事例から学ぶ地方創生のポイント

ビジネスに地方創生をとり入れると、企業の経営体制は大きく変化することが予想される。そのため、具体的な施策を計画・実行する前には、以下で紹介するような事例にも目を通しておきたい。

【事例1】地方でのバイオマス発電事業と人材採用/小松製作所

建設機械大手である小松製作所は、世界でもトップレベルのシェアを誇る企業だ。同社は東京都に本社を構えながらも、地方創生を目的として石川県に本社機能の一部を移転させている。

すでにさまざまな施策が進められているが、中でも注目されているのはバイオマス発電事業である。同社は設備投資として約4億円の資金を投入し、石川県内で毎時3,200キロワット相当のエネルギーを生み出すことに成功した。

また、社員の人材教育においては「コマツウェイ総合研修センタ」を県内に設置し、2011年度からは地方採用も積極的に行っている。地方のエネルギー資源だけではなく、人的資源も活用する点はぜひ見習っておきたいポイントだ。

【事例2】積極的な地方採用とイベントへの参加/サイファー・テック

セキュリティシステムなどのIT開発を手がけるサイファー・テックも、地方人材を効果的に活用している。

同社は徳島県の企業誘致である「とくしまサテライトプロジェクト」を利用し、郊外にあたる美波町に自社のサテライトオフィスを構えた。一見するとIT業界からは程遠いエリアに思えるが、オフィスの開設にあたってエンジニアを募集したところ、これまでの採用難が解消されるほど応募が急増した。

さらに同社は地域とのつながりを深めるために、自治体活動や農作業、地域のイベントなどにも参加。本当の意味で地方に受け入れてもらうためには、この事例のように住民と触れ合う機会も積極的に増やすことが必要になる。

【事例3】自社製品を活用したテレワーク/セールスフォース・ドットコム

最後に、テレワークを活用した地方創生への取り組みを紹介しよう。顧客管理システムなどを手がけるセールスフォース・ドットコムは、2015年に業務機能の一部を和歌山県白浜町へと移転させた。

業務にあたっては自社製品のモバイルデバイスを活用しており、テレワークを導入することで問題なく事業を進めている。都心に比べると不便な点はあるが、「通勤のストレスがかからない」「自然が豊かなのでオン・オフの切り替えがしやすい」といった、地方ならではのメリットも多いようだ。

ただし、テレワークやリモートワークを導入する際には、本社との連携やコミュニケーションが重要になる。また、どの業務を地方で行うかや、適した人材のピックアップなども成功を左右するため、地方進出の前には入念に計画を立てる必要があるだろう。