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予想利益の上振れで、日経平均は年末3万3,000円台へ

三井住友DSアセットマネジメント チーフストラテジスト / 石山 仁
週刊金融財政事情 2021年7月6日号

 年後半に向けた日本の株式市場を見通すに当たり、足元で注目している材料は、米連邦準備制度理事会(FRB)の正常化スタンス、国内の新型コロナウイルスのワクチン接種、4~6月期の日本企業の決算だ。

 まず、世界のリスク資産に影響を与えるFRBの正常化スタンスについては、7月下旬の米連邦公開市場委員会(FOMC)や8月下旬のジャクソンホール会議で、資産買い入れの縮小(テーパリング)の時期や進め方など、今後の米金融政策の方向性を確認することになるとみている。市場は、FRBのタカ派的なスタンスを織り込もうとしており、FRBが決断すれば、市場の不透明感はいったん解消しよう。過去においても資産買い入れを縮小させる局面で米株は上昇している。

 日本国内において、市場の関心事は新型コロナのワクチン接種がどこまで加速するかにある。6月24日現在、日本の接種率は23.3%(1回接種、人口比)となった(図表)。ここまでに約4カ月と、米国の2.7カ月に比べれば時間はかかっているが、接種スピードは上がる方向だ。弊社では、集団免疫が確保されるといわれる70%に達するのは10月第1週と試算している。ワクチン接種が広がれば、米国のように経済活動の再開と企業業績に対する自信につながり、日本においても市場センチメントの好転に寄与しよう。ただ、7月23日~8月24日に開催される東京五輪・パラリンピック期間中、変異株の感染拡大が懸念される。

 菅義偉首相はパラリンピック閉会後の9月の衆議院解散を想定しているとみられるが、新型コロナ対応を重視して10月以降の解散の可能性もある。東京五輪・パラリンピックの安全・安心な運営やワクチン接種の加速化が確認されれば、政権の安定度も増し、株式市場にはプラスとなろう。

 さらに、米国では7月上旬から、日本では7月下旬以降から発表される4~6月期の企業決算も、日本株の年後半の帰趨を占う。弊社は、欧米や日本におけるワクチン接種の加速を受けて、日本企業が過去最高益を更新する時期を22年度から21年度に前倒しした。集団免疫の獲得が期待される10月にも予想利益が大幅な伸びとなる可能性がある。米国での経済成長の加速に加え、年末から来年にかけて欧州や日本の回復も期待でき、輸出企業にとっては大きな追い風となる。非製造業の回復期待も膨らむだろう。4~6月期決算発表、10月以降の年度上期の決算発表を経て、予想利益の上振れが見込める。日経平均株価は9月末で3万2,000円台、12月末で3万3,000円台を目指すと予想する。

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