ドイツ長期金利、半年程度マイナス圏の横ばい推移に
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ドイツ長期金利は半年程度マイナス圏の横ばい推移に

T&Dアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 兼 ファンドマネジャー / 浪岡 宏
週刊金融財政事情 2021年9月7日号

 ドイツの長期金利は、6月下旬から8月上旬までの間に0.3%を超える低下を見せた。今後の推移について、①米長期金利、②ユーロ圏の5年先スタート5年物インフレスワップ・フォワードレート、③ドイツの経済政策不確実性指数──の3指標から考えてみたい。ドイツ長期金利の前月差と、各指標の前月差の正負符号一致率(または不一致率)は相応に高く(同方向への推移が多いほど正負符号一致率は高くなる)、関係性が深いとみられるためだ。

 ①は、ドイツ長期金利と動きが似ており、正負符号一致率(2010年以降。以下同じ)は76%と高い。これまで力強かった米経済指標は足元で強弱入り混じる状況となっている。指標の弱さの背景には、コロナ変異株による感染拡大への懸念など一時的なものもあるとみているが、経済のピークアウトという可能性もあり注意が必要だ。一方で労働市場では、6月の求人件数が過去最高を更新するなど良好な指標も見られ、今後、経済全体に明るさが戻る可能性も否定できない。こうしたなか、米長期金利はこの先半年間は横ばい圏での推移にとどまると予想する。

 ②は、期待インフレ率の目安であり、ドイツ長期金利との正負符号一致率は68%と高い。ワクチン接種による経済正常化が進む中で振れを伴いながらも上昇基調で推移しており、原稿執筆時点では1.6%台となっている。過去5年間を振り返ると、1.8%程度の水準が実質的な上限となっている。

 しかし、今回はそれを上回る可能性もあるだろう。欧州中央銀行(ECB)が7月に示した戦略見直しでは、これまで「2%弱」としていた物価目標を、上振れも許容する「2%」と明確化したことでインフレ率の上振れ余地が生じた。同フォワードレートにおいても上値メドは高まったと考えられ、年内は2%程度まで上昇するとみている。

 ③については、ドイツ長期金利との正負符号の「不一致率」(注)は62%だ。経済政策の不確実性が高まると、「安全資産」とされるドイツの長期金利に低下圧力がかかる傾向がある。ドイツでは9月26日に総選挙が行われる予定であるが、一部世論調査によると、現与党のキリスト教民主同盟(CDU)・キリスト教社会同盟(CSU)陣営の支持率が過去最低となるなど、不透明感は増している。今後、さらに同指数は上昇するとみており、金利の重しとなる可能性がある。

 これらの材料を総合的に判断すれば、これから半年程度、ドイツの長期金利はマイナス0.65%~マイナス0.15%横ばい圏での推移にとどまるとみている。

ドイツ長期金利、半年程度マイナス圏の横ばい推移に
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(提供:きんざいOnlineより)