先行き判断DIは2013年以来の高水準に
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先行き判断DIは2013年以来の高水準に

(内閣府「景気ウオッチャー調査」)

三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト / 宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2021年10月26日号

 9月の景気ウォッチャー調査は、現状判断DI(季節調整値)が42.1と前月差7.4ポイント上昇した。現状水準判断DI(同)は33.5と前月差3.9ポイント上昇した。どちらも改善は2カ月ぶりだ。季節調整前の原数値は現状判断DIが43.3、現状水準判断DIが33.1で、これらも2カ月ぶりに改善した。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、ワクチン接種が順調に進む中で、緊急事態宣言の全面解除が決まり、経済正常化への期待が高まったと思われる。ただし、「現状」に関するこれら四つのDIは、7月を上回れなかった。

 2~3カ月先の見通しを示す先行き判断DI(季節調整値)は56.6で、前月差12.9ポイント上昇と大きく改善した。景況判断の分岐点になる50を超えるのは3カ月ぶりだ。最高水準だった2013年11月(現在の季節調整値で57.6)以来、歴代5番目の高水準である。また、先行き判断DI(原数値)は56.7で、過去最高水準だった13年4月(57.8)以来、歴代4位の高水準だ。

 9月調査で現状判断と先行き判断に改善の差が出たのは、景気ウォッチャー調査の調査期間が25日から月末までである一方、政府による緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の全面解除が10月1日だったことが影響していよう。調査期間中は緊急事態宣言などが続いていたため、現状判断が厳しくなったと考えられる。一方、宣言解除は決まっており、解除後への期待が高まっていたことで、先行き判断は大幅に改善したのだろう。

 景気ウォッチャー調査の判断DIは、「良い」から「悪い」までの5段階の回答を1~0まで0.25刻みで点数化し、回答数で加重平均計算するシンプルなものだ。そのため、注目される事象に関するコメントのある回答だけから算出したDI(関連DI)を簡単に作成できる。全体のDIと関連DIを比べることで、その事象の影響を判断できる。

 「新型コロナウイルス関連判断DI」を作成すると、9月分の現状判断DIは44.2で前月差15.2ポイント上昇し、2カ月ぶりの改善になった。先行き判断DIは58.9で前月差18.3ポイント上昇し、新型コロナが景気ウォッチャー調査に登場した20年1月以降の最高水準を更新した。現状判断、先行き判断とも新型コロナウイルス関連DIは全体のDIを上回り、新型コロナが景況感の足を引っ張らない状況になったことを示唆している。

 「ワクチン関連判断DI」では、9月は現状判断DIが55.3、先行き判断DIが67.1と50を大きく上回った(図表)。ワクチン接種が進む中で、それが景況判断へのプラスの寄与度を高めていることが確認できる。

先行き判断DIは2013年以来の高水準に
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(提供:きんざいOnlineより)