2021年7月1日に発表された路線価では、名古屋市を含む愛知県の不振が鮮明でした。全国平均と比較しても、愛知県・名古屋市の地価は大きく下落しています。この地価下落の流れを名古屋で不動産投資やマンション経営をしたい人はどう捉えればよいでしょうか。名古屋の不動産マーケットの現状と展望を整理します。
名古屋の「商業地の地価とマンション市場は別モノ」と考えるべき
現在の名古屋の不動産マーケットを見るとき、意識したいのは「商業地などの地価とマンション市場を区分けして考えること」です。例えば、名古屋市内の商業地の地価が下落しているという情報に触れて、ほぼ同じエリア、あるいは近接するエリアにあるマンション価格も不振ではないかと連想するのは避けたいところです。
2021年7月時点では、同じ名古屋の不動産でも「商業地などの地価とマンション市場はまったくの別モノ」なのです。次項からは、「商業地などの地価」と「マンション市場」がどのような状況にあるかを確認していきます。これらを把握したうえで、名古屋での不動産投資やマンション投資を検討するのが賢明です。
名古屋市内の「商業地などの地価(路線価)」の現状
はじめに、名古屋市内の「商業地などの地価」を2021年7月1日に発表された路線価で見ていきます。路線価は公道に面した土地の「毎年1月1日時点」の評価額です。路線価は相続税・贈与税の算定に使われるほか、金融機関の担保評価にも用いられています。
まず、愛知県の平均路線価で見てみると、前年比1.1%下落しています。この1.1%という下落幅は東京都の平均路線価とまったく同じですが、全国の平均路線価の前年比0.5%下落を0.6%上回っています。
名古屋市内にさらにフォーカスすると、下落幅が-1.3%と大きくなります。つまり、全国や愛知県の平均よりも下落圧力が強いということです。
名古屋市の各税務署管内の最高路線価(主に商業地・繁華街など)は、計7カ所中6ヵ所が前年比を下回っています。
しかも「中区栄3」と「熱田区金山町1」の路線価に至っては前年比6%超という大幅な下落率となっています。ほかの4ヵ所の下落エリアも全国平均および愛知県平均を上回る下落率になっています(下記の表参照)。
※最高路線価とは、あるエリア(都道府県や税務署管内など)の路線価のなかでもっとも評価額の高い路線価のことです。
税務署 | 所在地 | 変動率 |
---|---|---|
名古屋中村 | 中村区名駅1 名駅通り | ▲ 1.3% |
名古屋中 | 中区栄3 大津通り | ▲6.8% |
名古屋東 | 東区久屋町8 久屋大通り | 0.0% |
名古屋西 | 西区牛島町 広井町線通り | ▲ 2.2% |
熱田 | 熱田区金山町1 新尾頭金山線通り | ▲6.4% |
千種 | 千種区今池1 広小路通り | ▲1.3% |
名古屋北 | 北区大曽根3 名鉄大曽根駅前通り | ▲2.3% |
2021年分の路線価発表後の主要メディアの記事見出しを抜き出しても、名古屋市を含む愛知県の路線価がコロナ禍で逆境にあることがわかります。
【日本経済新聞】
記事タイトル:中部路線価、11年ぶり上昇ゼロ 3県の35地点
※上記の「中部」とは愛知、岐阜、三重の3県を指します。
【朝日新聞】
記事タイトル:愛知の最高路線価9年ぶり下落 コロナ禍で上昇地点なし
【中日新聞】
記事タイトル:最高路線価、14地点で下落 コロナ影響、繁華街で鮮明
※上記の「14地点」とは愛知県内の最高路線価ポイントのことです。
名古屋市内の「マンション市場」の現状
各メディアが名古屋市・愛知県の路線価が低調だったことを伝えた翌日、日本経済新聞では「名駅周辺マンション、10年で2倍に上昇 用地奪い合いも」の見出しで、愛知県・名古屋市内のマンションの好調ぶりを報じています。
この記事では、豊橋駅周辺や名古屋市内の新築マンション市場にフォーカスし、具体的なマンション名をいくつかあげて、販売開始直後の新築マンションの売れ行きや販売間近のマンションの反響が「想定以上」であることをくわしく伝えています。
加えて、同記事では2021年1〜5月の名古屋市内の新築マンション平均価格が10年間で約4割も上昇していることを紹介(新東通信調べ)。
さらには、不動産投資家の話をもとに、名古屋駅近くの好立地のマンション価格が10年間で2倍になったこと、新築マンション販売の好不調のバロメーターとなる売り出し月の契約率が5ヵ月連続で70%超(中部3県)など、名古屋市内のマンション市場の好材料を列記しています。
名古屋市内の「商業地などの地価」「マンション市場」の展望
では、ここまでお話してきた「商業地などの地価」と「マンション市場」の内容をもとに、2021年下期以降の名古屋市内の不動産マーケットの展望を考えていきます。
名古屋市内の「商業地などの地価」の展望
名古屋市内のテナントビルを購入・経営したいという人にとっては「商業地などの地価」の行方が気になるところでしょう。先に見たように、長期的に右肩上がりだった名古屋市内・愛知県内の路線価は9年ぶりの下落となりました。
愛知県内の2021年分路線価の動向を伝える日経・朝日・中日の各紙は、地価が不調の原因を「コロナ禍の影響」と報じています。それ以外の原因に対する言及は見られません。ということはコロナ禍がある程度収束してくれば、名古屋市内の地価は揺り戻しがある可能性が高いということです。
問題はどのタイミングで再び地価上昇に転じるかです。考え方の一例として、日本経済新聞(2021年7月5日付)では、名古屋市中心部の商業地の地価は「見通しは厳しい」としながらも、下記の2つを理由に「一筋の光明も見え始めている」としています。
・名古屋市内百貨店の高額品や衣料品などの直近の消費が伸びている
・名古屋市繁華街(栄地区)の賃料が下げ止まっている
このような状況のなか、本格的な回復が始まってから名古屋への投資を始めるのか。あるいは、回復を見込んで一足先に名古屋への投資を始めるのかについては、投資家それぞれで判断が分かれそうです。
名古屋市内の「マンション市場」の展望
前出のように、名古屋市内のマンション市場は約10年という長期スパンで見ても、コロナ禍という短期スパンで見ても極めて好調です。
マンション投資をする人にとってこの状況は追い風・安心材料と考えられ、このまま好調が持続すればインカムゲイン(家賃収入)にプラスして、キャピタルゲイン(売買差益)も期待できる可能性があります。
また、コロナ禍がある程度収束してくれば、商業施設やホテルなどとの用地争いが激しくなりそうで、これも名古屋市内のマンション価格を押し上げる要因になり得ます。
ただし、マンション価格が好調だからこそ、物件購入時に高値つかみになりやすい局面ともいえます。これから名古屋市や愛知県内でマンション投資を始めたい人は、やみくもに物件を探すのではなく、適正価格(相場)で物件を提供してくれる不動産業者を見つけることが先決かもしれません。
3枚のカードが揃うと、名古屋の不動産マーケットはより強く
今後の名古屋の不動産マーケットの注目ポイントは、やはり「商業地の地価」がどうなるかです。繁華街の地価が上昇トレンドに転じることは、マンション市場にもよい影響を与えそうです。もうひとつの注目ポイントは、静岡県との調整が進まず、ペンディングになっているリニア中央新幹線の工事です。朝日新聞では「2027年開業は絶望的」と報じています。
「マンション市場の好調」という手持ちカードに「商業地の地価上昇」「リニア計画の進捗」という新たなカードが加わって、名古屋の不動産マーケットが無双状態になるのかを見守りましょう。
(提供:Dear Reicious Online)
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