秋場所の懸賞本数はコロナ禍での最高を更新
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秋場所の懸賞本数はコロナ禍での最高を更新

(日本相撲協会「懸賞本数」)

三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト / 宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2021年10月12日号

 大相撲の懸賞は1本当たり7万円だ。取組表に印刷され、場内放送で告知されるほか、土俵では企業名や商品名の入った懸賞旗が掲げられて、テレビ中継でも多くの人が目にする。その本数は、企業の広告費の代理変数と考えられ、景気に左右される面がある。

 過去最多の懸賞本数は、2018年秋場所の2,160本である。これは直近の「景気の山」の1カ月前に当たる。ほかに2千本台は、17年夏場所の2,053本だけだ。

 新型コロナウイルス感染症が経済活動に負の影響を及ぼす直前に当たる20年初場所の懸賞本数は、1,835本だった。対して、新型コロナの感染が広がり無観客開催になった20年春場所は、懸賞本数が1,068本まで減少した。アベノミクス景気が始まって1年程度の13年九州場所以来の低水準である。20年夏場所が中止になって以降、20年の7月場所(例年と異なり東京で開催)から21年名古屋場所まで7場所での懸賞本数は、1,000本(20年7月場所)から1,270本(21年初場所)の間で推移した(図表)。

 そうしたなか、今年9月の秋場所の懸賞本数は1,373本と、コロナ禍での最多を更新した。企業の広告費も増加しているとみられ、広告業界にもコロナ禍からの回復の兆しが見られる。経済産業省の特定サービス産業動態統計において、広告業の売上高は21年1~3月期まで前年比減少だったが、4~6月期は同19.4%の増加に転じ、7月は増加率が24.3%まで高まっている。

 懸賞本数のほかに景気動向との関係で興味を引くのが、今年の秋場所で第73代横綱・照ノ富士が達成した「新横綱での優勝」である。本場所が15日制になって以降、新横綱での優勝は、1961年九州場所の第48代横綱・大鵬(13勝2敗)、83年秋場所の第59代横綱・隆の里(全勝)、95年初場所の第65代横綱・貴乃花(13勝2敗)、2017年春場所の第72代横綱・稀勢の里(13勝2敗)の4人で、これらの場所の景気はすべて拡張局面であった。重圧をはねのけ優勝を果たした新横綱から勇気をもらった人も多いだろう。

 今年の秋場所では、2人の横綱のうち白鵬が、所属する宮城野部屋の力士に新型コロナ感染者が出たために休場し、その後引退を表明した。もう1人の横綱の照ノ富士は、初日から優勝争いの先頭を走り、13勝2敗で優勝した。ケガ・病気で大関の地位から陥落し、一時は序二段まで番付を下げたが、そこから復活した。

 照ノ富士は令和初の横綱として、また新横綱の場所での5人目の優勝者となった。今回も景気は拡張局面にあると期待したい。

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(提供:きんざいOnlineより)