高額所得者や富裕層にはアウトドア愛好家が多いといわれます。本稿の前半では、こういった人たちがキャンプやアウトドアのとりこになる理由を考察し、後半では高額所得者や富裕層を中心に広がる上質なアウトドア「グランピングの世界」を解説しています。彼らの趣味とは一体どのようなものなのでしょうか。一緒に見ていきましょう。

30〜40代の高額所得者にアウトドア愛好者は多い

富裕層や高額所得者を虜にするラグジュアリーなアウトドアの世界を解説
(画像=Nomad_Soul/stock.adobe.com)

高額所得者や富裕層の典型的なアウトドア・スタイルといえば、高級SUVにハイエンドなキャンプ用品を積み込み、上質なオートキャンプ場に向かうというものでしょう。

この快適性とアウトドアを融合したスタイルを日本に定着させたといわれるのが、ハイエンドなキャンプ用品ブランドとして知られる「スノーピーク」です。同社の右肩上がりの売上推移を見ると、高額所得者のアウトドア愛好家がいかに増えているかが実感できます。

【スノーピーク売上高】(百万円)

2016/122017/122018/122019/122020/12
9,2229,91012,07014,26016,764

(出典:スノーピーク公式「連結業績ハイライト」)

高額所得者や富裕層の中でも、どのようなタイプの人にアウトドアは刺さっているのでしょうか。スノーピーク会長の山井太氏は、同社の売上の大きな割合を占めるロイヤルカスタマー(コアユーザー)の特徴として次のような内容を挙げています。

・知的好奇心が強い
・所得水準が高い
・子どもがいる
・30代から40代が中心
・都市部に住んでいる(首都圏、関西、名古屋など)
参考:山井太著 スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営(日経BP社刊)

以上のようなことから、アウトドアは高額所得者や富裕層のなかでもファミリー層と親和性が高いといえます。

高額所得者や富裕層がアウトドアのとりこになる3つの理由

着目したいのは、「なぜ高額所得者や富裕層がアウトドアのとりこになるのか」ということです。そこには次の3つの理由が挙げられます。

理由1:知的な人とアウトドアは相性がいいから

山井太氏は、アウトドアとは原始的な生活をするということであり、「普段の仕事や生活が知的でないと、アウトドアの面白さを理解できない側面がある」と著書で述べています。高額所得者は、知的な仕事でバリバリ稼ぎ、休日はアウトドアで五感を刺激するというようなメリハリのあるライフスタイルの人が多いのかもしれません。

理由2:家族の時間を気兼ねなく楽しめるから

富裕層や高額所得者の休日の過ごし方といえば、高級ホテルや高級レストランのイメージがあるかもしれませんが、子どもがいると食や空間を落ち着いて堪能するのが難しい面もあります。アウトドア空間であれば、家族の時間を気兼ねなく楽しめます。合わせて、子どもが自然に触れることで情操教育にもなるメリットもあります。

理由3:ワーケーションの浸透が追い風になった

コロナウイルス感染によって広まった「ワーケーション」もアウトドア人気にはプラス材料でしょう。ワーケーションとは「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語です。ワーケーションを利用して、高級リゾート地で仕事をしながらアウトドアを楽しむ、そんなライフスタイルの人が増えているのです。

贅沢にアウトドアを楽しむ「グランピング」がトレンドに

高額所得者や富裕層のアウトドアのトレンドとして、グランピングが広がっていることも見逃せません。グランピングとは「グラマラス(優雅な)」と「キャンピング」を組み合わせた造語です。一般的なグラマラスの意味は、「贅沢にアウトドアを楽しむ新しいリゾートスタイル」のことです。

以前から海外でトレンドだったグランピングが日本で認知されはじめたのは、2015年に星野リゾートが日本初のグランピング施設「星のや 富士」を開業してからだといわれています。その後、各地でグランピング施設が次々にオープン。一般社団法人全国グランピング協会が2020年に発表した調査レポートによると、「グランピング」をうたうアウトドア施設は全国に353ヵ所もあるとのことです。

このように、ここ5〜6年の間にグランピングが広がってきたことで、コアなアウトドア愛好家以外の高額所得者や富裕層もキャンプに親しむようになったと考えられます。

それでは話題性の高いグランピング施設をいくつか見てみましょう。

オーシャンビューのグランピング施設「スノーピークグランピング徳島小松島」

【施設概要】
所在地:徳島県小松島市中田町字東山95-3
客室数:9室(約60㎡の客室3タイプ合計9室)
運営会社:中山建設株式会社
URL:https://komatsushima-resort.com/

スノーピーク監修の国内4カ所目となるグランピング施設として、2021年4月に誕生したのが「スノーピークグランピング徳島小松島」(徳島県小松島市)です。

宿泊施設は、焚火を囲みながら時間を過ごせる宿泊者専用のラウンジ、そして、スノーピークのアイテムが揃ったオーシャンビューの客室などで成り立っています。キャンプスタイルのグランピングでは味わえない快適性を堪能することができるでしょう。

ソフト面では、シーカヤックなどのアクティビティーをプライベートビーチで体験できたり、トレッキングや収穫体験を通して周辺エリアの自然を間近に感じられたりといったアウトドア・プログラムが用意されています。

日本初のグランピング施設「星のや 富士」

【施設概要】
所在地:山梨県南都留郡富士河口湖町大石1408
客室数:40室
URL: https://hoshinoya.com/fuji/

前出の星野リゾートが日本で初めて開業したグランピング施設が「星のや 富士」です。この施設のコンセプトは「丘陵のグランピング」で、富士五湖の一つである河口湖を望む丘陵に沿ってテラスがレイアウトされているのが特徴的です。大自然との一体感に加えて独特の浮遊感を味わえます。

上質な宿泊施設を堪能できるだけでなく、独自色の強い滞在コンテンツを楽しめるのも星野リゾートの特徴です。

企画の一例としては、絶景と月光に包まれながらワインと料理を味わえる「グラマラス月光ディナー (開催期間2021年9月14日~11月17日)」 ラグジュアリーで安心な登山プログラムの「グラマラス富士登山 (2021年8月30日、9月1日、3日、6日の全4回)」などがあります。

マザー牧場が導入するグランピング施設「ザ・ファーム」

【施設概要】
所在地:千葉県香取市西田部1309-29
URL: http://www.motherfarm.co.jp/glamping/

お馴染みの観光スポットでもグランピングを経営に取り込むケースが目立っています。その一例が千葉県富津市のマザー牧場が立ち上げるグランピング施設「ザ・ファーム」です。

マザー牧場は、2019年の台風被害、2020年のコロナ禍などで逆境が続きますが、新たな魅力を発信するため、2021年6月から約1万平方メートルの敷地にグランピング施設を導入します。

最大の特徴は、計9つのテラススタイルから選ぶことができる点です。例えば、森に囲まれた雰囲気のフォレストテラス、SNS映えが期待できるハンモックテラス、南房総の山並みが一望できるパノラマテラスなど好みに合わせてセレクト可能です。

グランピング市場は2031年以降も拡大していく可能性が高い

市場調査を行う株式会社グローバルインフォメーションの調査レポートによると、グローバルのグランピング市場の規模は、2021〜2028年の間に約14%の年平均成長率で拡大していくと予想されています。日本国内でも同様に、グランピング市場が急拡大する可能性は高いでしょう。

グランピングは、「今までと違ったキャンプスタイルを楽しみたい」という好奇心旺盛なアウトドア愛好家に加えて、「快適かつ上質な空間にいながら自然を満喫したい」というインドア派も巻き込んでトレンドを超えたムーブメントになる可能性は十分あります。この流れにテクノロジーが加われば、アウトドアやキャンプにさらなる革新が起こるかもしれません。これから、私たちの想像を超えたアウトドアが楽しめることに期待しましょう。

(提供:Dear Reicious Online



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