不動産投資の対象となる物件が新築の場合、不動産取得税を節税することができます。なぜなら不動産取得税には控除の軽減制度があるからです。今回は、取得した物件が新築のときに使える不動産取得税の控除制度について解説します。

不動産投資に必ずかかる不動産取得税とは

不動産投資が新築だと使える「不動産取得税」の控除とは
(画像=takasu/stock.adobe.com)

最初に不動産取得税の内容を確認しましょう。

不動産取得税は「土地や建物の取得時にかかる税金」

不動産投資を行うと不動産を購入することになるため、不動産取得税がかかります。購入や新築・増改築、贈与などで土地や建物を取得したときに1回のみかかる税金です。不動産を取得した人が申告と納税をします。有償・無償や登記の有無に関係なく不動産を取得したらすべて課税対象です。ただし相続など一部の取得形態については、非課税となっています。

不動産取得税の計算式

不動産取得税の税額は、以下の式で計算します。

・課税標準額×税率

課税標準額は、建物や土地の固定資産税評価額となるのが一般的です。ただし新築や増改築については、固定資産税と違って減価が行われません。そのため実際に課税標準とされる価格は、固定資産税の課税標準の金額よりも少し高くなります。さらに取得した不動産が建物の敷地となる宅地や宅地と同様の評価をされる土地の場合、課税標準額は「固定資産税評価額×2分の1」です。

つまり賃貸アパートやマンションの土地は、固定資産税評価額の半分を基準に課税されます。なおこの「固定資産税評価額×2分の1」という措置は、2024年3月31日までです。税率は、取得した不動産の内容によって次のように変わります。

  • 取得した不動産が土地か住宅用の建物の場合:3%
  • 取得した不動産が非住宅用の建物の場合:4%

投資対象の不動産が居住用アパートやマンションであれば土地も建物も税率は3%になります。しかし店舗用や事務所用となる場合、税率は土地で3%、建物で4%となるため注意しましょう。なおこの3%の税率も2024年3月31日までの措置となっています。

投資物件が新築だと不動産取得税の控除が使える

不動産投資の種類を選べば税額計算の段階で不動産取得税の負担を軽減できます。しかし投資用物件を「新築」にすると他にも控除が利用できる軽減制度があるため、さらに節税することが可能です。賃貸用として購入した居住用アパートやマンションが新築の場合、不動産取得税は以下のような控除を適用できます。

建物

建物については、1,200万円の控除を適用することが可能です。税額計算は、以下のようになります。

・(建物の固定資産税評価額-1,200万円)×3%

ただし賃貸物件の床面積には、以下の条件があります。

  • 一戸建て:50平方メートル以上240平方メートル以下
  • 区分所有アパートやマンション:40平方メートル以上240平方メートル以下

いずれも登記上の床面積ではなく実際の床面積で判定します。共用部分は「共用部分の床面積×専有部分の床面積の割合」で計算したうえで判定の床面積に含めるようにしましょう。区分所有については、独立した区画ごとに控除額を差し引きます。もし購入した賃貸アパートやマンションが認定長期優良住宅の場合は、控除額が1,300万円です。

土地

新築の投資物件で不動産取得税が軽減されるのは、建物だけではありません。建物の敷地となる土地の不動産取得税も節税できます。先述の建物を購入すると土地にかかる本来の不動産取得税から以下のいずれか高いほうの金額が控除できるのです。

  • 4万5,000円
  • (土地1平方メートルあたりの固定資産税評価額×2分の1)×住宅の床面積の2倍×住宅の取得持分×3%

なお「住宅の床面積の2倍」は、1戸あたり200平方メートルが上限です。この控除制度を活用すればどんなに評価額の低い土地でも4万5,000円は、不動産取得税を抑えられます。ただし土地と住宅それぞれの取得時期が一定期間内でないと適用できません。土地の控除については、取得時期に関し以下のような条件があります。

【土地を先に取得した場合】

以下の両方の条件を満たしていることが求められます。

  • 土地を取得後、3年以内に新築の建物を建てること
  • 「土地の取得者が、建物新築まで土地を保有し続けている」もしくは「土地の取得者が土地を転売した場合、購入者がその土地の上に建物を新築している」

【建物を先に新築するか、あるいは土地と新築建物を同時に取得した場合】
借りている土地に建物を新築した場合、新築したときから1年以内に敷地も取得することが必要です。

控除の有無でどれくらい不動産取得税は安くなるか

控除制度で新築物件の不動産取得税がどれくらい安くなるのか、以下の事例で計算してみましょう。

【例】

  • 賃貸マンションの建物:固定資産税評価額2,000万円、課税床面積70平方メートル、認定長期優良住宅ではない
  • 上記建物の敷地:固定資産税評価額3,000万円、持分の敷地面積50平方メートル

控除制度を適用しない場合

【建物】
2,000万円×3%=60万円

【土地】
3,000万円×2分の1×3%=45万円

控除制度を適用した場合

【建物】
(2,000万円-1,200万円)×3%=24万円

【土地】

  • A.4万5,000円
  • B.(3,000万円÷50平方メートル×2分の1)×(70平方メートル(※)×3%)=63万円
    ※ 70平方メートル<200平方メートル ∴70平方メートル
  • AとBのいずれか多い金額が控除可能なため、控除できる金額は63万円
  • (3,000万円×2分の1×3%)-63万円<0円  ∴0円

不動産取得税の控除制度を利用すると建物は36万円(60万円-24万円)、土地は45万円(45万円-0万円)も節税できるのです。

必要な手続き

この控除制度を適用するにあたっては、「不動産取得税課税標準の特例適用申告書」を不動産取得の日から60日以内に都道府県税事務所に提出しなくてはなりません。この申告書は、土地と建物別々となっています。ただ地方自治体によっては、登記時点において課税事務所のほうで判断し控除を適用したうえで納税額を計算しているなど対応はさまざまです。

そのため納税通知書が届いたら先ほどの計算式を当てはめ控除制度が適用されているかどうかを確認したほうがいいでしょう。また不動産取得税は、地方税となるため、管轄する地方自治体によって扱いが異なります。詳細は、投資物件の所在する都道府県に問い合わせてみてください。

(提供:YANUSY

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