東京圏の大型物流施設の供給は来年に過去最高を更新する
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東京圏の大型物流施設の供給は来年に過去最高を更新する

都市未来総合研究所 主席研究員 / 下向井 邦博
週刊金融財政事情 2021年10月26日号

 新型コロナウイルスの感染拡大以降、度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令に伴う外出自粛や店舗の休業要請などで、家計の消費支出は大きく減少した。一方、政府が打ち出した「新しい生活様式」が巣ごもり消費を促し、インターネットを利用したショッピングが急速に拡大した。

 経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、物販系分野のB to Cの市場規模は2019年の10兆515億円から、20年は12兆2,333億円へ21.71%増加し、同分野のEC化率(すべての商取引市場規模に対する電子商取引市場規模の割合)は6.76%から8.08%へと上昇した。多少の定義の違いはあるものの、他の先進諸国のEC化率は10~30%であり、日本でも同分野の市場規模はさらに拡大し、EC化率が上昇すると見込まれる。また、フリマアプリやネットオークションといったC to C(個人間取引)におけるEC市場も急成長している。

 近年のEC市場規模の拡大を受けて、賃貸物流施設の需要は高い水準にあり、東京圏(注)の直近の空室率は1%前後の低いレンジにある。新規供給計画も旺盛だ。当社の集計によると、東京圏の延床面積1万平方メートル以上の大型物流施設(自社用含む)の新規供給床面積は、21年は約340万平方メートル、22年は約480万平方メートルの計画で、過去最高を更新する見込みである(図表)。物流施設専業デベロッパーや大手不動産企業などによる賃貸向けだけでなく、小売業者や物流事業者などによる自社用の大型施設の計画も見られる。1棟が10万平方メートルを超えるような大規模施設も多く、自動化や省人化等の先端設備を導入して効率化を図る一方、従業員の福利厚生機能や地域の防災、企業のインキュベーション機能等を複合的に備える施設も計画されている。

 今後の成長余地が大きいのは食品のネットショッピングに関する物流施設だ。前述のようにネットショッピングは急成長しているが、ネットでは消費者が鮮度を見極めることが難しく、食品分野のEC化率は低い。食品のネット市場拡大のためには商品の安全性向上とそのアピールが重要であり、温度管理や衛生管理など高度な物流施設・システムを構築する動きが進むだろう。また、食品物流を支える冷凍冷蔵倉庫の老朽化や、冷媒に用いるフロン類の規制が強化されることからも施設の建て替えが促されるだろう。

東京圏の大型物流施設の供給は来年に過去最高を更新する
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(提供:きんざいOnlineより)