不動産投資を行う際、ほとんどの方は金融機関から融資を受けるのではないでしょうか。もちろん、自己資金に余裕があるのであれば別ですが、融資を受けながら不動産投資を行うということは「レバレッジ効果を得る」という意味でも重要なポイントといえます。とはいえ、自己資金をどのくらい用意しておけばいいのか、またフルローンで不動産投資を行うことはできるのかについて不安に感じる方もおられるのではないでしょうか。

不動産投資における自己資金の目安

自己資金なし!フルローンで不動産投資を行う際に注意しておきたいこと
(画像=doucefleur/stock.adobe.com)

自己資金の考え方には、「金融機関側の視点」と「投資家側の視点」という2つの側面があります。そして、その2つの側面を同時に考えた際に、必要となる自己資金の目安は物件価格の20%程度といわれています。その理由は以下の2つです。

金融機関側の視点

金融機関は融資申込者の「属性」および「金融資産」を重視します。したがって、属性が悪い人や自己資金が全くない状態の人から融資を申し込まれた場合、その審査基準はおのずと厳しくなります。

投資家側の視点

もしも物件をフルローンで購入する場合であっても、購入時や融資を受ける際の諸費用そして購入後に発生する運営資金(固定資産税や修繕費)は自分で用意する必要があります。

物件購入時の諸費用としては、不動産仲介手数料や登録免許税、印紙代、融資手数料、不動産取得税などがあり、物件価格の3~10%が目安といわれています。例えば1億円の物件を購入するのであれば、諸費用については300万円から1,000万円程度と考えておくとよいでしょう。また、運営資金のうち、固定資産税についてはある程度は把握し、前もって準備することができますが、修繕費用などの突発的な出費額については、その修繕の状況によって異なります。したがって、ある程度余裕を持った資金を準備しておくことが大切です。

フルローンでキャッシュフローを得るためのポイントとは? 

上記のように、自己資金を全て諸費用そして運用資金に回し、物件価格については全てフルローンで行うことも不可能ではありません。金融機関が、その物件に十分な担保価値があると判断した場合や、融資申込者の属性が良好であれば、フルローンでの融資を認めてもらえる場合もあります。

しかし、不動産投資においては、キャッシュフローをいかに得ることができるかがポイントとなります。つまり、ローンの返済額から経費を指し引いたキャッシュフローがどれだけ残せるかを考えなければなりません。差し引く経費の中には、ローンの返済額以外に「運営資金」や「空室による損失」も含まれます。

利回り

ここでいう利回りとは、その投資物件から得られる収益性のことですが、利回りが高ければ高いほど、キャッシュフローを得ることが可能です。一般的にリスクとリターン(利回り)は比例することから、「利回りが高い物件は危険」という考えを持たれる方もいるでしょう。

しかし、不動産投資において「利回りが低い」ということは、それ自体がリスクとなります。もしも利回りが低い物件にフルローンを組めば、十分なキャッシュフローを得ることは難しくなります。さらに、修繕費用が発生したり、空室状況などによって十分な家賃収入を得られなかったりする場合は、赤字に転落することも考えられます。

投資において、利回りがなければキャッシュフローを得ることはできません。もちろん利回りばかりに目を向けてもいけませんが、投資物件の利回りを慎重に考えることは、フルローンでキャッシュフローを得るための1つのポイントといえるでしょう。

融資期間

融資期間は長ければ長いほど、キャッシュフローを得ることができます。手元の資金がわずかであるにもかかわらず融資期間を短くしてしまうと、毎月の返済額がその分大きくなり、キャッシュフローを得ることができないばかりか、修繕などの突発的な出費に耐えることができません。

特に不動産投資を始めて間もない方であれば融資期間は長めに設定し、十分なキャッシュフローを得て経営を安定化させることを考えましょう。

金利

金融機関から融資を受ける際の金利は、低ければ低いほどキャッシュフローを得ることができます。ただし、あまりに金利に固執して、さらに低い金利の金融機関に借り換えるなどといった考えは避けるようにしましょう。特に今後も追加融資を受け、不動産投資事業を拡大していきたいと考えているのであれば、金融機関との付き合い方も考えておく必要があります。追加融資の際にできるだけいい条件で融資してもらえるように、日頃から金融機関とは良好な関係を保っておくようにしましょう。

返済比率

返済比率とは、ローンの返済額を満室状態での家賃収入総額で割ったものです。そして、この返済比率も低いほどキャッシュフローを得ることができます。この返済比率を抑えることで、多少の家賃の値下げや空室損失、さらには突破な修繕にも耐えることができるでしょう。

注目すべきはキャッシュフローと返済比率

上で挙げた4つのポイントのうち、重視したいのはキャッシュフローと返済比率です。融資期間や金利については購入する物件の構造や市場の状況などである程度決まりますが、キャッシュフローを得るための利回りや返済比率については、自分の努力で改善することが可能です。このことはフルローンで不動産投資を行うケースにかかわらず、不動産投資を行う上での基本であるといえます。

フルローンは誰でも利用できる?

年収がそこまで多くなく、金融資産も少ない方がフルローンでの融資を受けるためには、上で述べた「投資物件に十分な担保価値がある」ことが重要となります。したがって、どのような物件を探すか、それがいい物件であるかどうか、を見極める力が必要となります。高利回りの物件を得ることで、「担保に余力が出てくる」ことや、「フルローン以上の融資が見込められ、自己資金を温存できる」というメリットがあります。さらに、キャッシュフローが得られる物件であることから、金融資産を増やすということに繋げることもできます。

フルローンが利用できるからといっていい物件とは限らない

金融機関が最終的にフルローンを認めてくれたからといって、その物件を購入するのは安易な考え方です。もちろん、担保価値があるからこそフルローンを認めてくれるわけですが、担保価値があるからといってその物件によって大きなキャッシュフローが得られるとは限らないからです。

融資が受けられる物件はいい物件であるという考え方ではなく、「十分なキャッシュフローが得られる物件を購入し、しっかりと運営する」ことが最終的な不動産投資の成功になることをしっかりと理解しておきましょう。

合わせて確認しておきたい融資条件

金融機関から融資を受ける場合には、どのような条件で利用するかもあわせて考える必要があります。

元利均等返済が必ずしもいいとは限らない

毎月一定額を返済する「元利均等返済」は、返済計画が立てやすく、返済開始時の返済額が元金均等返済と比べて少ないといった理由で多くの人に選ばれている返済方式です。しかし、そのメリットの影に「元金均等返済よりも返済総額が多くなる」ことや「借入金残高の減少スピードが遅い」というデメリットが存在することも覚えておきましょう。

ちなみに不動産投資初心者であれば、元利均等返済を利用することで、キャッシュフローを貯めていくことができ、事業の拡大を進めることができるというメリットがあります。しかし、不動産投資が順調で資金力が豊富にある場合には元金均等返済を選ぶ方がメリットはあるといわれています。なぜなら、資金力があるがゆえに返済初期の返済額の高さもそこまで負担にならないばかりか、返済を早く終わらせることができるからです。そして、残債の減りが早くなることでその不動産に担保余力が出ることや、売却時に多くの売却益を手にすることができるといったメリットもあります。

金融機関と上手に付き合うために

金融機関から融資を受けた際には、さまざまな商品を進められるケースがあります。定期預金や積立預金などです。もちろん、付き合い程度であれば受けても構いませんが、基本的に断っても問題ないということを理解しておきましょう。

金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」によると、優越的な地位の濫用によって相手に不当な不利益を与えることをしてはならないとされています。今後もその金融機関から追加融資を受けたいなどという考えがあり、かつ、その商品を利用することによる費用負担が少ないのであれば、受け入れるといった考えにとどめておくことが大切です。

(提供:Incomepress



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