コロナ禍での雇用悪化は女性の非正規が中心に
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コロナ禍での雇用悪化は女性の非正規が中心に

(総務省「労働力調査(基本集計)」)

日本総合研究所 調査部 マクロ経済研究センター 研究員 / 小澤 智彦
週刊金融財政事情 2021年7月13日号

 新型コロナの流行で、わが国の雇用環境は大きな影響を受け、2020年度の雇用者数は前年度から58万人減少した(総務省「労働力調査」)。もっとも、その影響は一様ではなく、雇用形態や性別、業種などの属性によって異なる。

 コロナ禍での最大の特徴は、非正規雇用が20年度に97万人も減少し、大打撃を受けたことである。非正規雇用はもともと景気変動の影響を受けやすい。これに加え、外出自粛や営業制限の影響で、パートやアルバイトが多い対面サービス業(飲食、宿泊、娯楽など)の経営が大きく悪化したことも、非正規雇用の減少につながっている。

 特に女性の非正規雇用は、アベノミクスが本格的にスタートした13年度以降で初めて減少した(図表1)。女性の割合が多い対面サービス業のパート・アルバイトで解雇や求人減少が見られ、昨春の小中学校の休校時には、家事や育児の多くを担う女性も離職を強いられた。「宿泊業・飲食サービス業」の雇用者数は19年度に363万人いたが、うち半数以上に当たる195万人は非正規の女性であり、20年度にはそれが22万人減少した(図表2)。

 対照的に、正規雇用は増加した。なかでも正規雇用の女性は、19年度より36万人増加し、増加幅も13年度以降で最大となった。この動きを業種別に見ると、医療・福祉の増加が前年度比12万人と最も大きい。医療・福祉は高齢化による需要の増加で働き手の確保が課題となっていることから、女性の正規雇用がコロナ前から増加基調にあった業種である。さらに、コロナ対応による医療現場のマンパワーの逼迫も、雇用の押し上げにつながったと考えられる。

 アフター/ウィズコロナに向けた産業構造の変化やテレワークなど新たな働き方の定着を踏まえると、経済が回復局面へ移行しても、仕事内容や働き方の変化が企業と雇用の間でミスマッチを生む可能性がある。コロナ収束後における雇用環境の改善のためには、成長分野のスキル習得を促す職業訓練の充実などが求められよう。企業においても、労働者の職務の明確化など雇用慣行の見直しや、テレワークの活用など柔軟な職場環境の提供が必要となる。

コロナ禍での雇用悪化は女性の非正規が中心に
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(提供:きんざいOnlineより)