富裕層のバランスシートを最も毀損するライフイベントの1つが「相続」だ。そのため、ほとんどの富裕層にとって相続対策は大きな関心であり、同時に課題となる。そこで本特集では、「富裕層の相続税対策」について様々な角度から考察することにしよう。
相続市場の現状
少子高齢化が進む日本において、相続は一大市場となっている。国税庁が令和2年12月に発表した「令和元年分相続税の申告事績の概要」を見ると、令和元年における被相続人数(死亡者数)は約138万人、そのうち相続税が課税される被相続人数は約11万5,000人で、割合にすると8.3%だ。相続税が課税される資産額は約15兆8,000億円、課税額は年間約2兆円におよぶ。
図1のように、被相続人数全体は右肩上がりだ。課税対象被相続人数はやや横ばい傾向となっているものの、トップラインが伸び続けている以上、課税対象被相続人数も漸増していくと考えるのが自然だろう。
なお、平成26年から平成27年にかけて課税対象被相続人数が2倍近く増えているのは、本特集#1でも紹介した「平成25年度の税制改正(相続税の増税)」が要因だ。平成27年1月1日以降より、基礎控除が以下のように縮小された。
<現状>
定額控除3,000万円+法定相続人数比例控除600万円×法定相続人の数
<平成26年12月31日まで>
定額控除5,000万円+法定相続人数比例控除1,000万円×法定相続人の数
基礎控除が減るということは、課税される金額が増えるため、対象相続税を支払う必要がある人(=課税対象被相続人数)が一気に増えたというわけだ。
なお、課税割合の推移を示す図2を見ると、平成27年以降は8%前半で推移している。平成25年度の税制改正(相続税の増税)から5年以上が経過しているので、このレンジが落ち着きどころなのだろう。ただ、足元では世界的に資産価格が大きく上昇しているため、この流れが続く限り、課税割合も漸増することが予想される。
相続税は今後も増税される?
本特集#1では、過去の日本の相続税の最高税率が70%を超えていた時代もあったことを紹介した(現在の最高税率は55%)。そこまで税率が上がるかはさておき、遅かれ早かれ、相続税は今後も増税されるという意見が多い。