セクターごとに異なる米国リートのパフォーマンス
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セクターごとに異なる米国リートのパフォーマンス

(FTSE「全米不動産投資信託協会指数」)

オールニッポン・アセットマネジメント 金融商品部 次長 / 坂根 学
週刊金融財政事情 2021年6月29日号

 新型コロナが世界中で猛威を振るった2020年、多くのリスク資産が一時、大幅な価格下落に見舞われた。米国の不動産投資信託(リート)の価格も、昨年3月下旬には年初来で約40%の下落となったが、その後は経済正常化期待の高まりから年後半にかけて回復基調を強め、今年初めにはコロナ前の水準を回復するに至っている。

 コロナ禍においては、図表のとおり、セクターごとのパフォーマンスに大きな違いが見られる。昨年3月下旬、米国リートの中で最も大きく下落したのはホテル・リゾートセクターで、一時、年初来で約70%の落ち込みとなった。新型コロナの感染拡大により、米国では昨年3月に国家非常事態宣言が発令されたほか、渡航制限や外出規制が世界中で実施された影響を考えれば、同セクターのリート価格が暴落したのもうなずける。小売りやオフィスセクターも大きく値を崩した。

 ヘルスケアセクターのリート価格も大きく下落したが、その中でも違いが見られた。医療用ビルや病院に特化した銘柄の下落率は比較的抑制された一方、高齢者向け住宅などの福祉施設については、コロナ禍を受けて施設への新規入居者数が減少したことから、大幅な下落となった。ただ、これらセクターのリート価格も現在はコロナ前の水準近くまで値を戻している。

 データセンターや物流セクターについては昨年3月時点での価格下落が小幅にとどまった上、反発も素早く、あっという間にコロナ前の水準を上回った。データセンターについては、テレワークの急速な普及による需要増もさることながら、折からのAI、5G、IoTといった情報社会への変革のタイミングと重なったことも価格上昇の背景になったと考えられる。また、ステイホームしながら消費ができるネットショッピングなど電子商取引の拡大によって、先進的な配送システムを備えた物流セクターでもリート価格は急回復した。これら以外に、都市部の集合住宅から郊外への移住者の増加に伴い、貸倉庫セクターの需要増加も顕著に見られている。

 長期金利の急激な上昇懸念や、テレワークの拡大によるオフィス需給の悪化、大手テナントによる店舗閉鎖など、不動産価格を巡ってはネガティブ材料も多い。しかし、強力な金融緩和政策や追加経済対策、ワクチン普及に伴う経済正常化期待を受けて、米国リート指数は、今年4月には過去最高値を更新し、上昇を続けている。

セクターごとに異なる米国リートのパフォーマンス
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(提供:きんざいOnlineより)