介護費用はいくら?迫り来る親の介護へ備えるためには
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自分の親にはいつまでも元気でいて欲しいものだが、いずれ「介護」を必要とする時期が訪れる可能性は高い。「どのような介護が必要となるか」など、実際にその時にならないとわからないことも多いが、介護の種類や大まかな費用を知っておくことで、ある程度心の準備ができるだろう。

介護サービスの種類

まずは介護の種類について見てみよう。「介護」は大きく分けると、「在宅介護」と「施設介護」がある。

在宅介護サービスの種類

自宅で介護を受けることができるため、要介護者が住み慣れた環境で生活を送れる点が最大のメリットだ。それぞれのサービスについて簡単に説明したい。

  • 訪問介護
    要介護者の自宅にホームヘルパーが訪れ、要介護者のための普段の生活援助・身体介護を行うサービスである。要介護1〜5の認定を受けた人が利用できる。具体的な援助とは、食事や掃除、洗濯のほか、入浴、トイレ、服の脱ぎ着、買い物などである。要支援1~2の認定を受けた人向けのサービスもあるが、利用できるサービスは運動機能維持し、要介護状態になることを防ぐ目的としたリハビリテーションなどのサービスに留まる。

  • 訪問入浴介護
    寝たきりの状態で入浴できない、お風呂が狭く家族のサポートが難しいといった場合に利用できるサービスで、専用浴槽を使って入浴する。要介護1〜5の認定を受けた人(要支援1〜2は条件付き)が利用でき、医師からの入浴許可が必要だ。

  • 訪問看護
    看護師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が要介護者の自宅を訪問し、さまざまな世話やアドバイスを行うサービス。要支援1〜2、要介護1〜5の認定を受けた人が利用できる。要介護者の疾患・年齢によって介護保険、医療保険のどちらが適用されるかが決まる。

  • 訪問リハビリテーション
    リハビリの専門家が要介護者の自宅を訪問し、病状や症状を観察、心身機能の改善・維持を図ってくれる。要支援1〜2、要介護1〜5の認定を受けた人が利用でき、リハビリを受けに行けない状態だったり、本人が積極的ではなかったりする場合に活用できる。

  • 短期入所
    短期間(連続最長30日)施設に入所できるサービスで、介護者が仕事の関係で自宅を空けるケースや体調不良など一時的に介護できないケースで活用されることもある。要支援1〜2、要介護1〜5の認定を受けた人が利用できる。

介護施設や類似施設の種類

しかしながら、さまざまな事情で在宅介護が難しい家庭も少なくない。特に介護が長期化すると、介護する側の精神的・肉体的負担が大きくなる。そこで、以下のような入居型施設が利用され施設介護やサービスが行われている。家族の負担を減らすと同時に、世話やサポートを受けられるため、利用者の安心感も増すだろう。

  • 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
    常に介護が必要な高齢者を対象とする公的施設。要介護3〜5の認定を受け、介護が必要で在宅での生活が難しい高齢者が入居できる。入浴や食事など日常生活上のサポートや、機能訓練、療養上の世話などが受けられる。一般に「特養」と呼ばれている。

  • 介護老人保健施設
    一般に「老健」と呼ばれる。在宅復帰を目標に、リハビリテーションや医療、介護を受けられる公的施設。要介護1〜5 の認定を受けた人が入居できる。法令で定められた入居期間はなく、原則として3~6ヵ月、長くて1年とされているが、リハビリの進捗や身体の回復具合、在宅復帰した際の家族の受け入れ態勢が整わないといったことから在宅復帰できないケースもある。

  • 介護療養型医療施設(介護医療院)
    長期にわたる療養が必要な高齢者を対象とする公的施設。要介護1〜5の認定を受けた人が入居できる。可能な限り自宅で自立した生活を送れることを目標に、介護や機能訓練だけではなく医療ケアが必要な高齢者が入所できる。そのため、医師・看護師が常駐している。

  • ケアハウス(軽費老人ホームC型)
    家庭環境や経済的な理由で家族との同居が難しい高齢者向けの比較的低額な施設。自立して生活できる高齢者にサービスを提供する「一般型」と、要介護の高齢者が訪問介護やデイサービスなどを利用しながら生活する「介護型」がある。一般型は自立~要介護3程度、介護型は要介護1〜5 の認定を受けた人が入居できる。地方自治体や社会福祉法人などが運営する。

  • 介護付き有料老人ホーム
    常に介護を必要とする高齢者が居住するための民間施設。介護サービス計画に基き、ホームが提供する「特定施設入居者生活介護」、つまり入浴・排泄・食事等の介護、その他の日常生活や療養に必要な世話、機能訓練を利用できる。主に、「介護専用型」「混合型」があり、介護専用型は要介護1〜5、混合型は自立~要介護5の認定を受けた人が入居できる。

  • 住宅型有料老人ホーム
    比較的介護度が低い高齢者が生活支援のサービスなどを利用しながら、必要に応じて別途介護サービスを契約して利用する民間の居住施設。自立~要介護5の認定を受けた人が入居できる。

  • グループホーム
    認知症と認定された高齢者対象で「認知症対応型共同生活介護」を行う専門施設。介護スタッフを含めた少人数で共同生活を送りながら、家庭的な環境や地域住民との交流下で、日常生活上のサポートや機能訓練を受けられる。要支援2〜要介護5の認定を受けた人が入居できる。

  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
    サ高住は介護保険適用内の特定施設と、介護保険適用外の非特定施設に分けられる。一般的には介護保険適用外で、サービスは安否確認や生活のアドバイス程度にとどまり、通常の住居のように独立したスペースで生活を送ることができるシニア向けのバリアフリー賃貸住宅だ(介護サービスを受けたい場合は別途の契約が必要)。自立~要介護3程度の高齢者が利用できる。一方、介護保険適用内になると、特定施設で有料老人ホームと同様の態勢を整えているため介護サービスが受けられる。対象は自立~要介護5の認定を受けた人となっている。

介護が必要な平均期間と介護施設、サービスを利用する場合の費用

生命保険文化センターが2018年に実施した「生命保険に関する全国実態調査」の結果によると、介護期間は平均4年7ヵ月。最も多いのは4~10年(28.3%)で、10年以上(14.5%)という人も少なくない。6ヵ月未満という短期介護は6.4%であり、1割にも満たない。

特に介護が中~長期化すると想定した場合、やはり気になるのは費用である。介護費用は必要な介護の程度、在宅を選ぶか施設を選ぶか、どのような施設を選ぶかにより大きく差が出る。費用については厚生労働省の介護サービス情報公表システムで概算の金額を知ることができるので、参考にするのがよいだろう。

介護が必要になった高齢者を社会全体で支える介護保険制度

介護保険制度とは

高齢化が進む日本において、介護が必要になった高齢者をその家族だけではなく、社会全体で支え合う仕組みとして、2000年に介護保険法が施行された。そして、介護を必要とする方々に介護サービスの費用を給付するのが介護保険だ。後述する支給限度額内で利用すれば自己負担額は1〜2割とされている。介護サービスを利用する以外にも福祉用具の購入、レンタルや住宅の改修費用、介護タクシー利用費などの介護諸経費にも介護保険が適用されるケースがある。ただし、適用を受けるためには申請が必要であったり、適用要件が細かく定められていたりするので注意が必要だ。

要介護度別の支給限度額について

介護保険には月々の要介護度別の支給限度額が決められている。ここでは、支給限度額について触れていきたい。なお、1単位当たりの金額は地域やサービスの種類によって異なるが、下表は令和元年11月に発表された世田谷区の支給限度基準額をもとに1単位=10円で計算している。

要介護度 1ヵ月当たり
支給限度額
要介護1 167,650円
要介護2 197,050円
要介護3 270,480円
要介護4 309,380円
要介護5 362,170円

参照:世田谷区「支給限度基準額」をもとに(株)ZUU作成

しかし、支給限度額を超えた場合は、超えた分を全額自己負担しなければならない。

介護保険適用外の施設やサービス

上記で紹介した介護サービスのうち、介護保険の適用を受けることができない施設やサービスがある。

例えば、生活支援のみを行う住宅型有料老人ホームや自立して生活ができる人のみを対象としている有料老人ホーム、介護サービスを提供しないサービス付き高齢者向け住宅や経費老人ホーム、介護の必要は無く経済的に在宅生活が困難な高齢者を対象とした養護老人ホームは介護サービスが提供されない施設であることから保険の対象外となる。

また、利用者家族の食事の用意や草むしりなどの介護サービス利用者本人の援助とならないもの、利用者の話し相手や旅行の付き添いなどの日常生活上必要でない援助についても保険の対象外となる。

介護保険制度以外の制度

介護保険制度以外にも費用面で手助けになるものもある。

例えば、「介護サービスは医療費控除の対象にならない」と思っている人もいるかも知れないが、在宅・施設を問わず対象になるものもある。また、介護保険と医療保険による介護費用と医療費の年間の自己負担が一定額を超えた場合、申請すれば超過額が「高額介護合算療養費」として医療保険・介護保険から支給される。

ここで詳しい適用要件についての説明は省略するが、少しでも介護費費用を抑えたいと考えている人は、詳しく調べてみるとよいだろう。

親の介護について「自分の親は、まだまだ大丈夫だろう」と思っている方も多いだろう。しかし介護が必要となるタイミングは突然やってくるものであり、あらかじめタイミングを予測することは困難だ。いざ親の介護が必要になった際に慌てないようにするため、親の希望を聞いたり、資金計画を立てたりする話し合いの場を設け、心の準備をしておくのがよいだろう。

(提供:manabu不動産投資

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