海外の不動産市場にも投資が可能です。
・商品
ここでいう商品というのは、金(ゴールド)や銀、パラジウム、原油などの資源のことです。こうした資源価格や資源の先物価格と連動するETFも上場しているので、資源高が見込まれる場合や、金などの安全資産へ資産逃避を検討している投資家にとって有効性の高い銘柄群です。
・レバレッジ型、インバース型
レバレッジ型やインバース型というのは運用対象の名称ではなく、ETFの価格変動の特性を示しています。レバレッジ型というのは実際の値動きよりも大きく価格が動くETFのことで、たとえば「TOPIXブル2倍上場投信(1568)」というのはTOPIXと連動しているものの、ETFは2倍の値動きになるように運用されています。もちろんリスクは高くなりますが、投資効率を高めて大きく利益を出したい投資家向きです。
インバース型というのは相場の値動きと逆に動く特性を持っています。たとえば「TOPIXベア上場投信(1569)」はTOPIXが上昇すればETFの価格が下がり、逆にTOPIXが下落するとETFの価格が上昇するように運用されています。市場全体が下落トレンドになると見込まれる場合や、空売りではなく「ETFを保有」することで利益を狙いたい場合に有効です。
つみたてNISAで購入できるETFの種類は?
株式投資で利益を得ると所得税、住民税、復興特別所得税の合計20.315%が税金として発生します。これはETFにも適用されるので、ETF投資で利益が出たときのことを考慮しておきましょう。しかし、一定範囲まで運用益が非課税になる「NISA」制度をETF投資にも適用することができます。特にETFは中長期的な視野で積立投資をする人が多いので、ここではETFと「つみたてNISA」の関係について解説します。
つみたてNISAとは
つみたてNISAとは、NISAのなかでも積立投資向けに設けられている税制優遇制度です。毎年40万円までの投資で発生した利益に対する税金が非課税になるというもので、期間は最長で20年です。毎年40万円が20年間なので、合計すると800万円分までの運用益が非課税となります。
つみたてNISAで購入できるETFの種類
節税の観点からも活用したいつみたてNISAですが、すべてのETFに適用されるわけではありません。つみたてNISAの対象銘柄が限定されているので、この制度を活用して積立投資をする場合は以下のETFから選ぶ必要があります。
▽つみたてNISAの対象となっているETF ※()はコード
- ダイワ上場投信-トピックス(1305)
- ダイワ上場投信-日経225(1320)
- ダイワ上場投信-JPX日経400(1599)
- 上場インデックスファンド米国株式(S&P500)1547
- 上場インデックスファンド世界株式(MSCI ACWI)除く日本(1554)
- 上場インデックスファンド海外先進国株式(MSCI-KOKUSAI)(1680)
- 上場インデックスファンド海外新興国株式(MSCIエマージング)(1681)
こちらは2020年9月15日現在の対象ETFのため、今後変更になる可能性があります。投資の際には対象のETFでつみたてNISAを適用できるか事前にご確認ください。
ETFの選び方や組み合わせは?
ETF投資を始めるにあたって、具体的にどうすればETFを購入できるのか、どの銘柄を選べばいいのかという点が問題となります。ここではETF投資を始めるにあたり、特に重要なETF銘柄選びについて解説します。
東証に上場していればどこでも購入できる
当記事で紹介しているのは日本国内で上場しているETFなので、一般的な証券会社の口座であればどこでも手軽に購入することが可能です。海外のETFを購入するためにはその取り扱いがある証券会社を選ぶ必要がありますが、国内のETFは東証に上場しているので、日本株を購入するのと全く同じ感覚で問題ありません。
ETF選びの考え方
ETFを選ぶ際に注目したい項目として、以下の4つをポイントとしました。それぞれのポイントについて解説している部分に注目し、投資目的に合致しているかどうか確認してみましょう。
▽ETFを選ぶ際に注目する検討したいポイント
検討項目 | 検討のポイント |
購入価格 | ETFの価格が投資を検討している資金規模に見合っているかどうか。 積み立てをしていくのであれば、毎月購入できる金額であるか。 |
対象指標 | 今後も成長が見込まれる市場の株価指数であれば買い進めていく価値あり。そうでなければインバース型を選択するなどの投資戦略が求められる。 |
売買単位 | 売買単位が何口なのか、その売買単位でいくら必要になるのかを計算する。 (最低単位の購入に必要な資金がなければそのETFは検討対象から外す) |
信託報酬 | 同じ指数を対象としているETFでも信託報酬は異なるため、できるだけコストの安い銘柄を選ぶ。 |
GPIF(年金運用)の比率をもとに配分してみるのも一考
GPIFとは「年金積立金管理運用独立行政法人」という、年金の運用機関です。国民から預かっている年金は巨額の資金規模になるため、それを増やすために運用を行っています。ETFの銘柄選びや購入配分に迷う人は、このGPIFが採用している配分を参考にするのもひとつの方法です。
2020年12月現在、GPIFの資産構成割合は国内債券、外国債券、国内株式、外国株式という4つのカテゴリーに分類されており、それぞれ25%ずつの配分となっています。以前は国内債券と外国債券の比率が現在とは異なり、国内債券の比率が高められていました。しかし、いまの日本の超低金利背景から、比較的金利の高い外国債券の比率が増え、現在の25%となりました。
これを個人の投資に落とし込むと、たとえば100万円の運用で、それぞれのカテゴリーからETFを1つずつ選んで25万分ずつ購入するといったかたちです。
まとめ:種類が豊富で自分に合った戦略を立てやすいETFのメリットを活用しよう
多くの種類から選べ、それでいて運用コストが安いということで世界中の投資家から人気を集めているのは当然といえます。これからETF投資を始めてようと考えている人は、自分に合った投資配分や投資計画を立てることから始めましょう。証券会社選びも含めて始めていきたい人は、ETF売買のコストが比較的安いネット証券がおすすめです。
文・田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中