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過去の金融正常化期と比べ、足元の米国株は異常な割高

智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト / 大川 智宏
週刊金融財政事情 2021年6月15日号

 米国株の快進撃が止まらない。足元、インフレの進行から景気の過熱感が指摘され、金融政策の引き締めの観測が高まる中で株高が続く。6月4日引け時点でのS&P500株価指数は4,229ポイントと、今年5月7日につけた史上最高値である4,232ポイントに肉薄する。

 問題は、この未曽有の高値水準が持続可能なのかという点だろう。難しい議論ではあるが、現在の経済や金融政策と、米国株の水準について、過去の類似した局面をもとに比較すれば、見通しを読み解くヒントを得られる。そのカギとなるのは、金融正常化局面におけるプレミアムの適正水準だ。

 まず、足元の世界経済は、コロナ禍からの脱却が現実味を帯び、強い底打ち回復が期待される状態だ。米国を中心にすでに消費や雇用は急回復を見せ、市場ではその先の量的緩和の縮小(テーパリング)や利上げなどが議論され始めた。これに伴い、昨年末から年始にかけて米10年国債利回りが急騰し、現在も乱高下しながら1.5%台で膠着した状態が続いている。

 そこで、前回の引き締め期における米政策金利(FFレート)とS&P500指数の予想PER(株価収益率、12カ月先)の推移を比較し、現在の米国株市場に織り込まれるプレミアムの妥当性を検証したい。まず、コロナ前の景気回復期では、2014年1~10月までテーパリングが実施され、その後の15年12~18年12月に段階的に利上げが行われた。その間の予想PERは、テーパリング期こそ低い状態であったが、景気の回復で徐々に切り上がりを見せ、FFレートが1.5%に達した時期にピークを迎えた(図表)。その後、引き締めの効果や米中摩擦の発生などで過熱感が抑えられ、利上げが終了する18年末までに大幅な修正を見せている。

 この前回のテーパリングと利上げの期間を「金融正常化期」と定義すると、今回のコロナ禍からの正常化でも、程度の差はあれ類似した過程をたどる可能性が高い。そして、前回正常化時の予想PERの平均値(メインシナリオ)は16.5倍、最大値(楽観シナリオ)は18.8倍、最小値(悲観シナリオ)は14.3倍となる。6月4日現在の値は21.5倍なので、単純計算で米株価のメインシナリオは足元から23%減、楽観シナリオは13%減、悲観シナリオは33%減の修正余地が発生する。足元の予想PER算出に、利上げとの時間差を踏まえた2年先予想EPSを用いても20倍超となり、シナリオ別の調整幅が各々5%程度緩和されるだけだ。

 今年後半に引き締めの議論が本格化するにつれ、異常な緩和状態がもたらした割高感の修正圧力が高まる可能性がある。この空前のチキンレースから逃げる準備だけはしておいた方が賢明だろう。

過去の金融正常化期と比べ、足元の米国株は異常な割高
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