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ストック戸数減少で、築11~20年のマンションの需給は逼迫へ

都市未来総合研究所 主席研究員 / 清水 卓
週刊金融財政事情 2021年7月6日号

 東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県)の中古マンション市場は足元、回復軌道に乗っている。東日本不動産流通機構のデータによると、2020年春の緊急事態宣言発出時に成約件数、価格共に大きく落ち込んだ後、成約件数は夏以降に急回復し、コロナ禍以前の水準を上回る月が過半である。価格(成約単価)も21年5月まで前年同月比で13カ月連続の上昇を示している。過去に竣工したマンションの累積である「ストック戸数」との関係から見ると、中古マンション市場の需給の見通しについては今後、築年帯ごとに需給状況に差が出そうである。

 築年帯別の需給状況を見る指標に成約率がある。成約率は、成約件数を新規登録件数(売却のために登録された件数)で除したものだ。過去数年間、築年帯ごとに成約率の推移に大きな差があり、築6~10年の築年帯では20年の成約率が36.6%(15年は21.6%)と、数年来、急速に上昇して需給が逼迫している。

 その主因は売却候補となる新規登録件数が急速に減少していることにある。築6~10年では、新規登録件数は15年の3.0万戸から20年には1.4万戸へとおおむね半減している。さらに築6~10年のマンションのストック戸数を試算したところ、15年の47万戸から20年には32万戸へと3分の2に急減しており、ストック戸数の大幅な減少が新規登録件数の急減に影響しているとみられる(図表)。

 このようなストック戸数の急減は、07~08年ごろの不動産ファンドバブル期の大量竣工からその後の急減に至る新築分譲マンションの竣工の「山と谷」が、築6~10年の築年帯を過ぎて築11~15年に移ったことによるものである。

 図表からは、今後数年の動きとして、築11~15年のストック戸数はすでに減少を始めており、今後もしばらく減少を続けることが分かる。また、築16~20年では23年からストック戸数が落ち込み始めることが確認できる。足元において築11~15年、築16~20年の物件は成約件数が上位にあり、取得需要は旺盛である。ストック戸数の減少を背景に、売却候補である新規登録件数が減少すれば、築11~20年の築年帯では今後数年にわたって需給が逼迫し、価格を押し上げる方向に動くとみられる。

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