2020年度の国民負担率が前年度から0.7%増加し、過去最高の44.6%になる見通しだと公表された。一方で、「国民負担率」という用語をよく知らないという方も多いだろう。今回は、この国民負担率とは何か、また今後私たちにどう関わってくるのかについて解説する。
国民負担率とは
国民負担率とは、個人や企業の所得といった国民所得に対する税負担と社会保険料負担の割合を指す。税負担には、所得税・住民税・法人税・法人住民税・消費税・固定資産税などが含まれる。社会保険料負担には、年金や健康保険、介護保険などの保険料が含まれる。
国民負担率の算出式は、「 (税負担+社会保険料負担) ÷国民所得」となる。国民負担率が増加するということは、「税負担+社会保険料負担」が増加する、または「国民所得」が減少する、などの要因が考えられる。
税負担が上がったという実感がある方も多いだろう。2019年10月1日より消費税が8%から10%に増税されたのは記憶に新しい。また、2020年度の基礎控除の改正等により、高額所得者の所得税や住民税は確実に増えている。
社会保険料負担については、2019年度の国民年金保険料が月額16,410円であったのに対し2020年度は16,540円と若干増加している。ちなみに厚生年金保険料率は、2017年以降増加していない。
国民所得は、2019年度の408.1兆円から2020年度は415.2兆円と増加している。国民負担率の算出式、「 (税負担+社会保険料負担) ÷国民所得」における国民所得が増加しているということは、国民負担率の減少が考えられるが、実際には国民負担率は増加している。つまり、国民所得の増加の効果を打ち消すほどに税負担と社会保険料負担、特に税負担が増加していると考えられる。
他国や過去の日本の国民負担率との比較
さて、2020年度の国民負担率が税負担の増加により過去最高の46.1%であると発表されたことは冒頭で述べた。この数字は諸外国に比較して高いのだろうか、低いのだろうか。
2018年の主な国の国民負担率において、フランスは68.3%、スウェーデンは58.8%、ドイツは54.9%、イギリスは47.8%、アメリカは31.8%という結果となっている。ちなみに日本の2018年度の国民負担率は44.3%であった。
アメリカには公的医療保険制度がないため、社会保険料負担が各国に比較して少ないことから国民負担率も低いことが考えられる。しかし、その他の国と比較すると、日本の国民負担率は決して高いとはいえないことが分かる。
財務省が発表している「国民負担率の国際比較」から、2018年 (日本は2018年度) のデータをもとに構成を確認してみよう。
国民所得に対する税負担の割合は、高い順にスウェーデン53.5%、フランス42.7%、イギリス37.0%、ドイツ32.1%、日本26.1%、アメリカ23.4%となっている。国民所得に対する社会保険料負担の割合は、高い順にフランス25.6%、ドイツ22.8%、日本18.2%、イギリス10.8%、アメリカ8.4%、スウェーデン5.3%となっている。
私たちの税金が増え続けているような印象があったかもしれないが、諸外国に比較すると、必ずしも高いわけでない。また、日本は世界一の長寿国で少子高齢化が進んでおり、現役世代が老後世代を支えなくてはいけない人口構成である。そのため、現役世代の社会保険料負担が大きいと思っている方も多いだろう。しかし、実際にはフランスやドイツと比較しても必ずしも高いわけではなさそうだ。
国民負担率の今後
今後、私たちの国民負担率はどのように変化していくのだろうか。2021年度の見通しとしては、44.3%と2020年度より1.8%減少する。しかし、長期的に考えた場合には、税金が増えていくことが考えられるだろう。
なぜなら、時限的ではあるものの東日本大震災の復興のために復興特別所得税や復興特別法人税ができたように、新型コロナウイルスからの復興のための財源を税金で賄う可能性が高いからだ。コロナ復興財源のために消費税が15%に増税されるのではないかと考える専門家もいる。
増税が決定されたとしても、私たちの所得が増加する保証はどこにもない。私たちは今後増加していく可能性のある国民負担率に備えて、資金を計画的に賢く準備をしていく必要があるだろう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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