中央競馬の売得金はコロナ禍を乗り越え10年連続増加へ
(画像=PIXTA)

中央競馬の売得金はコロナ禍を乗り越え10年連続増加へ

(JRA「売得金」)

三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト / 宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2021年10月19日号

 日本中央競馬会(JRA)の「売得金」の暦年・前年比は、名目GDP前年比と高い相関がある。景気が良く収入が伸び、懐具合が良い時は競馬の売上高も伸びるようだ。

 売得金とは、勝馬投票券を発売した金額である発売金から、出走取り消し・競争除外分の返還金を差し引いた金額である。平成・令和の32年間(1989~2020年)での名目GDP前年比と売得金前年比の相関係数は0.75だ(1に近いほど相関が強い)。20年を除く1989~2019年では0.81まで高まる。名目GDPが前年比マイナスになったのは9回あるが、コロナ禍でマイナス成長になった20年以外はすべて売得金・前年比もマイナスになった。

 時代をさかのぼって振り返ってみる(図表)。バブル期の1989~91年の名目GDP成長率は5~7%台の高成長で、同期間の売得金の前年比は二桁の増加だった。92年以降は名目GDPの伸びが鈍化し、97年には1.5%となった。同年には売得金の前年比も0.4%まで低下している。

 その後、名目GDPは金融危機の98年以降2003年までの6年間、00年を除きマイナスとなった。04年から07年まではわずかなプラスに戻る。だが、リーマンショックで08年と09年が、東日本大震災で11年がいずれもマイナス成長になった。売得金の前年比は、この期間を通してすべてマイナスだ。

 続く12年から19年までは、名目GDP、売得金とも前年比プラスだった。それに変化が訪れたのは、新型コロナが猛威を振るった20年だ。名目GDPは前年比マイナス3.8%で、売得金も一時はマイナスだった。詳しく見てみよう。

 20年の売得金について、年初からの累計での前年比は2月9日時点で2.3%の増加だが、2月23日時点で0.4%に鈍化した。初の無観客競馬となった2月29日、3月1日の勝馬投票券の発売は電話・ネット受付のみとなり、3月1日時点で前年比1.4%減とマイナスに転じ、5月3日時点の同6.2%減まで悪化が続いた。

 しかし、そこからネット発売を中心に盛り返す。当時コロナ禍で開催中止となったスポーツが多く、無観客でも開催を継続していた競馬がスポーツ新聞の紙面に登場する機会が多かったこともあり、ネットで勝馬投票券を購入する人が増えたようだ。結果、8月9日時点で同0.9%とプラスに転じた。最終的に、20年の入場者数の前年比は84.1%減だが、売得金・前年比は3.5%増と9年連続の増加になった。今年に入ってからは、名目GDPも売得金も順調に推移している。上半期の名目GDP成長率は2.3%。秋のG1レース初戦のスプリンターズ・ステークスにおける売得金・前年比は2.0%増で、G1は12レース連続増加だ。売得金の年初からの累計・前年比は10月3日時点で5.1%の増加となっており、10年連続増加に向け順調に推移している。

中央競馬の売得金はコロナ禍を乗り越え10年連続増加へ
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(提供:きんざいOnlineより)