2020年、おうち時間が増えたこともあり、投資を始める人が増えています。いまは証券会社の店舗に行かなくても、ネット証券を使えば、オンラインで口座手続きもすぐにでき、少額から投資を始められるのです。代表的なネット証券10社のサービスを比較しながら、投資についての疑問点や注意点にもお答えしていきます。

目次

  1. 初心者が知っておきたいネット証券の基礎知識
  2. ネット証券比較の要チェックポイント
  3. ネット証券比較!購入金額20万円以下の取引が一番得なのはどこ?
  4. まとめ:ネット証券は手数料や口座開設コストが低く、サポートも充実している

初心者が知っておきたいネット証券の基礎知識

金融
(画像= filins/stock.adobe.com)

ネット証券を利用した投資についての基礎知識を、Q&A方式で見ていきましょう。

投資を始めるにはまず何が必要?

ネット証券で株式投資や投資信託を始めるには、口座を開設する必要があります。ネット証券の口座開設はインターネット上で手続きが完了します。申し込みにはマイナンバーや本人確認書類の提出が必要ですが、マイナンバーカードがあればカードを撮影してスマホで送信すればOKです。

口座開設にかかる手数料や管理料は?

口座開設は無料です。口座管理料も無料の証券会社がほとんどです。証券会社同士の顧客獲得競争は激しく、今後も口座維持にコストが発生する可能性は低いと思われます。

口座開設から何日後から取引を始められる?

口座開設手続きが終了すると、完了通知が届きます。たとえばSBI証券の場合、完了通知を「メールで受け取る」設定にすれば、パスワード設定のためのURLがメールで送信されます。アクセスして任意のパスワードを設定すれば、すぐに取引可能です。

ただし「郵送で受け取る」を選択すると完了通知が簡易書留郵便で届くので、メールよりも2~3日ほど取引開始が遅くなります。

「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」はどう選べばいい?

証券口座には「特定口座」と「一般口座」があり、特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」があります。

一般口座では、取引報告書が顧客に送付されないため、顧客自身で売買損益を計算して確定申告しなければなりません。海外居住などの特殊事情がない限り、一般口座にするメリットはほとんどありません。

特定口座の場合は、売買損益を証券会社が計算してくれます。さらに「源泉徴収あり」を選べば、利益が出た場合は証券会社があらかじめ20.315%の税金を差し引いた上で、残額が顧客に支払われます。そのためあらためて確定申告する必要はありません。「源泉徴収なし」を選んだ場合は、利益金額が記載された取引報告書が送付され、顧客が自ら確定申告して税金を納めます。

投資初心者であれば「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶのがもっとも簡便といえるでしょう。

複数の証券会社で証券口座を作ることはできる?

銀行と同じく、証券会社も複数の会社で口座を作ることが可能です。ネット証券では口座開設や維持のコストがかからないので、複数の証券会社で取引を行う投資家が多いようです。

ネット証券も会社によって扱う商品や、銘柄が異なります。特定の商品のみ取引手数料が無料になるというケースもあるので、商品によって口座を使い分ければ、投資効率の向上につながります。ただし、NISA(少額投資非課税制度)口座は1社しか持つことができません。

セキュリティは大丈夫?

サイバー攻撃による個人情報漏えいや、大量の仮想通貨がネット上で消失した事件などを耳にすると、オンライン取引に不安を感じる人もいるでしょう。しかし、ネット証券ではSSL/TLSという暗号化技術を採用しており、セキュリティはきわめて強力です。主要なネット証券のSSL/TLS桁数は128~256ビットで、悪意のある第三者が解読することは困難なレベルといわれています。

どの証券会社でも同じ商品が買える?

株や投資信託の取扱銘柄は、証券会社ごとに異なります。国内上場株はどの証券会社でも購入できますが、投資信託と外国株は証券会社によって扱っている銘柄が異なり、取扱本数も差があります。

米国株はほとんどのネット証券で購入でき、中国株を扱う証券会社も増えています。反面、欧州株や新興国株は扱う証券会社が限られます。投資信託も証券会社によって銘柄数に差がありますが、株式、債券、REITなど基本的なジャンルはどこの証券会社でも扱っているので、あまり気にするほどの差はなさそうです。

ネット証券でもIPO投資はできる?

非公開株式を投資家に売り出し、証券取引所に新規上場することをIPO(新規公開)といいます。上場により公開株となり、誰でも取引できるようになりますが、新規公開に際してはまずは公募価格を公表し、購入希望者を募ります。このプロセスを支援する主幹事証券と副幹事証券が毎度決められ、これらの証券会社には多くの株が割り当てられます。

IPO株は、公募価格よりも上場時の「初値」が高くなるケースがほとんどで、初値売りによる利益が見込まれます。そのため公募には応募が殺到しますが、割り当ての多い幹事証券に口座を持っていれば当選確率は上がります。

幹事実績は野村證券など大手店頭証券のほうが多くなっていますが、ネット証券が幹事になるケースも増えており、特にSBI証券が実績を伸ばしています。IPO投資を希望する人は、まずは幹事実績を確認することが重要です。

▽ネット証券比較ランキング

証券会社 手数料 少額投資 おすすめポイント
10万円 50万円 100万円
初心者におすすめネット証券1
SBI証券

無料
※1
手数料、IPO、外国株
全てトップクラス
初心者におすすめネット証券2
楽天証券

無料
※2
× 楽天ならではの
ポイント制度が充実
初心者におすすめネット証券3
松井証券

無料

1100円
× 手厚いサポートで
初心者でも安心
マネックス証券
110円

495円

1100円
米国株取扱数No.1
IPOの実績も◎
  1. ※2020年10月現在
  2. ※1. アクティブプランの場合
  3. ※2. いちにち定額コースの場合
  4. ※3. 買付は無料、売却のみ手数料がかかる。


ネット証券比較の要チェックポイント

ネット証券ごとにサービスは異なりますが、とくに注意すべきポイントがいくつかあります。順に見ていきましょう。

ネット証券のチェックポイント1:手数料

ネット証券の最大の魅力は、取引手数料の安さです。店頭証券に比べればネット証券各社はいずれも低い手数料水準となっていますが、約定金額によって多少の差は生じます。取引規模に適した証券会社を選ぶことで投資効率は向上します。

たとえば少額投資から始めようと考えているなら、10万円以下の手数料が安い会社を選ぶことで投資コストは小さくなるでしょう。一回ごとの手数料は100円前後と小さくても、年間を通せばそれなりの差が生じるので、取引頻度もあわせた判断が重要です。

ネット証券のチェックポイント2:アプリの使いやすさ

パソコンやスマホを使って取引するネット証券では、アプリの使い勝手も重要なポイントです。ほとんどのネット証券では、パソコン用のトレーディングツールとスマホ用アプリの両方を用意しています。パソコン用ツールでは、1つの画面で株価や板情報、チャート、マーケット情報、ニュースなどを確認しつつ、発注もできるようになっています。

スマホ用アプリは画面が小さいものの、タップやスクロールで画面を遷移することでパソコン用に負けない情報量を得ることができます。外出先で取引や株価を確認したい人には便利です。

ネット証券のチェックポイント3:サポート情報コンテンツの充実度

ネット証券のトレーディングツールやアプリには、銘柄選びに役立つ情報コンテンツが多数搭載されています。投資家に人気があるのは「会社四季報」「日本経済新聞」などです。DMM株では「株式新聞Web版」を読むことができます。また、楽天証券ではツールに搭載している「日経テレコン21」で日本経済新聞の記事を読むことができます。

既存の経済誌紙だけでなく、独自に提供している情報メディアも銘柄選びの参考になります。楽天証券の「トウシル」は、国内株、米国株、株主優待などに関する記事が充実していることで知られています。

ネット証券のチェックポイント4:ポイント投資などができるかどうか

最近、投資初心者を呼び込むきっかけになっているのが「ポイント投資」です。楽天スーパーポイント、Tポイント、Pontaポイントなどで株式や投資信託を購入することができます。手持ちのポイントが多く、投資に使いたい人は、そのポイントと提携している証券会社を選ぶ必要があります。資金を使う前にまずはポイントで投資を経験できるのもメリットといえそうです。

ネット証券比較!購入金額20万円以下の取引が一番得なのはどこ?

では、ネット証券で取引するにはどの程度の手数料がかかるのでしょうか。主要ネット証券10社の手数料とサービス内容を比較してみましょう。

▽主要ネット証券10社の投資金額別手数料(税込)比較表 IPO主幹事数は2019年の実績。

10万円以下 20万円以下 30万円以下 単元未満株 IPO主幹事数
SBI証券 99円 115円 275円 55円~ 7
楽天証券 99円 115円 275円
マネックス証券 110円 198円 275円 52円~
松井証券 無料※5 無料※5 無料※5 0.5%※1
auカブコム証券 99円 198円 275円 52円~ 5※4
LINE証券 176円※2 198円※2 484円※2 無料※3
SMBC日興証券 137円 198円 275円 20
DMM株 88円 106円 198円
岡三オンライン証券 108円 220円 385円 220円~
GMOクリック証券 96円 107円 265円

※1 最低取引手数料の設定はありません。
※2 売付のみ手数料がかかり、買付手数料は無料です。また、同一日に同一注文で複数の約定となった場合は、約定代金を合算し手数料を計算します。
※3 手数料は無料ですが、スプレッドが設定されています。
※4 グループ会社「三菱モルガンスタンレー証券」の実績です。
※5 50万円までは1日何回取引しても無料です。

この表の取引手数料は、1取引ごとの一般的な手数料です(松井証券を除く)。そのほかに定額コースなど別の手数料体系を用意している会社もあります。

SBI証券

ネット証券最大手で投資に関するほとんどの商品を扱っています。IPO主幹事数も多く、IPOに強い証券会社の1つです。「自動運転」、「人工知能(AI)」、「インバウンド」といったテーマを選ぶだけで、複数企業の単元未満株を組み合わせてポートフォリオを作れる「テーマキラー!」は、少額投資に向いたサービスです。

【主なツール・アプリ】HYPER SBI(パソコン)、SBI証券株アプリ(スマホ)
【ポイント】Tポイントで投資信託の購入ができます。SBI証券以外で貯めたポイントも利用可。
【サポート】口座開設サポートデスク、リモートサポートサービス、電話応対あり。
【定額コース】1日の約定代金合計100万円までは無料。200万円まで1,278円。以降100万円増えるごとに440円ずつ増加。

楽天証券

口座開設数はSBI証券に次ぐ多さを誇ります。楽天グループの総合力を生かしたサービスで、ショッピングで貯めた楽天スーパーポイントを投資に利用できます。楽天銀行と連携させると、よりメリットが大きくなります。

【主なツール・アプリ】MARKET SPEED(パソコン)、iSPEED(スマホ)
【ポイント】楽天スーパーポイントで、個別株、投資信託、バイナリーオプションに投資できます。
【サポート】リモートサポートサービス、パソコン出張サポート、電話応対、チャット応対あり。
【定額コース】1日の約定代金合計100万円までは無料。200万円までは2,200円。300万円は3,300円。以降100万円増えるごとに1,100円増加。

マネックス証券

IPOの抽選で、平等に当選のチャンスがある「完全抽選方式」を実施しているのが特長です。信用取引で自動的にロスカットしてくれる「みまもるくん」というサービスもあります。

【主なツール・アプリ】マネックストレーダー(パソコン)、マネックストレーダー株式スマートフォン(スマホ)
【ポイント】投資信託の取引で付与されるマネックスポイントを手数料に充当できます。
【サポート】パソコン出張サポートサービス、電話応対、チャット応対あり。
【定額コース】1日の約定代金合計100万円まで550円。100万円以上は300万円増えるごとに2,750円増加。

松井証券

50万円までの取引手数料が無料なので少額投資に向いています。デイトレードにも強く、「1日信用取引」の仕組みがあり、「デイトレ適正ランキング」というデータも発表しています。

【主なツール・アプリ】ネットストック・ハイスピード(パソコン)、株touch(スマホ)
【ポイント】松井証券ポイントで投資信託の積立をすることができます。
【サポート】口座開設サポートデスク、リモートサポートサービス、電話応対、チャット応対あり。
【定額コース】1日の約定代金合計100万円まで無料。100万円まで1,100円。200万円まで2,200円。100万円増えるごとに1,100円増加。1億円以上は11万円(上限)。

auカブコム証券

旧カブドットコム証券。現在は三菱UFJフィナンシャルグループになっているので、三菱モルガンスタンレー証券が主幹事をつとめるIPOの公募にも応募することができます。

【主なツール・アプリ】kabuステーション(パソコン)、カブボード(スマホ)
【ポイント】Pontaポイントで投資信託を購入することができます。
【サポート】パソコン出張サービス、電話応対あり。
【定額コース】-

LINE証券

スマホ証券の代表的存在です。徹底してシンプルな運営方法にすることでコストを抑えています。問い合わせがチャットで手軽に行えるなど、LINEのグループ企業にふさわしいフットワークの良さも魅力です。

【主なツール・アプリ】-
【ポイント】LINEポイントを証券口座の入金に利用することができます。
【サポート】チャット応対あり。
【定額コース】-

SMBC日興証券

三大店頭証券の一角で、ネット取引にも力を入れています。店頭証券だけにIPO主幹事数が多く、IPOを投資の主力に考えている人には有力な選択肢といえます。

【主なツール・アプリ】パワートレーダー(パソコン)、SMBC日興証券アプリ(スマホ)
【ポイント】dポイントをキンカブ取引(金額・株数指定取引)に利用することができます。
【サポート】リモートサポートサービス、電話応対、チャット応対あり。
【定額コース】-

DMM株

DMM.com証券の株式部門。手数料が安く、米国株に至っては手数料無料です。コスト意識が強い人に向いている証券会社です。

【主なツール・アプリ】DMM株PRO+(パソコン)、かんたんモード(スマホ)
【ポイント】DMM株ポイントが現金交換で口座に入金できます。
【サポート】電話応対、LINE応対あり。
【定額コース】-

岡三オンライン証券

岡三証券のオンライン子会社です。2020年オリコン顧客満足度調査でネット証券部門1位を獲得。ツールやアプリは「くりっく株365」と提携しています。

【主なツール・アプリ】リッチクライアント(パソコン)、スマートフォンアプリ(スマホ)
【ポイント】-
【サポート】口座開設サポートデスク、電話応対あり。
【定額コース】1日の約定代金合計100万円まで無料。200万円まで1,430円。以降100万円増すごとに550円ずつ増加。

GMOクリック証券

GMOグループの証券会社。親会社であるGMOインターネットの株主優待を利用すると、売買手数料が6カ月ごとに最大5,000円までキャッシュバックされます。

【主なツール・アプリ】スーパーはっちゅう君(パソコン)、iClick株(スマホ)
【ポイント】-
【サポート】24時間電話サポートあり。
【定額コース】20万円まで234円。30万円まで305円。50万円まで438円。100万円まで876円。200万円まで1,283円。300万円まで1,691円。以降100万円増すごとに295円増加。

※上記は税込手数料

まとめ:ネット証券は手数料や口座開設コストが低く、サポートも充実している

ネット証券は手数料水準が低く、口座開設・維持費もかからないため、初めての証券口座としては有力な選択肢といえます。店頭証券のようにアドバイスをくれる営業担当者はいませんが、情報提供や、電話・チャット対応などサポートも充実しているので、安心して投資を始めることができそうです。

手数料の面から証券会社を選ぶとすれば、1日の約定代金が合計100万円まで無料となっているSBI証券、楽天証券、岡三オンライン証券らが候補となりますが、1日100万円も大きな取引をしないというのであれば、ほかの証券会社も候補となるでしょう。選択基準は手数料だけではありません。投資スタイルに合った証券会社を選ぶようにしましょう。

※本記事は2020年12月25日時点の情報をもとに作成しています。実際の証券口座開設にあたっては、手数料などについて最新の情報を確認してください。

文・丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。